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第033話〈寄生から共生〉

キャスが加わったことでサイクロン(重装甲バイク)による移動時はプルが柊の膝の上に移動し、キャスはサイドカーに乗る形となった。


眷属となったキャスに対して、柊はすでにシステムのことを説明しており、始めは驚かれたがすぐに転生者だからと納得できた。


柊はキャスのステータスを確認する。


————————————————

【眷属ステータス】

名前:キャス・ヴァスティエール

年齢:17

種族:獣人(猫)/黎血の眷属

身体:158cm

体重:48kg

魔術属性:風属性 土属性 闇属性

魔術混合:音属性 毒属性

【基本能力】

体力:60/60

魔力:160/140

精神力:14.3/30

筋力:60

速度:200

防御力:40


【状態】

瘴気汚染度:22.3%

好感度:30%(眷属初期値10%+英雄救美20%)


【スキル】

・再生Ⅱ

魔力を消費することで再生速度が大幅に上昇。


・視力強化Ⅳ

受ける攻撃が1/4の速度に見える。

暗闇や阻害、壁も素材強度によっては見通せる。


・暗殺術Ⅴ

暗殺行為全般に絶大な補正がかかる。


・気配遮断Ⅲ

自身からでる気配が大幅に減少する。


・継続戦闘Ⅱ

12時間の連続戦闘が可能。


・残存物減少Ⅲ

自身が残す痕跡を大幅に減少させる。


風滅迅雷(ゲイルライジング)

精神力と魔力を消費して風を纏い、速度を300上昇。

接触した相手に風による切断を自動で行う。

70°以下の急旋回を行える。

————————————————


(ふーむ、見事に速度と暗殺に特化しているな。)


【警告:精神空間にて悪魔ベリアルが覚醒しました。】


突如システムから通知が来る。


「は?」


『よう、愚かな下等生物。おかげでずいぶんとひどい目にあったぞ……』


「ん?どうしたのよ、突然声を上げて。」


キャスから問われ、柊は答える。


「まずいことになった、死んだと思った奴が目覚めやがった。」


『死んだ、だと?』


「ますたぁ、まさか寄生してきた悪魔!?」


『我があの程度死ぬと思っていたか?』


「そうだ。俺に語り掛けてる。」


二人に答えつつ脳内の悪魔に対応する。


(黙れ、なぜ目覚めた!)


『ふん、お前が新たに眷属を作ったからだ。我の権能は”王”そのものなのだぞ?』


(なら、今度こそ消してやる!)


柊が収納空間から陽鉄ドスを出そうとする。


『無駄だ。我はもう完全にお前の精神空間に定着した!我とお前の命は一体化し、もはや分離できん!』


(ならどうするつもりだ。また俺の精神を乗っ取りに来るか?)


『主導権がなぜか完全にお前に握られている。悔しいがそれはできないようだ。だからお前に力を貸してやる。お前が死ねば我も死ぬのだから、仕方なく、だ!』


(そうか、なら具体的にどんな力を?)


システムウィンドウが開く。


————————————————

【スキル『人外魔王(アウターズキング)Ⅰ』】

十分な実力を持つ配下1人につき自身、配下双方の基礎能力が10%上昇

嫁1人につき自身、嫁双方の基礎能力が20%上昇

配下への絶対命令が使用可能になる

配下とのテレパシーが使用可能になる


-心向くままに夢を掴め、その力をもってして-

————————————————


『スキル:人外魔王(アウターズキング)、我の権能そのものだ。こいつは我が許可したときしか使用できん。せいぜい使わせてもらえるように我をもてなすことだな。』


ステータスに名は表示されていたが、説明文が文字化けし、しようも不可能だったスキル。


(そうか、なら黙ってろ。)


