第009話〈再転移、今度こそチートスタート?〉
眼を覚ませば、そこは無限に思えるほど広大な荒野だった。
幸い時間は夜で、新月なのか月は見えない。
これなら日光によるダメージの心配はない。
「あ゛ー、まだ頭が痛いな。」
周辺を見渡してみるが、砂と岩以外には何もなかった。
どうやら柊は大きなくぼ地、盆地のような場所に倒れていたらしい。
「というかまだガチャも回してないな。万が一の時のために1枚は残しておこう。ガチャ石というものはうかつに使うべきじゃない。」
【ガチャを実行……結果:[Bランク]『胡狼&伸牙』を取得しました。】
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【胡狼&伸牙】
二丁の50口径シングルアクションリボルバー。
凄まじく頑丈で、融点は数万度にまで登る。
6発装填であり、リロード方式はブレイクアクション。
素材の頑丈さのおかげでブレイクアクションでも50口径の弾丸に余裕で耐えられる。
-敵対者を朱にそめよ-
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「おいおい、まじかよ。シングルアクションなのは気に入らないが、頑丈なのはいいことだ。」
残る二枚目を使用し、ガチャを実行する。
【ガチャを実行……結果:[Cランク]『猩々緋結晶』を取得しました。】
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【猩々緋結晶】
魔力との親和性が高い赤い結晶
魔力を蓄積させることができ、その魔力は刺激を与えることで一気に流れ出す
魔力を蓄積していない状態では黒曜石のように衝撃を加えると叩いた方向にきれいに割れる
-蓄積、撃発、解放-
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「あまり使い道は思いつかないが、加工すれば爆弾あたりには使えそうだ。」
ガチャの結果を確認し、陰陽銃剣を胡狼&伸牙へ装着すると、柊は現状を把握するため盆地を囲む丘へと登る。
頂上へと辿り着き、向こう側を見渡せば、そこにも同じような荒野が広がっていた。
しかし、種魔眼を通してみれば、そこらかしこに朽ちた建造物、遠くには壁に囲まれた都市が見えた。
都市内部には高層のビルや対外部のためであろう火砲があり、どうやらこの世界の技術は結構進んでるらしい。
「とりあえず状況を理解するためにも、あそこを目指したほうがいいな。」
そう思っていると、システムから通知が来る。
【特殊任務を開始します。】
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任務:異界からの来訪者
報酬:敵を撃破するごとに強さに応じたシステムポイントを入手可能
失敗ペナルティ:無し
制限時間:永久
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「なるほど、殺せば殺すほどポイントが稼げるときた。こいつはいい!」
ちょうどいい任務に歓喜しつつ、柊は丘から下り、都市の方角を目指す。
都市との間には谷があり、超えるには遠回りをするか一度下に降りるしかない。
それ以外にも地形は岩山や荒れ地と険しく、目測の直線距離で200km超、道のりとなれば300kmを超えるかもしれない。
アンファンスの状態では何週間かかるかもわからなかったその道のりも、ジュネッスとなった今では5日もあれば到達できるだろう。
収納空間にはシステムショップでたっぷり買いだめした1ヶ月分の食料がある。
「だが、それでもこの地にどんな化け物がいるのかもわからない。一応慎重に進んだほうがいいな。とりあえずこの丘から下に降りなくては……ん?待てよ?」
(この丘はどう見ても高さが1500mそこらしかない。となれば地球上で見える限界は地球の丸みによってせいぜい約180km、だが、事実として確かに約250km先まで見える!)
