【第四章:覚悟の同時着火(ダブル・ライトアップ)】
雨の降る高架下。
タツミとメイは、A.T.S.の特殊部隊と、サラ率いる刺客集団に完全に退路を断たれていた。
「タツミ君、無駄な抵抗はやめなさい」
氷の煙草『ピアニッシモ・アイシス』をくゆらせるサラ。彼女の一息で、周囲の雨粒が氷の針と化して地面に突き刺さる。
「その未汚染体を引き渡せば、あなたの命だけは助けてあげる。……かつての教え子に対する、私からの最後の情けよ」
タツミの手元に残されたのは、刺客から奪い取った『セブンスター』と、わずか1本だけ残った己の相棒『ラッキーストライク』。
「情け、だぁ……? 冗談言うなよ、先生」
タツミは震える手で、2本の煙草を同時に口にくわえた。
「お兄さん、だめ! そんなの吸ったら……!」
「メイ、耳を塞いで後ろに隠れてな。……一瞬で終わらせる」
カチリ。
火花が散り、赤と青の二色の煙がタツミの肺へと同時に雪崩れ込む。
> 《危険:異種ニコチン同時摂取》
> 《心拍数 320限界突破/脳内麻薬過剰分泌/神経系破壊確率 92%》
「ガァァァァァッ……!!!」
タツミの口から、血管から、青紫色の光が漏れ出す。
血圧が跳ね上がり、目・鼻・耳から血液が噴き出した。筋肉が裂ける音と、骨が軋む不気味な音が響き渡る。
しかし——引き換えに得たのは、神の領域。
ラッキーストライクの【超怪力・超加速】と、セブンスターの【未来予知・超感覚】。
ドォォォォンッ!!
踏み出した一歩でコンクリートが爆破されたように跳ね飛ぶ。
サラの放つ氷の針の軌道をすべて見切り、音速を超えたタツミの拳が一瞬でA.T.S.の装甲車3台を粉砕した。
「サラァァァッ!!」
タツミの拳がサラの眼前まで迫る。だが——
「ガハッ……!?」
突如、タツミの動きがピタリと止まった。
口から激しい吐血。異種銘柄の同時吸入による体質拒絶反応。ラッキーストライクの「熱」とセブンスターの「過剰な神経活性」が体内で衝突し、タツミの臓器を内側から焼き尽くし始めていた。
「ぐ、あ……あぁぁぁっ! 身体が……裂ける……ッ!」
膝をつくタツミ。
サラが冷酷に指を鳴らし、タツミの頭上に巨大な氷の楔が形成されていく。
「さようなら、私の愛しい生徒」
絶体絶命。その時——。
「お兄さんを……お兄さんをいじめるなーっ!!」
背後から飛び出したメイが、血まみれのタツミに抱きついた。




