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魔女とクマの使い魔  作者: 雪白せっか


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11/18

解明??

 

 エルサナに言われるがまま、店主は自身が眠っていた場所へ案内を始めた。

 空の色は濃い茜色になっていき、木漏れ日から光が差し込む。

 森の景色は幻想的になり、赤いカーテンがゆらゆらと揺れているようだ。


 しばらく歩いているとゴンザレスがスンと鼻を嗅いだ。


「甘い匂いがしますね。森に入ってからはじめて嗅ぐ匂いだ」


「おぉ!?きみ、話が出来るのかい?気になっていたが、お前さんのペットかな」


 店主はアレックスに聞いたが、アレックスは首を横に振る。


「私のではないです。彼は彼女の使い魔です」


「昨日、召喚したのよ。名前はゴンザレス、正式に私の使い魔です。

 ゴンザレス ちゃんとおじさまに挨拶を…」


「・・・・ども」



 帰ったらきっちり教育してやるわと心に決めながら、目的の場所に近づいていく。

 木々の間を歩いて行くと、開けた所に着き、店主がここで寝ていたと説明する。

 店主の指す方をみると、そこには象牙色の花たちが沢山咲いていた。


 ゴンザレスが匂いを嗅ぎ、甘い匂いの正体はこの花だと理解した。

 エルサナは花を観察し自分の考えは正しかったと確信する。


「最近、森でのケガや事故の原因が分かったわ」

「まさかと思うが、花が原因なのか?」


 アレックスは辺り一面に咲いている、象牙色の花を見渡す。

 見た感じ、危なそうには思えないが――――


「いまの時間帯なら大丈夫よ口に入れなければね。この花が最も危険な状態になるのは昼間の時…」


 エルサナは店主に質問した。


「おじさま。眠気が来たのは、この花を見つけた頃じゃないかしら」


「おぉそうじゃ。あまり見たことのない花でな、気になって観察してたら

 眠くなってのぉ…どうして分かったんだ?」


 エルサナは近くに咲いていた花を一輪だけ取り、みなに説明する。


「この花は『過眠花』といって、昼間になると無臭の花粉を飛ばし、一定の量を吸い込むと、睡眠発作を引き起こすと言われているわ。

 昼間は花粉で、夕方から夜にかけては甘い匂いで誘い、口に入れることによって

 眠らせる」


 店主は腕を組み、首を傾けながら唸る。


「ムムム…薬草歴五十年の私でも聞いたことのない奴だ。

 さすがエルサナちゃんだな…」


「ここ数年で現れたとの話よ。数も多くなくてどうやって繁殖するのか、細かい解明はまだ不明なのよ」


「想像だが、睡眠作用が強すぎて研究が進まないんだろう。店主が一日中寝ていたのもそれが理由か」


 エルサナが持っている花を見ながらアレックスが話す。


「厄介なことに、睡眠作用は速攻性で眠気が来たと思ったら

 すぐに眠りについてしまう。

 多く吸い過ぎてしまうと気づかないうちに眠りにつくらしいわ。

 ケガ人の人達が言っていた覚えがない傷も、

 もしかしたら突然倒れる様に眠りについて、その時にケガしたのかも…!」


「もしかしたら…とか曖昧ですね。名探偵のように分かったみたいな顔をしていたのに」


 ゴンザレスが茶々を入れるが、それに対しエルサナは高笑いしながら答える。


「私は探偵じゃないので!曖昧でいいのよ!あははは」


 いいのか…? ―――エルサナ以外の心の声―――


「絶対的な保証はないけど、この花以外でのケガや事故の原因はないと思うの

 この森に危険な獣とかいないし、これまでに植物、木の実、きのこ…

 人的被害もなし。考えうるのはコレ(花)よ!確信在り!!間違いなし!!」


 持っている花を高らかに上げながら、エルサナは興奮気味に叫ぶ。

 心拍数があがり、全身がカイロの様に熱くなる。


 なんだか頭が冴えてて楽しい!これからなんでも出来ちゃいそう!

 エルサナは、どこか自由の国みたいな女神様のポーズをとっている。


「エルサナ…なんだか変だぞ?」

「え なにが?私のどこがへんらの」


 呂律が回らなくなっている。

 心配したアレックスが座るようにと肩に触れると、エルサナは声を張り上げわめく。


「もう!私に触らないでよ。アレックスのえっちぃ!

