第012話〈魔弾:フルメタルツェルモ弾頭〉
谷を超えるため、そして、食料をさらに確保するため、柊とプルは進む。
谷底で朝日を避け、さらに数匹の大トカゲやら大ムカデを狩り、途中柊の活性化と白線触手の効果も確かめてみた。
結果、活性化により柊の身体能力は大きく上昇し、触手でトカゲを振り回して容易に撃破できた。
それ以外にも眷属となったプルはシステム通知音は聞こえないがシステムウィンドウを認識できるようだ。
やがて二人は向こう側までたどり着く。
「ここからは上り坂か……」
「ますたぁ、あそこ、キラキラのおいしいやつ!」
プルが岩壁の一部を指さす。
「あそこか?」
その方向を見れば、そこには金属光沢を帯びた濃い灰色の鉱石が見える。
他の場所でも金属類の鉱石は見えたが、それは一段と輝いていた。
「ふむ、鉄でも銅でもなさそうだな……ていうか美味しいって……」
ツルハシを収納空間から取り出し、慎重にその鉱石の周辺を崩しながら掘り出す。
「硬いな……」
掘り出したのち、試しにその鉱石を叩いてみたが、ツルハシのほうが弾かれ、鉱石の表面には傷一つつかない。
(システムに鑑定させるか?)
【鉱石の鑑定には1000ポイントが必要です。】
システムの鑑定において、その物品のランクが高ければ高いほど必要なポイントが高くなる。ただの石なら1、2ポイント程度、黒の森で狩った魔物の死骸ならば概ね80~90ポイントだった。
「1000ポイントなら結構良いほうだな。ランクも高そうだ。」
そこまで所持しているポイントが多いわけでもないので少し痛いが、使えるものかもしれないので柊は鑑定を選択する。
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【ツェルモ鋼(低純度)】
周辺の魔力を少しずつ吸収し、それに応じて硬度が増す鋼
純度が高ければ高いほど吸収速度は速まり、最高硬度も高い
魔力を貯めていない状態では柔らかく、非常に優れた延性、展性を持つ
純度が上がれば上がるほど最高硬度も上がる
-魔力を食らう黒き鋼、その礎-
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(これには相当魔力が溜まってるみたいだな、低純度なのにツルハシでは傷すらつかない。)
「ますたぁ、それ、たべたい!」
プルはツェルモ鋼をじっと見つめており、すぐにでも動こうとしている。
黒の森にいた転生者たちとは違い、システムの画面は見えていないようだ。
「本当に食べられるのか?」
プルはスキル『溶解補食Ⅱ』を持つため、ほとんど何でも食べられるだろうが、柊は一応聞いておいた。
「うん!」
柊はツェルモ鋼をプルへ差し出すと、プルはそれを体内に取り込んだ。
プルの半透明の体の中でツェルモ鋼は気泡を発している。
溶かされている様子はなく、質量も減っているようには見えない。
プルにとってはガムのようなものなのだろう。
「消化できてるのか?」
「ん、中の魔力を食べてる。金属のところは捨てるの!おいしいよ?」
「そ、そうか……」
数分後、プルは内包する魔力を全て吸い取られたツェルモ鋼を吐き出す。
さっきと比べて明らかに柔らかくなっており、簡単に加工できそうだ。
柊は地面に転がった、すっかり柔らかくなったツェルモ鋼を拾い上げる。
(魔力を吸い尽くされて脆くなったわけじゃない。説明通りなら、これがこの金属の本来の性質__優れた延性と展性ってわけか。)
手で力を込めてみると、まるで硬めの粘土か鉛の板のようにぐにゃりと形を変えた。
しかし、このまま放置すれば、周囲の瘴気や自然界の魔力を再び吸って元の超硬度に戻ってしまうのだろう。
わずかだが、柊の魔力も少しずつ吸収されている感覚がある。
「……使えるな。」
合理主義者としての思考が瞬時にこの特性の利用価値を導き出す。
柊は胡狼のシリンダーから弾丸を一つ抜き取り、弾頭を取り外す。
その弾頭へツェルモ鋼をうまいこと腕力でコーティングし、薬莢へ戻す。
「ますたぁ、それ何?」
「強化され、魔力を帯びた弾丸、魔弾ってところか?」
魔弾のプロトタイプへ魔力を流し込み、ツェルモ鋼を硬化させ、近くにあった岩へ打ち込む。
ツァパン!
魔弾は岩を貫き、岩の後ろにあった植物の葉に穴を開ける。
「貫通力が相当高い……!」
残りのツェルモ鋼を収納空間へしまい、プルに問う。
「この鉱物は他のところにもあるのか?お前の口ぶりから察するに前にも食べたことがあるんだろうが……」
「うん!深いところにもっといっぱいあるよ!」
「さらに深部か……今はまだ行かなくてもいいか。」
この谷のトカゲは結構厄介であり、深い場所であればあるほど強くなるうえ、群れで来れば活性化があるとはいえ死ぬ危険性すらある。
魔弾を数発、さらにツェルモ鋼の短刀を作った後、二人は引き続き谷底から地上へ向かって進み、やがて黒色っぽい岩にまみれたデコボコの岩場に出た。
地上まではまだ距離があり、今までは角度的に見えなかったが、相当の広さがある。
「この岩の色と模様……玄武岩か?」
四角のみのゲームで見たことがある気がする。
「ここに来たことないけど、嫌な予感がする……」
プルが周囲を不安そうに見渡す。
柊にもわずかに嫌な予感を感じていた。
二人が周囲を警戒していると、岩に擬態していたのだろう、岩で覆われた巨大なサソリのような生物が飛び出してくる。
サソリは鋏と尾を振り回し、柊とプルへ襲い掛かる。
「チッ!やっぱりこうなるか!」
柊は即座に胡狼と伸牙を抜き、プルは両手を硬質化させ、刃へ変化させる。
「ますたぁ!いっくよぉ!」
プルは両腕の刃でサソリに切りかかるが、表層の岩を多少削る程度であまり効果がない。
柊も弾丸を打ち込むが、こちらも弾かれる。
「プル、こいつの装甲を溶かせるか?」
「やってみる!」
プルはスライム形態に戻り、サソリの頭部に取りつく。
目に見える速度でサソリの装甲が溶かされていくが、溶かしきるにはもう少し時間がかかりそうである。
「よし、ではさっさと決着を付けさせてもらおうか!」
弾丸を魔弾へ切り替え、装甲が薄くなったサソリの頭部へ打ち込む。
ヒュバァン!
見事に装甲ごとサソリの頭部に穴をあける。
魔弾はプルも貫いたが、やはり液体の体にはなんの効果もなく、プルは何の問題もなく穴に沿ってサソリの内部へ入り込み、サソリの脳を溶かす。
サソリはしばらくのたうち回った後、やがて息絶えた。
「ますたぁ!やったよ!」
「ああ、よくやった、プル。」
しかし、勝利を祝う暇もなく、岩場全体が振動し始める。
「マジか!まさかここいら一体の岩が全部!」
視認できる限りで20匹近くの岩サソリ、あまりにも絶望的な状態である。
魔眼の精神攻撃を使おうにもこの数では魔力切れが先に来るだろう。
「おいおいおい、本当にまずいぜこりゃぁ……」




