第017話〈宿〉
柊は魔力を流し込んでいくが、別にひびが入ったり割れたりするようなことはなかった。
柊は少しがっかりしつつも装置の数値を見れば、140となっており、事前にシステムのステータスで確認した数値と一致していた。
(再転移前から20増えているが、これは度重なる魔物喰いの影響だろう。)
魔物の肉が高級なのも納得だ。
「おいおい、近接系傭兵平均の倍以上とは大した数値じゃないか!まぁトカゲとサソリをあの数狩れるなら納得だ。」
言いつつ受付は魔力測定装置から出てきた銀色の小さなプレートを柊に渡す。
その上には柊の名前、数字とアルファベット8桁の文字列、そして『F』と表示されている。
「まぁ魔力量が多くともFランクから始めてもらうよ。そしてそれは傭兵番号、アドレスみたいなものだ。」
柊はドッグタグを受け取り、数列を確認する。
(CR721V9Gか、文字は完全ランダムか?)
「あと、決済アプリが入ってる電子端末をこのドッグタグにかざし、魔力を流せば金のやり取りができる。ドッグタグ内の金はそのまま組合内でデータとして保管されるからATMと思ってもらっていい。ドッグタグ自体にも記録されるから組合がつぶれても金を引き出せる」
防犯的にどうなのかという疑問から柊は問う。
「あの、ドッグタグを他の人に奪われたら金を全て奪われるのでは?」
「それに関しては安心しな。それはお前の魔力波動を記録している。パスワード代わりだ。」
この世界の謎技術には驚嘆するばかりだ。
もはやパスワードいらずで、ネット犯罪も格段にしにくいだろう。
「わかりました。ああそうだ。この町の地図はありますか?」
「地図アプリを入れてやる。電子端末を貸してくれ。」
スマホを渡すと、入り口でやったのと同じような操作をされ、スマホが返される。
確認すれば地図アプリが確かに追加されている。
「ありがとうございます。」
柊はそのまま受付を離れ、傭兵組合から出る。
さらなる情報、特に転生者に関するものを求め、この基地のネットワークに接続しようとしつつ歩いていたが、服に擬態したプルが小さくつぶやく。
「ますたぁつかれた~、休みたい~。」
「よし、なら宿にでも行こう。」
柊は声を落として答え、地図アプリを開いて宿屋の位置を探す。
「近いのだとここか。」
同時に地図アプリの機能でこのスタビリート基地の広さを計測すると、半径3kmの円の城壁に囲まれ、中に半径800m程度の円が五つ、均等に配置され大穴として開いている。
「ふむ、ここか。」
柊は中世の雰囲気を残した宿屋に到着した。
中では機械での自動チェックインが可能で、通常なら一晩2000₤₤で、Fランクの傭兵なら1900₤₤で泊まれる。
宿泊と言ったが正しくは24時間の宿泊利用が可能で、夜行種には非常にありがたい。
幸い部屋には空きがあるようで、難なくチェックインができた。
部屋は3階にあり、広さは4畳程度で机と椅子、そして、ベッドが一つ。
「あー、まずい。ミスったな。一つしかないか。でも二人部屋を選んだらそれこそおかしいしこれでいいのか……?」
一応魔眼を起動して監視カメラがないか確認しつつブツブツ言っている柊をよそに、プルは擬態を解き、ベッドに飛び込む。
「あ゛~づがれだ~~~。」
ベッドの上でゴロゴロしているプルはなんとも子供らしかった。
「う~、ますたぁ。やっぱり魔力欲しい~~」
基地に入ってから正気濃度が極端に低くなったせいか、空気中に存在する魔力も少なかった。
魔力不足になるのも無理はない。
「わかった。ちょっと待ってくれ。」
適当に血を渡そうとナイフとコップを探すが、プルが這い寄ってくる。
「ますたぁ、ここから魔力を感じる……」
プルが非常によろしくない位置に頬ずりし始めた。
「え?おいちょっと待て。どこ触ってる!」
「いただきまーす!」
「違うから!某運命の夜でもやってたけど本来は違うから!あーーーーーー!」
以降は作者が成人してから公開されるR18バージョンを見てください。
「こいつら魔力供給したんだ!」
「どれだけ過酷だったんでしょうかねぇ。」
「ええそれはもううまぴょいうまぴょいと。」




