第027話〈ザ・ブラッドムーンⅢ〉
血月当日、日の入り前、それと同時に月が昇る前。
ダニエルのオフィスに集まる転生者たち。
「さて、それでは事前演習と行こう。」
ダニエルがそう切り出す。
「まずハイクが東、ダニエルが北西、北、北東、柊が南東だ。おれは残りをやると同時に、手が空けば南東と北西の支援を行う。ジャックは基地に残ってシステムの制御だ。他にも俺の手下が外に出て殲滅を行う。」
全員がうなずく。
「あと柊、お前に頼まれたあれも用意しておいた。」
ダニエルが柊へドスのようなものを投げてよこす。
「折れた陽鉄の刀を再鍛造してドスにしたものだ。聖属性による強化も行っている。」
鞘から抜けば、眼が眩むほどの気持ち悪い光を放っていた。
「ありがとう、これでアンデッドに強く出れる。」
柊が受け取るのを見て、ダニエルは全員の顔に眼を向けていき、言う。
「よし、それじゃぁ各員、持ち場についてもらおうか。」
転生者たちは日光を避けるためにローブを纏いながら基地の外に出た。
「いいか、あと数分で血月が登る。アンデッドが出現し始めたら即座にマシンを発進させて魔導機関銃と魔導大砲の射程距離から離れろ。」
電話をつないだダニエルがそう言う。
「「「了解」」」
真っ赤に染まった血のような月が登る。
血月の夜が始まる。
「行くぞ、プル。」
「うん!」
柊とプルが同時にローブを脱いで投げ捨て、サイクロンを走らせる。
次々と湧き出るアンデッドを跳ね飛ばしていき、基地から離れていく。
「やっぱり数が多いな、まだ日の入り直後だぞ?」
(体感だが2倍3倍どころではないな、数十万匹が襲ってくるってのはどうやら本当らしい!)
基地から200m離れた地点に到達。
「そろそろだな、プル、あれをぶっぱなせ!」
「わかった!」
プルがサイドカーの前にかかっている布を投げ捨てる。
そこには潤ったシステムポイントで買った、サイクロンのサイドカーに固定済みの魔導改造ガトリングガンがある。
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃーーーーーーーー!」
凄まじい弾幕がアンデッドの群れを襲う。
「やっぱりゾンビにはガトリングガンだ!」
周りのゾンビを引きつけながら基地から離れていく。
「プル、今回は緊急事態だからな、魔力が足りなくなりしだい俺を斬って傷口から血を飲め!」
「え?ますたぁそれでいいの?」
「ああ、この月は俺の再生も強化する。今日ならどんだけ斬られてもすぐ直る!」
「じゃぁ、遠慮なくやるから!」
基地から1kmの地点に到達、ここからはアンデッドが基地を探知できなくなってくる。
「数がこれまで以上に増えるってこった。」
柊がそう呟きながら周辺のアンデッドを白線触手で切り裂いていく。
「ますたぁ!前にでっかい魔力反応!」
「はは、なるほどあれが合体した下級アンデッド、融合体ってところか……」
前方に巨大な影を捉える。
今まで相手してきた奴らの中でも最大、8mはあろう化け物だった。
「おいおい、どうやって自重を支えてるんだ……?」
腕、脚は双方10本以上あり、体のいたるところからは触手も生えている。
「突っ込むぞプル!あれを吹き飛ばす!」
「うん!あ、そうだ!」
プルがサイクロンの前に這っていき、硬質化して防御層を形成する。
空気抵抗が少なく、前に棘が突き出た攻撃的な作りをしている。
「ますたぁ、これでやっちゃって!」
「ま、マジか、じゃぁ遠慮なくいくぜ!」
サイクロンの超限界走行を発動し、合体したアンデッドを轢く。
「GORRRRRUUUUUAAAAAAAAAAAA!!!!」
それはバラバラに砕け散り、構成していたアンデッドもはじけ飛ぶ。
「やっぱり優秀だなぁ!このバイクは!」
(ガソリンの貯蔵は十分、超限界走行もあと10回以上使える、融合体がこの程度ならまったくもって問題なし!)
1時間が過ぎ、アンデッドの数がさらに増えてくる。
「チッまた融合体か!」
「ますたぁ、こんどの、なんか違くない……?」
「おっと……これは……」
6mほどの体長、人の形を保っているうえ、手には炎を纏っている。
腹から胸にかけて、そして頭部も骨が露出し、その骨がうごめきこちらも炎を発している。
【任務を開始します。】
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任務:融合体を殺害せよ
報酬:ガチャチケット1枚 システムポイント5万
失敗ペナルティ:強制死亡
制限時間:120分
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「プル、ありったけの弾丸を打ち込んでやれ。」
(まずは反応を見る。)
「うん!じゃ、そぉりゃぁーーーー!」
プルが魔導改造ガトリングガンをその融合体へ向かって連射する。
が、融合体は弾丸を受けた直後に再生し、意味があるように見えない。
「なるほどな。あれを取っておいて正解だった。プル、ガトリングで他のアンデッドを融合体に近づけないよう殺しておいてくれ。」
陽鉄のドスを引き抜き、左手で逆手持ちする。
「俺は、あいつを斬る。」
「らっじゃー!」
柊はバイクから飛び上がり、融合体の上空から胡狼の引き金を引き、落下する勢いを利用して胡狼に付けた銃剣と陽鉄ドスで突き刺す。
「WOROROROROROROOOAAAA!!!」
融合体は弾丸をもろに受け、損傷と再生を繰り返し、腕で銃剣とドスを受け止める。
「骨でも叫べるのか!」
「GOWWWWHHHHAAAA!!!!」
柊が腕に着地したことで靴とズボンが融合体の炎によって焦げ付く。
「やっぱりこいつは効くみたいだな!」
陽鉄ドスが触れた部位が煙を上げてどんどんと崩れ始めるが、崩れたところから再生する。
「その再生が、どこまで続くんだぁ!?」
融合体が腕を振るい、柊を吹き飛ばす。
「おっと、ただやられるだけとはいかないようだ。」
胡狼を融合体の上空40m程度にほうり投げ、右手で左のホルスターの伸牙を引き抜く。
「地より貫け、地槍。」
地面から石の槍が生まれ、融合体を固定する。
「さぁて、死にやがれ!」
陽鉄ドスを投擲する。
「防ごうとしても無駄だ、プル、あいつの右腕を吹き飛ばせ。」
「りょーかーい!」
プルがガトリングを周辺のアンデッドから融合体へ移し、右腕へ集中砲火を行う。
「GUURRRYYAAAA!!」
右腕が弾丸によって抉られ落ちる。
「次は左腕だ!」
伸牙の位置を調整し、陰陽の銃剣同士が引き合う性質を利用して上空の胡狼を引き寄せる。
「岩石弾!」
魔力を1割ほど消費し、岩石弾を放つ。
鋭く尖るように成形し、切断に特化するように射出する。
「GIIIIIIAAAAAAAAAAAAA!!!!」
上から落ちる胡狼の銃剣と、横からの岩石弾によって融合体の左手が落とされる。
「これで頭を守るものがなくなった。」
陽鉄ドスを融合体の頭に向かって投擲する。
[[WRRRYYYAAA!!!]]
「何!?」
融合体が今までとは決定的に違う叫びを上げる。
「「「「WEEEEEE!」」」」
周辺のアンデッドが狂ったように押し寄せ、ドスをその身を呈して阻む。
「叫び、だと!?」




