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第024話〈魔術Ⅱ〉

「地より貫け、地槍。」


柊は2節の詠唱を行い、魔導書の魔術を実行する。


前の地面から石槍が形成され、ターゲットダミーを貫く。


1節(ワンカウント)の岩石弾より威力が高いな。消費魔力も少し多い。」


横ではジャックが水属性1節(ワンカウント)魔術『水弾』の見本を見せた後、プルの肩に触れ、体内の魔力をその流れに整えている。


「いいですか?水を吹き出すイメージで、『水弾』と唱えながらこの体内の流れを行ってください。」


「水弾?」


プルが疑問が残りながらもそう唱えると、プルの指先からジャックの見本より数段威力が落ちた水の塊が打ち出され、ターゲットダミーを湿らせる。


「それでいいですね、繰り返してれば魔力の属性変換も速くなるのでそのまま続けていてください。」


ジャックは今度は柊のほうへ行く。


「魔導書による習得はうまくいってますか?」


「ああ、もう何回か繰り返せば行けそうだ。」


魔導書に従って魔術を行使するたび、体内にも同じ感覚で魔力を流せるようになっていく。


柊が三度繰り返した段階で、地槍は完全に習得できた。


「ますたぁ~、ジャック~、これ唱える必要あるの?」


柊とジャックがともにプルのほうを見ると、なんと無詠唱で水弾を連射している。


威力はやはり低いが、どうやら詠唱時とほとんど変わらないようだ。


「プル、それどうやってるんだ?」


「う~ん、よくはわかんないけど、魔力を魔術の通りに流すだけでいけるの。」


そういわれたことで柊も同じことを試みるが、うまくいかない。


「すごいですねぇ……無詠唱での魔術の行使ですか……」


ジャックが小声でそう漏らす。


「魔術で重要なのははっきりとした想像力、詠唱もあくまで再現性を上げるための補助です。なので習得した魔術が増えれば自作で魔術を生み出せるようにありますよ。」


「なるほどな。」


「プルさんは水属性の変換、発動は習得できたようですし、次は風属性のほうをやっていきますね。」


ジャックがプルのほうに戻り、さっきの手順を繰り返す。


柊も次の魔術に取り掛かる。


(次は3節(スリーカウント)。)


「土を纏い、敵を防げ、土盾壁。」


柊の周辺を土が囲い、周りから防御する形をとる。


(よし、次、二回目。)


「土を纏い、敵を防げ、土盾壁。」


前の物より硬く、素早く発動した。


三度、四度と繰り返し、そのたび効果が向上する。


五度目には習得することができた。


3節(スリーカウント)で5回か。」


「ジャック、風属性もできたー!」


振り返ると、プルは両手から無数の『風弾』をぽろぽろと零すように連射していた。


的として置かれていたダミー人形が、低い威力とはいえ連続で打ち込まれる風の衝撃でカタカタと揺れている。


「……はは、素晴らしい習得速度ですね……」


ジャックは引きつった笑みを浮かべながら、眼鏡の位置を直した。


その瞳には少しの狂気と好奇心が宿っていたが、柊もプルもそれには気が付かなかった。


一方、柊は手元にある魔導書のページをめくり、次の文字に目を走らせていた。


(次、4節(フォーカウント)


「私が立つ地よ、崩れ落ち、飲み込め、蟻地獄。」


ターゲットダミーが地面に沈みこむ。


いちおう建物に影響がないよう魔力を調整しながら、今度は10回の試行を繰り返したのちに習得できた。


「さて、次が5節(ファイヴカウント)か。」


「柊さん、試すのはそこまでにしておくのをお勧めします。」


柊が視線を向けると、ジャックが真面目な顔で首を横に振っていた。


5節(ファイヴカウント)以上の魔導書による修得は、肉体に与える負荷が跳ね上がります。5節(ファイヴカウント)ならまだ大丈夫だとしても、6節(シクスカウント)7節(セブンカウント)となれば今の柊さんの魔力容量では耐えられませんよ。」


「……そうか。なら無駄なリスクは冒さないべきだな。」


柊はあっさりと魔導書を閉じた。


(過信は禁物だ。)


代わりに、先ほどジャックが説明していた『無属性の混合』に思考を切り替える。


「ジャック、無属性を他の魔術に混ぜるやり方を教えてくれ。精神効果が付与されるんだったな」


「ええ、それなら簡単です。発動時の魔力に、無属性、つまり精神を攻撃できるように変換した魔力を『包み込む』ように流し込むのです。」


柊は指示通り、手に練り上げた土魔力へ、無属性の魔力を薄く被せるように意識を集中させる。


「地より貫け、地槍」


繰り出された石槍は、先ほどよりも薄暗い帯を纏って地面から突き出た。


ターゲットダミーに命中した瞬間、鋭い打撃音と共に、わずかに空気が歪むような精神波動が弾ける。


それを柊の魔眼は正確にとらえた。


岩石弾でも試し、こちらも成功する。


(……浅い打撃でも、相手の意識が一瞬揺らぐ、実戦での一瞬の隙を作るには十分すぎる。次に傭兵組合で依頼を受けた時に試してみるか。しかもおそらく俺が精神波動を見れるのはこの(EYES)(OF)(SEED)のおかげだ。魔眼を持たない相手には奇襲として優秀過ぎる。)


覚えた物を一通り復習し、再度魔導書を開いて4節以下の使えそうな魔術を探す。


「土足場、砂舞、岩落とし……こんなところか。」


なお、1節魔術属性弾シリーズの土弾を試してみた結果、相手に土を投げつける程度の効果しかなかったので岩石弾でいいと判断した。


(水弾も風弾も威力合ったんだけどな、土弾だけ性能が残念だ。だから同じ1節魔術に岩石弾があるんだろうが。)




「柊さんの無属性を混ぜる混合(クロス)と比べ、二重混合(ダブルクロス)は属性をちょうどよく混ぜないといけません。」


魔導書をあさっている柊の横で、ジャックは二重混合の見本をプルに見せている。


右手に激しい風、嵐属性の球体を作り、左手には氷を生み出している。


「このように風属性に寄せれば嵐属性、水属性に寄せれば氷属性になります。魔術はイメージが大事なのでこれをよく見て覚えてくださいね?ではまた体内に魔術の流れを作りますよ?」


殺気とは違い、両手でプルの両肩に触れる。


「ん~、二属性が同時に……」


単属性とは違い、難航しているようだ。


「流れはできていますね。まずは氷を飛ばすイメージで『飛氷』と唱えながら魔力を流してください。」


「飛氷ぉ!」


小さな氷の塊がターゲットダミーに飛んでいき、当たった部分を少し凍らせる。


「良い感じですね。次の魔力の流れはこうです。手のひらで回すイメージで『嵐丸』と唱えながら手のひらをターゲットダミーに押し付けてみてください。」


ジャックは先ほどと同じ流れを繰り返しそう言う。


「嵐丸ん!」


プルの掌に小さな渦が生じ、回転しながらターゲットダミーへ押し付けられる。


ターゲットダミーに確かなダメージが現れ、表層に傷がつく。


(なんかどこかで見たことがある気がするな……螺旋(らせん)……いやこれ以上はいけない。)


プルの嵐丸を横目に見ながら柊はそんなことを考えつつ魔術の練習を続ける。

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