表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/38

第016話〈傭兵組合〉

門をくぐり抜けた瞬間、柊の視界が一気に開ける。


「……ほう。」


思わず、小さな呟きが漏れた。


そこに広がっていたのは、柊の想像を超える規模の『要塞都市』だった。


地上部分は、直径数キロメートルに及ぶ巨大な防壁に囲まれており、武骨な軍用車両やライフルの銃架が並ぶミリタリー色の強い防衛拠点だ。


さらに、この都市の中に入ってから、何らかの影響で瘴気濃度が外の十分の一以下まで下がっている。


これのおかげで人々は発狂せずにすんでいるのだろう。


しかし、都市の中央に向かって進むにつれ、その本質が見えてくる。


中心部には、まるで地獄の口が開いているかのような、直径数百メートルに及ぶ巨大な縦穴が存在していた。


吸血鬼の五感と『種魔眼』を凝らし、その穴の底を覗き込む。


遥か地下深くへと続くその空間には、無数の人工的なネオンサインや建物の窓明かりが、まるで星空のように幾層にも重なって煌めいていた。


張り巡らされた鉄のレールを、無数のエレベーターや物資運搬用のゴンドラがせわしなく上下している。


地上は魔獣や過酷な環境に抗うための盾。


そしてこの巨大な奈落こそが、大量の人間が蠢くスタビリート基地の本体、『地下都市』だったのだ。


(これほどの規模の都市が、地下に……どうやって建てたんだ?)


衣服に擬態しているプルが、気配を殺しながらも、珍しい景色に興奮したのか微かにピクピクと震えるのが伝わってくる。


「さて……」


柊はまず情報を集めるべく、大穴の周囲に広がる雑多な地上のマーケットへと足を向けた。



「ふむ、自販機もあるのか。」


やはり文明は進んでいるようで、その自販機へスマホをかざせば決済が行えそうだ。


商品を見てみると水と茶のペットボトル、そしてコーラ、酒の缶だった。


近くにはタバコの自販機もある。


どうやら未成年が飲酒、喫煙をしてはいけないという法律はないようだ。


(不良にとっては天国だな。もっともこの世界の成人年齢が何歳なのかもわからないが……)


水のペットボトルを見ると、500mlで24₤₤(ダブリラ)だった。


目で見る限りは前世の500mlペットボトルと内容量に差はなく、値段は120円あたりが適切だろう。


となれば1₤₤で5円だろう。


(あのトカゲ肉マグロぐらいの価値あるじゃねぇか。希少食材だったのか……)


「にしても所持金は日本円換算で1000円か、持ってる物売れば多少は稼げるだろうが……」


ちょうど『喰Ⅰ』の副作用で腹が減ってきたが、収納空間にある食べ物はどれがこの世界において一般的なのかもわからないため、露店から適当に何かを買うことにした。


「へい兄ちゃん、肉串、どうだ?44₤₤(ダブリラ)だ。」


歩き回っていると、露店の店主から声をかけられる。


「それは何の肉ですか?」


「何の肉?ああ、バイオ栽培肉だ。」


店主はきょとんとしながら答える。


(しまった、こんなところで畜産できないのは明らかだっただろ!しかたない、ならば……)


「ああ、そうか。魔獣の肉では無いわけですか。」


「ハッハッハ!馬鹿言っちゃいけないよ兄ちゃん。魔獣肉なんて高級なものをこんな値段で売ったら食いっぱぐれちまう。」


冗談として受け取られたのか、店主は笑っている。


「まぁ買います。二本ください。」


「あいよ。」


スマホで決済を済ませ、肉串を受け取る。


人に見られないよう裏路地に入り、串の一本を服に擬態したプルへ差し出す。


「ますたぁくれるの?」


「ああ、喰ってみろ。」


プルは体の一部を元のスカイブルーの流体へ戻し、肉串を取り込み始める。


「ん、おいしい!」


柊も肉串を口へ運び、食す。


「牛肉に近いな。」


味はほぼ牛肉だが、肉の味は薄く、調味料の味が目立っている。


さらに脂質もあまり感じない。


(ここは崩壊を迎えた終末世界みたいだし、肉不足の可能性が高い。なら値段に見合ってるほうか。)


食事を追え、換金できる場所がないか探していると、傭兵組合と看板に書いてある建物を見つけた。


(たぶんこれが冒険者ギルドなんだろうな。ここでなら換金もできるだろう。)


