第028話〈ザ・ブラッドムーンⅣ〉
融合体の叫びを聞き、柊は思う。
(まるで『王』のような……)
融合体に呼び寄せられたアンデッドの頭を伸牙で次々と吹き飛ばしていく。
「弾切れか!」
ロックを外し、ブレイクアクションを行って伸牙内部の薬莢を弾き出す。
ちょうど戻ってくる胡狼を回収してこっちも弾丸を撃ち尽くし、排莢を行う。
「土を纏い、敵を防げ、土盾壁。」
薬莢が地に落ちるよりも早く、柊は土の防壁に包まれる。
同時にリロードも開始する。
「地より貫け、地槍。」
防壁から石の槍が放たれ、防壁の周りのアンデッドを一掃する。
リロードが完了する。
「ますたぁ!数がどんどん増えるよ!」
融合体が呼んだのか、アンデッドの数がさらに増えていた。
融合体の腕も再生が終わっている。
「仕方ない!活性化だ!」
柊とプルが活性化する。
背が伸び、体に力が満ちる。
「第二ラウンドといこうか。王。」
下級のアンデッドでは反応できない速度で融合体へ駆けより、陽鉄ドスを頭へ突き刺す。
しかし、それでもアンデッド2体がとびかかり、柊の脚を掴む。
「そら!」
その2体を融合体へ向かって蹴る。
「GUUUYYYYY……」
融合体がそれを殴り、柊のほうへ弾き返す。
柊はもう片方の足にしがみついてるアンデッドごととっさに避け、融合体の頭へ弾丸を放つ。
「GHYIIIAAAA!」
損傷を与える。
しかし、やはりすぐに再生してしまう。
「再生者同士がやりあえば、こうなるのは必然、なら、プル!俺がお前を上に飛ばす!お前が突き刺せ!」
「わかった!刀を!」
柊は陽鉄ドスをプルに投げ、キャッチしたプルも上へ投擲する。
「とぉりゃあーーー!」
「地より貫け、地槍!」
融合体の固定を再度行う。
「GUUUGYYYY!!」
融合体がなんとかそれを腕で防ぐ。
「残念だな、プルに注意を向けすぎた。」
融合体の注意がプルに向いてる隙に、柊は、折れた陽鉄刀のもう片方、柄が残っているほうで融合体の頸を斬り飛ばす。
「取っておいてよかったぜ。」
頸を落とされたことで融合体は活動を停止する。
周辺のアンデッドも動きが鈍る。
【任務完了】
【報酬:ガチャチケット1枚、システムポイント5万を取得しました。】
【システムポイントが10万を超えました。収納空間を100m×100m×100mまで拡張します。】
「よし!」
「ますたぁ!残りも行くよ!」
柊とプルは周辺の鈍くなったアンデッドを活性化した肉体で圧倒し、一息つく。
「ますたぁ、それ、もう食べたら?」
「この融合体をか?」
「うん。」
「それもそうだな、さっさと喰って強化しよう。」
柊はその融合体を喰らう。
今まで食べてきたもの、人ともアンデッドとも魔物とも違うような味が口に広がる。
酸っぱいような苦いような甘いような、たとえばブドウのような味。
しかし、それも違うような、そもそも味がしないような空虚な味。
【喰血行為により吸血鬼融合率が32.1%になりました。 】
【スキル『喰Ⅰ』の特性奪取が発動__ 魔術適正:火を獲得しました。】
【スキル『喰Ⅰ』の特性奪取が発動__ スキル:再生Ⅳを獲得しました。】
【2つの再生Ⅳを統合、再生Ⅴへ進化します。】
『喰ったな?』
頭の中に、よどんだ声が響く。
「は?」
(これはシステムの通知音じゃない!)
『そうだ、我は……』
【警告:体内に悪魔が侵入しました。速やかな処置を推奨します。】
『ソロモン72柱が一柱、王たるベリアルだ。』
柊の全身に刺すような痛みが走る。
「がぁッ!!」
(ソロモン72柱だと!?この世界にも、存在するというのか!)
柊の顔が苦痛にゆがむ。
「ますたぁ!大丈夫!?」
プルが柊に駆け寄る。
「プル、俺は何かに寄生された!近寄らずにドスをよこせ!」
「え!?うん!」
プルから投げられたドスをキャッチし、自身の腹に突き刺す。
『なッ!貴様ァ!』
「ますたぁ!!?」
さらなる痛みが柊を襲う。
「お前、悪魔なんだろ?なら、聖属性強化を受けたこいつは相当、効くはずだ!」
『GUUUOOOO!? 貴様正気か!! 聖属性は我にとってだけではなく!貴様にとっても猛毒なのだぞ!それを自らの臓腑に叩き込むなどォ!』
「我慢比べと行こうか!クソ悪魔!!」
新たに再生Ⅴを得たことで、ぎりぎりのバランスでの我慢比べ、死への綱引きが成立する。
「俺の中で焼け死にやがれ!!!」
『ええい!仕方がない!契約と行こう、我の力を貸してやる!その刀を引き抜け!』
「いやなこった、あんたとは最終的に和解できる気がしない、しかも、悪魔と契約をするほど!俺はバカじゃあない!」
『おのれおのれおのれおのれェーーー!』
【警告:宿主の肉体限界が近づいています。速やかに停止してください。】
(うるせぇよ、こいつは、今、ここで殺さなくちゃいけない。)
「プル、こっから俺に何が起きようが絶対に近寄るな。お前も寄生される可能性がある!」
「え?でも、それじゃあますたぁが!」
「いいから!」
【システムポイントを消費して強制的に宿主の肉体を保全します。】
10万以上まで溜めたシステムポイントがどんどんと減っていく。
(構わん!やってやる!)
『GGGGOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!』
ベリアルの断末魔が響く。
「が、はぁ、かッは!あ、ふは、かひゅ……」
柊の意識が薄れていく。
【警告:悪魔の抹消に失敗しました。宿主の安全のために共存を実行します】
【ポイントを消費し、精神空間を創造します。】
【精神空間への悪魔の定着が完了しました。】
【魔王との共存により、スキル:人外魔王を獲得しました。】
どれほどの時間がたったのか、柊の意識が目覚め始める。
唇に、冷たい感触がする。
「ん……」
口の中に液状のものが流れ込んでくる。
それは暖かく、柊の体に満ちていく。
「んあ?」
柊の眼が開く。
眼前に、スカイブルーの揺れる物が映った。
(プル!?)
プルの唇が、柊の唇から離れる。
「ますたぁの体液でプルの魔力が回復するなら、プルの体液を飲めばマスターも回復できると思って……再生には魔力が必要でしょ?」
「あ、うん。ありがとう、プル。助かった。お前がいなきゃ今頃喰いつくされていたよ。」
柊が子供に戻ったプルの頭を撫でながら、あたりを見回す。
腹のドスはすでに引き抜かれており、あたりにはアンデッドはプルが作ったのであろう氷の壁に阻まれ、入ってこれていない。
自身のステータスを開いて残存するシステムポイントを確認すると、1000すら残っていなかった、そして、スキルの欄に新しくスキルが表示されていた。
(人外魔王?説明も文字化けしてるうえにそもそも使用できない。)
柊がふと上を見ると、血月が気絶する前よりはるかに高い位置に上っていた。
いや、目に映る情報は、月が下り始めているのを柊に知らせる。
「月……あ!そうだ、俺はどれほど寝てた!?」
「えと、5時間ぐらい……」
「まずい!基地のほうにアンデッドが!」
今回は中二病が結構ひどく爆発しちったユルシテクレメンス。
化物語を一気見したもので。