『な、貴様人間の分際で!』


脳内の悪魔を無視し、バイクを基地のほうへ向かわせる。


「おい雑種! 人の話を聞け!『黙ってろ』とはなんだ『黙ってろ』とは! 感謝の言葉の一つでも述べたらどうだ!?」


脳内でギャーギャーとやかましく騒ぎ立てる悪魔を、柊は完全に脳の隅へと押しやった。


アクセルを軽く捻り、荒野を突き進むバイクの速度を上げる。


「ますたぁ……大丈夫なの?」


後ろに乗るプルが、不安と警戒の混ざった声で柊の背中に問いかけてきた。


キャスも猫耳を落ち着きなくピクピクと動かし、柊の体内に潜むという「悪魔」の存在に怯えている様子だ。


「……ああ、問題ない。内側から乗っ取られる心配はなさそうだ。ただのクソウザい脳内ノイズになっただけだから気にしなくていい」


「ノ、ノイズって……悪魔でしょ!? 寄生されたら普通は正気を失うか、身体を奪われるんじゃ……!」


「最初は奪われかけたがな。今は主導権がこちらにある。……お前も余計な心配をしなくていい。攻撃してくる気配があったら、俺が内側から力ずくで黙らせる。」


『貴様! 我をなんだと思っている! 悪魔の王たるベリアル様だぞ! 権能を貸してやらんこともないと言っているのだから少しは敬意を示せ!』


(うるさい。運転の邪魔だ、消えろ)


『WRYYYAAAA!』


脳内で頭を抱えている悪魔の叫びをスルーしつつ、柊は前方に目を向けた。


「ますたぁ、その悪魔がまた暴れたら、プルも戦うから!」


膝の上にちょこんと座っていたプルが、体をぷにぷにと揺らしながら言う。


「頼みたいところだが、生憎と俺の精神空間に居座ってるらしい。物理的な攻撃は届かないな。それに精神攻撃は俺のほうにもダメージが来る。」


「ちぇー、ざんねん。」


「な、なんなの?その悪魔、さっきからなんか寒気がするんだけど……」


キャスが引きつった声を上げながら、振り落とされないようにサイドカーに捕まっている。


(おそらく人外魔王が一瞬使用可能になったことで)


バックミラー越しに見える彼女の顔は、驚きと混乱、そしてどこか『この男の側にいて本当に大丈夫なのか』という強い警戒心が混ざり合っている。


(好感度30%……眷属化と典型的な英雄救美(窮地からの救出劇)で一応の信頼はあるが、まだ完全に心を開いたわけじゃないな。)


とはいえ、先ほど確認したステータスは破格だ。


しなやかな体躯から繰り出される『暗殺術Ⅴ』と『風滅迅雷(ゲイルライジング)Ⅰ』。


速度200に加え、スキルでさらに+300の補正がかかるとなれば、亜音速でのヒット&アウェイが可能になる。


頼もしい暗殺者だ。


それに加え、ベリアルがもたらしたスキル『人外魔王(アウターズキング)Ⅰ』、今は再びロックされたが、危機が迫れば仕方なく使用権を柊に渡すであろう。


(配下1人につき基礎能力10%上昇、か……。今の俺にはプルとキャスがいる。つまり実質20%のバフがかかる計算になるな。嫁の判定はよくわからないが……)


ベリアルの気分次第でしか発動できないという条件付きではあるが、強敵との戦闘における切り札が増えたのは間違いない。


『ふん……分かっただろ、雑種。我の力がいかに強大か。我が気まぐれで力を貸してやれば、そこらの有象無象など一瞬で粉砕できるのだ。さあ、我を崇め奉る気になったか?そして、強力な者は見つけ次第倒して配下にするんだな!』


(……せいぜい、使い勝手のいいバフ要員として期待しておくよ)


『貴様ァ!身の程知らずの凡夫風情が!誰がバフ要員だ! 我は王だと言っているだろうが!!』


再び脳内で喚き散らすベリアルを再度こそ無視し、柊は視線を遠くの地平線へと走らせる。


荒野の先に、薄っすらと目的地のセクラマ基地の影が見え始めていた。

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