柊は特徴的な赤い外套を脱ぎ、事前に素材を収納空間から出し、袋に詰めた。


(あまり多いと怪しまれるし、価値が高そうなものに絞って100kg以下のほうがいいな。外套も正気濃度が低いし脱いだほうがいいか。)


組合の金属の扉を押し開く。


内部は概ね予想通りで、中世の酒場のような荒々しさと、近未来のミリタリー基地が融合したような空間。


まだ夜のため人は少ないが、いかにもな荒くれ者たちが居座っており、銃器の分解メンテをする音と喧騒が聞こえ、オイルとタバコの臭いが漂ってくる。


中にはサイボーグや獣人がおり、受付も右腕を機械化した女だった。


吸血鬼だから差別されるようなことは無いだろうと思い、柊は内心ホッとする。


(まぁそれでも純人間やサイボーグが多いな。)


冒険者、おそらくこの世界では傭兵と呼ぶ者たちは特に柊に注目することはなく、数人が一瞬視線を向けてくるだけだった。


(テンプレートとは異なるが、こっちのほうが都合がいい(目立たない)。)


受付に行き、要件を伝える。


「魔物の素材の換金は可能ですか?」


受付の女は右腕の機械化以外にも、顔に傷があり、元は傭兵だったのだろう。


「ああ、可能だ。ドッグタグは持ってるか?」


「すみませんが持っていません。となると換金は不可能ですか?」


「あんた傭兵じゃないのか……まぁ別にできないわけじゃない。あればお得なだけだ。無いならそのまま素材を出してくれ。」


柊は言われた通りに素材が入った袋を渡す。


その袋の中を見た途端、受付の目の色が変わる。


「……おい。これ、流魔峡谷のトカゲだけじゃねぇな。こっちの黒い甲殻と毒袋……まさかあのサソリ10匹以上の群れに勝ったのか!?」


周囲で銃の手入れをしていた傭兵たちの耳もピクリと動く。


「ええ、まぁ。運がよかったんですよ。」


「そ、そうか……」


受付は素材を謎の機械に入れ、しばらくすると機会に金額が表示された。


「これなら合計で42077₤₤になる。未登録の放浪者にしては上出来すぎる稼ぎだな……どうだ、ついでに傭兵登録しないか?得られる額が1から2割増えるぜ。」


日本円換算で20万円以上、現代日本のサラリーマンの月収に匹敵する。


しばらくは金には困らないだろう。


(おっと、いよいよいつもの流れ(冒険者登録の類)だ。まぁ先人たちのように計測用機器は壊さ(無自覚俺TUEEEE)ないようにしたほうがいいだろうな。)


「よろしくお願いします。」


いつもの流れ(テンプレート)に少しわくわくしながら柊は答える。


「おーけー、ではこの用紙に記入してくれ。」


==============================

[名前]______________


[年齢]___歳 [性別]男・女・無


[宗教]Cthugha・Cthulhu・Hastur ・

  Tsathoggua・Kavo=Rwrex・その他


[魔力属性]__________属性


[得意レンジ]近距離・中距離・遠距離

==============================


ペンと用紙を受け取り、柊はそのとおりに書いていくが、宗教の欄で止まる。


(宗教はよくわからないが、多分無神論者は相当少ないだろうな。あの神はKAVOと名乗っていたし、これでいいのか?)


Kavo=Rwrexに〇をつける。


一応受けt家の表情をうかがうが、特に表情を変えていない。


(セーフのみたいだな。)


続いて魔力属性、ここは無属性が何なのかもわからないし、異質なものの可能性もあるので『土』とだけ記入する。


最後に得意レンジ、柊は一応銃撃を行えるが、それでも殴り合いのほうが火力が出る。


(近接かな。)


記入し終わった用紙を受付へ返す。


「はいはい、なるほどね。ではこちらに手を。」


いかにもいかにもな水晶をはめ込んだ装置(魔力量測定器)が机の上に出される。


魔力量の検査(いつもの流れ)か。あとは属性も可能かも知れないが。)


「魔力を流し込んでくれ。」


(まぁそうなるわな。)


柊は恐る恐る装置に手を載せ、魔力を流し込んでゆく。

傭兵になれば素材の換金で1割多く金をもらえるようになる。


つまり今回柊は一気に23万以上稼げている。


作者的に普通に羨ましすぎる。


こんな世界に転生するのはマジで御免だけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