第026話〈ザ・ブラッドムーンⅡ〉
ブラッドムーン前日の夜。
空に浮かぶ満月に限りなく近い月は、明るく地を照らしている。
数日前にプルも傭兵登録を済ませ、現状ランクはD、稼ぎは安全のためドッグタグを通してちょうど半分ずつ保存している。
柊とプルはダニエルが用意した地下街の宿に泊まるようになったことで、昼は寝るとき以外地下街で魔術を練習し、夜は基地の外へ敵の数を減らすため狩りを行う。
もちろんプルの魔力が枯渇し、あんなことやこんなことをしたこともある。
血を吸うより時間はかかるが、より確実に回復でき、何より気持ちいいのでプルがしたいと言うのだ。
「今日まで死ぬ気で殺しまわったおかげで3万弱の数を殺せたが、これでも全体の1割以下にも満たないんだからな……」
(別のところでも枯れて死にかけたが、スキル『喰Ⅰ』のおかげで回復が早くてよかった。)
途中柊はその効率と働きからダニエルより追加で100万₤₤の特別手当をもらっていた。
(ダニエルによれば想像以上の働きで本来の三倍払ってやろう、とのことだ。)
ピロン
スマホにダニエルからのメールが届く。
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【血月本番の作戦について】
基地から200m以内は基地外壁の魔導機関銃と魔導大砲で
狂暴化したアンデッドと魔物を一掃する。
お前は基地から南東の200mから5km範囲内に入ってきた
のを狩ってくれ。
それ内に入ってこないのならそれでいい。
【追記】
今日のお前の担当も南東だ。
せいぜい地形をよく観察しておけ。
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アンデッドは日の入りとともに地面から這い出し、そこら辺を彷徨い続け、日の出とともにその場に潜る。
それらの探知範囲はせいぜい数100mだが、本能的に人の多い場所に寄って基地に近づいていくうえ、血月の夜には探知能力も何倍にも強化される。
結果として広範囲のアンデッドの殲滅が必要になる。
魔物は人の多い場所に惹かれる性質は無いが、それでも血月に充てられて縄張りから外れる場合がある。
臆病な魔物も狂喜乱舞して積極的に人を襲うようになる。
「まぁ、その範囲が妥当だな。南東方角なら地形も大体把握してるし。ちょうどいい。」
(ここ数日の殲滅任務で数回行ったし、プルと出会ったのも南東だしな。)
横で寝ていたプルが起き上がる。
「んうぅ~、ますたぁ、今日も狩り?」
「ああ、あと血月当日の担当区域も決まった。今日は本番の時に楽できるよう、多めに殺しておこう。」
二人は基地から出てサイクロンに乗り、南東へ進む。
血月が近いおかげで、吸血鬼である柊とスライムであるプル、双方に強化がかかっている。
「最低でも5000匹はいきたいな。あいつらは無限に湧いて出てくる。特に基地のような人が多い場所付近じゃな……」
ここ数日繰り返したのと同じように柊とプルはアンエッドを殺していく。
屍人に骸骨に喰屍鬼、アンデッドにも種類はあるが、地面からは言えてくるような奴らはここら辺の下級がせいぜい。
吸血鬼や骸魔のような上級は現れない。
だが下級が数千数万と固まると話は変わってくる。
(ダニエルの話によると、下級が集まって合体する場合があるらしい。血月の夜となれば上級相当が複数現れる場合もある、と……)
柊はそう思いながらサイクロンに近づいた屍人の頭を伸牙で吹き飛ばす。
「ますたぁ、あっち、なんか変なのがいる!すごい魔力!」
プルが何もない場所を指さす。
「ん?どこだ?」
その方向を見てみるが、やはり何もない。
「んあれ?ますたぁ、消えた……」
「マジか、見に行ったほうがいいか?」
「ううん、プルの気のせいみたい。」
そう言われ、柊はさっさと次のアンデッドの密集地へ向かう。
「なるほど、6000匹以上か、日に日に記録が伸びるねぇ。」
ダニエルは柊の報告書を読みながら言う。
「まぁな。」
柊とプルは体力の限界と日の出が近かったことで狩りを終え、ダニエルのオフィスへ来ていた。
そばにはダニエルとジャック以外にも2人の転生者がおり、今までは任務ずくめだったその二人の紹介も兼ねている。
「さて、では紹介に移ろう。こっちがハイクでこっちがタイタスだ。両方とも俺やジャックと違って傭兵で、完全に俺の部下というわけではないが、血月だから協力してもらってる。」
(タイタス、あの野郎の仲間が確か言ってたな……たしかAランク傭兵……)
転生者のうち大柄で色黒、角が生えたほう、タイタスが口を開く。
「お前が柊か、当日俺は北方向の担当だから共に戦うことはなさそうだが、よろしくな。」
タイタスが柊へ手を伸ばす。
「ああ、よろしく。」
タイタスの握手に柊が応じる。
「ッ!?」
(なんだ!このとてつもないパワーは!)
柊の手がとんでもないパワーで握り返される。
(こいつの筋力ッ、数値にして300以上はあるんじゃないのかッ!?)
「そこまでにしとけタイタス、あんたに握られちゃボスですら敵わん。」
もう片方の転生者、小柄で肌が赤く変色したほうがタイタスを止める。
「俺はハイク、タイタスがパワーなら俺はスピードだ。あんたも速いと聞いてるぜ?」
「そりゃどうもッ、ハイク。なぁタイタス、離してくれないかッ?」
タイタスは柊の手をパッと離す。
「ハッハッハッハッ!柊、お前も相当鍛えてるようだな。筋力120ってところか?」
タイタスが柊の背中をバンバン叩きながら問う。
「残念ながら筋力はまだ117だ。」
「おっと、そうか。」
「はいはいそこまでぇ、顔は覚えたな?柊。これから仲間としてやっていくからな。」
ダニエルが柊に問う。
「ああ。KAVO側ならまぁ、そういうことなんだろ?」
柊がハイクの肌とタイタスの角を見る。
「そうだ。人をやめてる。」
「辛気臭い話はよせ!人だろうがバケモンだろうが俺たちは俺たちだ。だろ?」
ハイクが止める。
「そうです。柊さん、我々が転移から何年たってると思ってるのですか?」
ジャックもそう言う。
「人でないことなど、当の昔に受け入れていますよ。それともあなたは受け入れていないのですか?」
少しの間を置き、柊が答える。
「受け入れてる。この力は生き延び、敵を殺すのに必要だ。」
「よし、じゃぁ酒でも飲むか!最後の一杯になるかもしれないからな。」
ダニエルが全員にウイスキーを投げる。
「そんじゃ、災いを呼ぶくそったれの血月に乾杯!」
「「乾杯!」」
この場にいるプルを除いた全員が瓶のウイスキーを一気飲みし、その瓶を地面に投げて割った。
こんかいちょっとセンチメンタルっちまった。
作者がサイバーパンクエッジランナーズを一気見したんだ。
何も聞かないでくれ
最後に行っておく、レベッカはいい女。




