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第020話〈筋肉は全てを解決する〉

幸い特に襲われることはなく、無事に基地へ戻ることができた。


(だが、プルを見られた。活性化はまだ明かしてないが、まずい状況だな……)


一応また基地から離れた位置でバイクを収納空間へしまい、プルを服の一部へ擬態させたが、意味があるのかはわからない。


(基地内でスライム種は見なかった。騒ぎを起こすことがないという利点はあるか……)


基地内部を適当にルートも決めず1時間ほど歩き回ってから前と違うもっと広く防音性能が高い宿屋を予約し、それからやっと傭兵組合へ向かった。


もちろん監視カメラの有無はチェックしている。



組合内部にあの大柄の傭兵、トムと呼ばれていた男もその仲間もおらず、柊はほっとする。


(また絡まれたら面倒だしな……)


受付に行き、アンデッドの耳とドッグタグを渡す。


「はーい、えっと……432個か、よくもまぁこれだけの数を……というか速いなお前。まだ2時間も経ってないぜ?」


受付は432回も耳の切り落とし作業を行ったことに呆れたような表情を見せる。


「アンデッドはもろいですから、切断は簡単に行えましたよ。」


「そうかい。それは否定しないが……はい、報酬の43200₤₤(ダブリラ)だよ。」


「ありがとうございます。」


帰ってきたドッグタグを受け取り、柊は組合を出て宿屋を目指す。


その途中、魔眼で監視者がいるか確認したが、とくに引っ掛かる物はなかった。


(諦めてくれたらいいんだがな……)




数分後、柊は宿屋につき、収納空間から取り出したラーメンをプルとともに平らげる。


「ぷは~」


満足そうにしているプルの横で、柊は収納空間を確認していた。


「あー……貯蓄してる食べ物ももう少ないな。二人で消費すればそりゃこうなるか。あとで買わないとな。」


食事を終えてからは、あることが可能かどうかを確かめるため、柊は筋トレを開始する。


柊のステータスは吸血鬼からの補正以外にも、転生後から上昇しており、それはおそらく度重なる戦闘によるものだ。


(なら、筋トレでも戦闘力が上がるはずだ。もはや人間じゃない俺なら筋力の上限も高いだろう。)


とりあえず腕立て、腹筋、スクワットを各100回こなすが、効果は感じなかった。


逆立ち腕立てやら、指だけで保持した懸垂などもやってみるが、やはり大した効果は無い。


「人間の範疇の筋トレはそこまで効果がないか……」


筋トレによって筋力が上昇する仕組みは、一時的に筋繊維を傷つけることで再生後に強化されることにある。


つまり筋繊維を傷つける必要があるわけだが、人間が行える筋トレでは吸血鬼の筋肉に傷がつくわけも無い。


「そうだ、ツェルモ鋼に魔力を込めてアームバー代わりにするか。」


思いつけば即座に実行、早速収納空間からツェルモ鋼を取り出し、均等に力を加えていって直径5cm程度の棒状に形を変える。


「形は悪くはないな……」


柊は自身の魔力の6割をゆっくりと流し込み、それを硬化させる。


「ふんッッッ!!!」


ツェルモ鋼棒はビクともしない。


「おいおい、マジか、硬すぎんだろ、数時間前に鉄かその合金(トムの大斧)握りつぶしたばっかなんだぞ俺……」


何度か試してみるが、やはり全然曲がらない。


「だが効果はありそうだな……だったら!」


その後も数分間ツェルモ鋼棒と格闘し、2時間後、やっと少し折り曲げることができた。


「はぁ、はぁ、はぁ……さすがに疲れてくるな……」


ステータスの筋力欄を開けば、予想通り上昇していた。


しかし、上昇幅は1のみである。


「2時間で1なら20時間で10、一日中鍛えれば7日半で筋力が二倍になる!実現できるかはおいておいて……」


(しかもたぶんこれもだんだん上がりにくくなっていくだろうな……上限もわからないし。)


さらに追加で2時間鍛えた後、ツェルモ鋼棒はさらに少し折り曲げられた。


「ふう、とりあえずこれぐらいでいいか。」


柊はツェルモ鋼棒を収納空間に戻し、プルへ留守番を頼む。


「プル、俺は基地内の店に行って食料品を買いに行く、来るか?」


「ん、行く~!」


プルはいつもの擬態を行い、柊は近くの食料店へ向かう。




幸い食料店は深夜でも開店しており、そこで保存がききそうなものを選んで1か月分の食料を買うことができた。


(吸血鬼からすればちょうどいい時間だけど今って大体深夜3時だしなぁ……まぁ自動レジがあるからこそできる芸当だな。異世界なのに前の世界とほぼ変わらない生活ができる。)


そう思いながら帰路を進んでいると、


夜異柊(やこと しゅう)様、数時間ぶりですね。」


数時間前と同じ、黒スーツの男、いや、人形が後ろから柊に声をかける。


今度は二人、同じ服装、同じ背格好(完全に相違点無し)


「……何の用ですか?渡し忘れでもありました?」


「そういうわけではございません。今回はあなた方を私の主の場所まで連れていくためですよ。」


(前回は正体を明かさなかったのに、数時間で気が変わるとはどういうことだ?)


「そうですか、先に荷物を宿に持ち帰っても?」


適当な理由で時間稼ぎを試みる。


「私たちのほうで送っておきます。」


(やはり無理か、宿の位置まで割れているときた。断ったらどうなるかもわからねぇし……)


もはや付いていくしかないと判断し、柊は答える。


「わかりました、付いていきます。」


「話が早くて助かりますよ。」


「私が荷物を送り届けておきますね。」


柊は片方に荷物を私、もう片方についていく。


そういうとスーツの男は大穴を下っていき、地下6層で裏路地に入っていく。

【基礎能力を上げる方法】


体力:健康的な生活、戦闘を繰り返す


魔力:魔力を使用する、魔獣の肉を食う


精神力:精神的なショックを受ける、瞑想を行う


筋力:健康的な生活、筋トレ、戦闘を繰り返す


速度:同じ行動を繰り返す


防御力:健康的な生活、攻撃を受ける

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