 私の背中みてからじつわぁ興奮してたの??あはは」


 アレックスは赤面する。


「なにをいって…私は心配で…」


 突然視界が揺れはじめ、ゴンザレスやアレックス達の顔が歪む。

 なんで歪んでいるの…エルサナはぼやけている視界で、何度も目を擦るが変化はない。

 ハッキリと聞こえていた声がこもり遠くなっていく。

 誰かに体を左右に強く降らされているようで気持ちが悪い。

 赤く燃えている空の色が遠くなり、エルサナの眼前は完全な暗闇になった。


 ―――――


 吐き気を感じながら目を覚ました。

 見たことのない木目の天井に、芳しい香りが鼻に通る。


 ―――うぅ気持ち悪い。二日酔いのよう…


 無理やり体を起こす。体のあちこちが痛く、頭痛がひどい。

 どうやら固い木の簡易ベッドで寝ていたようだ、お世辞にも寝心地は良いとはいえない。

 申し訳程度にある薄いザラついている布が、掛け布団代わりで、枕として使っていたのはアレックスのマントだった。


 部屋の広さは四畳ほどで、窓が一つに寝ているベッドのみ、まるで独房に入れられているような部屋全体が薄暗く、唯一の灯りが天井に吊るさっているランプ一つだった。

 窓から外をみると、ちらほらと建物から灯りがみえ、空には満点の星がちりばめられていた。

 寝ている間に夜になったらしい。


 エルサナの居る部屋は一階で、目の前には綺麗に手入れされている芝生に、数メートル間隔で植えられている木が見える。

 建物は丘の上にあり、町の様子が見下ろせるようになっていた。


 町の中心にレンガで建てられた時計塔がみえる。

 時計の周りには町の名産品の花たちが描かれており、時計塔は町のシンボルマークとして親しまれている。


 (知らないうちに町に帰っていたのね…)


 見慣れた建物を見つけ安堵する。

 まだ頭痛がひどく目眩がするが、起き上がろうと腰を上げた時、

 ガチャリと扉を開ける音が耳に響く。


「エルサナ起きたんだな良かった。具合はどうだ…大丈夫か?」


 部屋が薄暗くて、入ってきた人物が見えずらいが、声を聴いてアレックスだと分かった。

 エルサナは右手で頭を抱えながら問いかける。


「なんとか…アレックスここは何処なの?町に帰って来たのは分かるんだけど」


 アレックスはゆっくり近づき、エルサナと向かい合うようにベッドに腰かけた。


「ここは町の駐屯所だ、警備団のな。

 君が倒れてから直ぐに騎士団が到着して、事情の説明の後

 キメラの死体を回収。そして店主共々、皆で町に戻ったというわけだ」


 アレックスの話を聞いてエルサナは安心した。

 王直属の騎士団が、直接キメラを見たのだ、今後こんな事が起きないように

 国との境界線の警備強化が期待できる。


 私の送ったメッセージは無事に届いたのね、よかったわ。

 そもそも、隣国に生息しているはずのキメラが居ること自体おかしいのよ。

 世の平穏の為、騎士団にはちゃんと働いてもらわないと…


「本当は医者に君を診てもらいたかったが…この町に医者が居なくて驚いたよ」


「私が町の医者代わりだもの…お陰様で生活には困らないわ…」


「代わりに店主が診てくれたんだ。後で、御礼を言うといい」


「そうねそうするわ…ところで、ゴンザレスは―――」


「俺ならずっといますよ主」


 驚き声のする方へ視線を移すと

 窓からゴンザレスが部屋を覗いていた

 どうやら外にいたらしい。


「ビックリさせないでよ、どうして外にいるのよ…」


「不審者が来ないか見張ってたんです。主に危害を加えようなら、窓から攻撃するつもりでした」


 割れたガラスで私が怪我したらとか考えないの・・・・

 脳筋な使い魔に頭を抱えながら、エルサナはため息をつく。


「エルサナ、まだ具合が悪いなら横になっても…」


「ありがとうアレックス。大丈夫よ。

 それよりも私が倒れた理由は分かる?」


 アレックスは首を横に振る。


「分からないが、恐らく君が持っていた過眠花に原因があると思ってね。

 騎士団に頼んで直接研究者に調べてもらうよう話をした。

 原因解明ができるよう祈るばかりだ」


 花を持ってからおかしくなったのは明らかだし、判明するまで気長に待つしかないのか…


「毒はないので安心して下さい。毒の匂いは嗅覚で判断できるので」

「まさかの特技ね、それは安心するわ」


 毒がないのは安心材料だ、数日経ってから効いてくる毒もあるので

 一つでも不安が減るのはうれしい。


 ゴンザレスが窓ガラスをコツコツ叩く。


「主 部屋にいるより外の空気吸いにきてはどうです?少しは気分も晴れるかもしれません」


 珍しく良い案をだす使い魔に面くらいながら、エルサナは笑顔で答える。


「そうね、星もきれいだし。そうするわ」


 外は冷えるからとアレックスが、マントを貸してくれた。

 マントを羽織りエルサナは外に出る。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

次回は 9月17日 17時30分を予定しております。


「面白い」「応援したい」と思ってくださったら☆やブクマをよろしくお願いします。

読んでくださるだけでも執筆の励みになります。

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