地球の半径は約6400km、高度1500mから見れば地球の丸みで180km以上先は物理的に絶対に見えなくなる。
もしも高度1500mから250km先が見えるのならば……
「おいおい……半径20000km!?どんだけでかいんだこの星は……!ほぼ海王星じゃねぇか!」
(半径が地球の3倍弱となれば、質量はその3×3×3で27倍。となれば重力も相応に増えるはずだが、ジュネッスに到達したことで相殺されているのか?それとも、星の密度が小さいか……)
「まぁ、ファンタジーで物理法則を考えるほうが無粋というものか。」
いったん星の大きさのことは置いておき、柊は都市の方角へ歩みを進める。
丘を落下に等しい速度で駆け下り、岩山の上を跳ね回る。
吸血鬼の肉体を持つ身にとって、行動時間は当然『夜』だ。
日が昇れば適当な場所に穴を掘るなどして日光を避けて眠り、夜間の移動中に疲れれば、収納空間から事前に用意しておいた着火に適した木を取り出し、焚火を付けてキャンプをする。
この世界では夜になればなぜか地面からアンデッドが這い出し、日の出直前に日光から逃げるように地面へもぐる。
道中アンデッドが数体襲ってきたが、アンファンスの時ならともかく、ジュネッスの今なら多少苦労する程度で倒せた。
よくいる敵対生物として、ゾンビ鷹がいたが、あれが最も厄介だった。空を飛ぶ上に飛行速度が速いのだから弾を当てるのが相当難しい。
もしも進化できなかったらと思うとゾッとする。
なお、デザートイーグルは度重なる荒地での戦闘により、すでに砂によって使用不能の状態になり、それ以降は胡狼&伸牙を使用している。
そして3日後、約200kmの道のりを超え、柊は谷の上まで到達した。
途中、廃墟の中を漁ったが、どこにも物資は残っておらず、廃墟からの補給は2日目で諦めた。
「思っていたよりも深いな……」
下を覗き込めば、風化した赤茶けた岩肌が、ほぼ垂直に近い角度で暗い谷底へと切れ落ちている。
舗装などされているはずもない、完全なる未開の断崖絶壁だ。
角度のせいで正確な深度はわからないが、下って上るには相当苦労する。
最も迂回するよりははるかに楽であろう。
確認できた最短の迂回ルートでも1000km近くを移動しなければいけないのだから。
「さて、降りるとするか。」
柊は勢いよく谷の傾斜を下り始める。
本来この角度を装備も使わず降るなど、自殺志願者かよほどの馬鹿かしかいないだろう。
だが、今の柊ならばそれができる。
崩れやすい砂礫の急斜面を、かかとから踏みしめるようにして滑り降りる。
ズズズ、と足元で小さく土砂崩れが起きるが、ジュネッスの超人的な体幹がそれを完全に制御していた。
まるでスノーボードで急斜面を滑走するように、落下のエネルギーを前進する推進力へと変換する。
スライディングの限界点。
目の前で足場が途切れ、十メートル以上の空間がぽっかりと開いた。
普通の人間ならそこまでだが、種魔眼はすでに、その先にある崖から突き出た頑丈な岩の突起を捉えている。
柊は空中に身を躍らせると、落下の風を浴びながら、左手だけでその突起を掴んだ。
腕に強烈な自重がかかるが、二度の強化を受けた筋力はそれを難なく受け止める。
「もう少しかかりそうだな……」
数時間後、日が登り始めたことで柊は谷の壁面にシステムショップから買ったシャベルとツルハシで穴をあけ、休息をとりはじめる。
目を閉じ精神を休めていると、突然近くで水の音が聞こえた。
「ん?高度が低いから水が溜まってるのか?」
暗い横穴の奥で、柊はわずかに耳を澄ませた。
チョロチョロと、岩肌を伝うような涼やかな水音が、深い谷の底から響いてきている。
日光の大部分が遮られた谷の深部は、上の荒野の乾燥が嘘のように湿気を含んでいた。
湿度の高い空気は、吸血鬼としての本能を少しだけ落ち着かせる。
だが、柊の警戒心までは弛まない。
(水があるということは、当然、それを求める『先駆者』がいるはずだ。干からびたゾンビやスケルトンよりは、よほど生気のある化け物がな……)
柊はホルスターに収めた二丁の愛銃――『胡狼』と『伸牙』の冷たい感触を指先で確かめる。
シングルアクションであるため、撃つたびに撃鉄を起こす必要があるものの、その絶対的な堅牢さゆえに、何物にも代えがたい安心感を放つ。
「方角的に行くしかないみたいだな……」
休息を終え、柊は掘り進めた横穴から静かに這い出しさらに暗い谷の底へと身を躍らせる。
はい、再転移です。
ま、この世界どういう感じかと言ったらまぁ。
皆さんご存じの中世ナーロッパから2000年ぐらい時間たった感じっすね。
近代兵器バンバン出てきますよ。
魔術も残ってるし。
あと科学的におかしいとかは言わないでくれ。
あくまでファンタジーなんだよこれ。




