第018話〈ドン・オブ・ザ・スタビリート〉
ヒーヨ、ヒーヨ
外で鳥が鳴いている。
(この声はヒヨドリか?朝チュンじゃなくて朝ヒヨねぇ……何考えてるんだ俺。)
時刻はちょうど日没後、何時間寝ていたのだろうか。
隣にはプルがいつもよりつやを増して寝ている。
「あ゛ぁーー、何回出したんだっけ……生殖隔離があるからまぁ最悪の事態は起こらないだろうが……というかスライムって性別あるのか?」
「う~ん、おなかいっぱいぃ~……。」
柊はそう呟いてるプルに目を向け、愛おしそうに見つめる。
柊本人は気が付いていないがその口角も自然に上がっていた。
プルの頭を撫でてから起き上がり、収納空間から出した服に着替える。
「さて、改めてこの世界のインターネットに接続してみるか。門番がいうには俺のアンドロイド16は古いそうだが……まぁ繋がるだろう。基地の外にいた時から5G使えてたし。」
ネットを探そうと設定アプリを開いたところ、あることに気が付いた。
「あれ?この世界には俺のスマホが契約してるソ〇トバンクが無い……となれば通信速度は遅くなる……なのに昨日、俺のスマホはすらすら使えた!」
そのまま設定からWi-Fiを探すと、爆速に速い『スタビリート基地第3大穴共通Wi-Fi』を見つけた。
「通信速度2000Mbpsってヤバすぎだろ……表記気にこれ基地内どこでもFPSできるぞ……?」
爆速のWi-FiにウキウキしながらGo〇gle Chr〇meを開いて使おうとするが、
「ってGo〇gle本社も無いなら使えるわけねぇじゃねぇか!」
(傭兵組合かどこかに行って検索用アプリ入れないとな……)
そう思っていると、宿のインターホンが押される。
(どういうことだ?この世界に知り合いはいないはずだぞ……)
プルを布団で隠し、念のため聖骸布外套を身に着け、腰の胡狼に右手をかけた状態でドアスコープを覗く。
外には帽子を深くかぶり、スーツを着た男が立っており、手にトランクケースを持っている。
武装はしていないようだが、魔眼やら魔法やらスキルやらがある時点で非武装はまずありえない。
ドアチェーンをかけた状態でドアを開く。
「ルームサービスは頼んでいませんよ?」
「ルームサービスではございません。夜異柊様。私の主からこちらを渡すように言われ、来た次第でございます。」
スーツの男はトランクケースを開く。
中にはスマホらしきものと、『D』と刻まれたドッグタグが入っていた。
「なるほど、では少々お待ちを。」
ドアチェーンを外してから改めてドアを開け、スーツの男からトランクケースを受け取る。
去ろうとするスーツの男を呼び止める。
「あの、これを私に送るよう言った人とは誰なんですか?」
「すみませんが御教えできません。」
「あ、ちょっと!」
柊はそのまま去ろうとするスーツの男の肩を掴むが、
ゴトッ
男の腕がそのまま落ちてしまった。
血が流れることはなく、しかもよく見れば、その腕は樹脂製のように見えた。
「な!」
しかし男は平然としており、腕を拾い上げ、元に戻す。
「夜異柊様、すみませんがこれ以上のことは言えません。」
(おいおいおい……こりゃ人形か?拷問してもカスほどの情報も渡すつもりはないようだ。)
スーツの男が去った後、部屋の中で柊は渡されたものを確認する。
まずは新しいドッグタグ、そこには確かに『D』と刻まれている。
刻まれている文字列、傭兵コードは柊の持っているドッグタグと一致し、スマホをかざせばATM機能も問題なく使えた。
「どうやらマジで寝てるうちにDランクに昇格したのか。裏にいるのが誰かなのかはわからないが、これはありがたい。」
傭兵組合で見た依頼ボードにはランク制限があった。
これならばいちいち低いランクの依頼を受けてランクを上げる必要がなくなった。
「で、これはスマホか?」
渡されたもう一つの物品。
幅6cm、高さ13cmでスマートフォンの形状をしているが、背面が随分と複雑で、なんとカメラが5つついている。
「まぁ情報収集には役立つだろうが……異世界でもこんな進化の仕方をするんだな。」
写真アプリを試してみれば、100m先まで4K画質を維持できた。
他にもアプリが入っており、元のスマホに追加された地図、電子決済はもちろん、特筆すべきものとして専用のメッセージアプリが入っていた。
操作はL〇NEとほぼ同じで、アプリチュートリアルによれば基地から半径5km以内ならメッセージが届くらしい。
「やっぱり通信衛星は無いのか?宇宙に何かあるか……まぁ宇宙に行けないのはいいことだ。この世界なら絶対に作れるだろうICBMの撃ち合いが起きないんだからな。」
地図アプリも開き、前回は必要なかったから試していなかったが、ズームアウトを試みれば基地周辺の範囲までしか表示できなかった。
「ん、う~ん……」
新スマホをいじっていると、プルがやっと起きた。
「あ~、その、調子はどうだ?」
「ん~おなかいっぱいで幸せ~。」
プルは腹部をさすっている。
柊に罪悪感が押し寄せる。
「そうか、ならよかった。もう少し休んでるか?」
「すっごく元気!」
まるで何もなかったかのようにそう言ってのけた。
「あ~、俺は良い感じの依頼がないか探しに傭兵組合に行くが、ついてくるか?」
「うん!」
そういい終わると同時にプルは柊に向かってジャンプし、服の一部に擬態する。
「じゃあ行こうか。」
「ごーごー!」
※柊には知る由もないが、発射位置がスライムの繁殖時に出現する核の外ならば、基本的にその部分の液は魔力と栄養として消化され、着床は発生しない。
何が言いたいかというと子供は生まれません。
というか別種だからそもそも子どもできないって。




