第011話〈熔鉄を行う者/プルスライムⅡ〉
現状、炎以外で液体生命体へダメージを与えられていない。
スキル『活性化Ⅰ』を用いた身体能力強化も物理方面の強化しかできないのならば意味がない。
その炎も液体相手では分が悪い。
「ならば一か八か!魔力を含んだ攻撃をぶつければ!『岩石弾』!!」
物理攻撃が効かないと見た時点で柊は本能的に岩石弾による質量攻撃を選択肢から外していたが、魔力を含んだ攻撃ならばあるいはと判断し、実行する。
魔力によって作られた巨大な『岩石弾』を次々と生成し、液体生命体へと叩きつけた。
ドゴォン! ドガァン!ドギャン!
魔力を帯びた質量兵器は、人型への表面積が増えたことでもろくなった液体生命体の硬質化を砕き、物理攻撃を無効化するはずの液体の身体を強烈な衝撃波で吹き飛ばし、その形を大きく歪ませ散らばらせる。
しかし、やはり効果は無かった。
飛び散った青い液体は、磁石に引き寄せられるようにすぐさま一箇所へと集まり、再び歪な人形へと再構成されていく。
「いよいよまずいな……そろそろ日光も、システムの時間制限も来そうだ……」
液体の小人はたどたどしく、しかしどこか無邪気な声で呟いた。
「が……く、くう……もっと、くう……」
その瞬間、液体生命体の周囲から魔力が爆発的に膨れ上がる。
「まさか……人に近づいてるのか?!」
体色以外にもはや人との差はなくなり、少年の姿へと変わる。
それには柊の面影があり、柊自身にも『子供のころの自分と似ている』と感じさせた。
「こんな、こと……はじ、めて……」
それはしっかりと意味を持った言葉を発語する。
「おいおい、マジかよ……DNAの抽出をやったってのか!?」
柊がそれに驚いていると、
【スキル『眷属作成Ⅰ』を発動できます。対象『nameless』】
「え?マジか!まさかさっき血を吸われたからか!?」
眷属作成は自身の血を与えることで相手を自身の眷属とするスキル。
もし本当にこの液体生命体を眷属にできるのならば、生き延びることができるかもしれない。
(感覚によれば先ほどは体内の1/10ほどの血を吸われたように感じたが、もし今後もあの量が必要なら使用は控えよう。)
眷属化を選択し、反応を見る。
【対象『nameless』の眷属化プロセスを開始します――成否判定中……】
【警告:対象の個体値が非常に高いため、通常の眷属化に失敗する確率が96%です。急遽特殊眷属化へ自動移行します。】
「ッ……なんだと!?」
直後、柊の体内の残る魔力と血液が、目に見えないパイプで繋がれたかのように、少年の姿をした液体生命体へと一気に逆流し始めた。
「う、これは!」
柊に強烈な脱力感が押し寄せる。
「ガ、ぁ、あぁあッ!!」
液体生命体が頭を抱えて絶叫する。
その青い流体の身体の奥底で、柊の黎種の血が爆発的な反応を起こしていた。
柊の血に含まれる吸血鬼としての因子が、液体生命体の持つ「他者のDNAを混交・複製する性質」と結合し始め、暴走し始めたのだ。
周囲の瘴気、魔力が引きずり込まれるように渦を巻き、激しい風が谷底に吹き荒れる。 液体生命体の身体は、少年の形を保ったまま波打つ。
(クソッ……!魔力が吸われるだけじゃない、俺の魂そのものがヤスリで削り取られてるような感覚だ……!)
柊は膝をつきそうになるが、黒い森で鍛錬された精神力を振り絞ってどうにか踏みとどまる。
ここで自分が意識を失えば、眷属化の暴走に巻き込まれて自分ですら消滅すると本能が告げる。
柊は無理やり理性で死への恐怖を塗りつぶして脳を鋭敏に尖らせる。
「おい、化け物……! 俺の血を喰ったんだ。おとなしく俺の傘下に収まりやがれ!!」
柊の赤い魔眼が、これまでになく朱く、昏い光を放つ。
その絶対的な『王』としての片鱗に、液体生命体は激しく身震いした。
それにとって、目の前にいる柊は「初めて出会った、自分より強くて美味い存在」だ。
その血が馴染むにつれ、脳を焦がすような極上の快感がそれに満ちる。
「ま、す……た……、ます、たぁ、の、ち……しあわせ、な、あじ……」
液体生命体の身体から青いドロドロとした色調が抜け、まるで宝石のように透明度の高い、美しいスカイブルーの流体へと変化していく。
少年の姿をしていた輪郭が徐々に融解し、今度は柊の「美」や「理想」を無意識に反映するかのように、華奢で、どこか神秘的な少女の姿へと再構成されていった。
脳内に軽快なシステムの音が鳴り響く。
【眷属化、および特殊固有契約『血の盟約』が完了しました。】
【血の盟約の効果により、マスターの常識的記憶の一部を眷属へ付与します。】
【眷属の灵智が微弱なため、血の盟約の効果により、開灵を実行します。】
【対象に真名が与えられていません。マスターによる命名を行ってください。】
【特殊状況により、任務は無効化されました。】
制限時間残りわずかでの滑り込みだった。
柊が大きく息を吐き出し、それと同時に目の前の嵐が嘘のように収まり、周囲に静寂が戻る。
柊は緊張が解け、その場にへたり込んだ。
目の前にいたのは、身長140センチほどの、驚くほど華奢な少女。
衣服の代わりに自身の流体を白色に変え、ワンピースのように纏い、スカイブルーの髪を揺らしながら、不思議そうに自分の小さな両手を見つめている。
「……わたし、変わった。ますたぁの、なかみ、いっぱい……入ってる。」
(少し語弊がある気がするが……まあいいとしよう。)
少女はトコトコと無防備に歩み寄ると、柊の目の前でしゃがみ込み、じっと彼の顔を覗き込んできた。
その瞳は、深淵のような美しさの中に、善悪の区別など一切持ち合わせていない、純真無垢で危険な輝きを宿している。
柊は一瞬それに見とれた。
「名前、か……。お前の身体、まるでプルプルしたスライムそのものだな。」
柊は皮肉げに口元を歪め、思いついた名前を口にした。
「今日からお前の名前は……『プル』だ。」
安直かもしれないが、これ以上はむしろややこしくなるだろう。
「ぷる……プル! いいなまえ! プル、ますたぁのこと、だいすき!」
プルは嬉しそうに胸を張ると、そのまま柊の腕に抱きつくようにして、そのひんやりとした体で柊の胸へ飛び込む
「おい、張り付くな。」
「ここ、あったかい。あるじのにおい、する」
プルは無邪気な声でそう答える。
柊は呆れたように息をつきながらもシステムを開き、プルのステータスが見れないか確認する。
(あった。)
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【眷属ステータス】
名前:プル
年齢:1
種族:スライム/黎血の眷属
身体:137cm
体重:30kg
魔術属性:水属性 風属性 無属性
【基本能力】
体力:50/50
魔力:200/200
精神力:15/15
筋力:40
速度:60
防御力:10
【状態】
瘴気汚染度:78.4%→0.0% (眷属化時の肉体再構築により危険状態から離脱。)
好感度:50%(眷属初期値10%+血の盟約効果10%+刷り込み反応10%+柊の魔力への満足感10%+好奇心10%)
【スキル】
・液体身体Ⅴ
体が完璧な液体の性質を持ち、ほとんどの物理攻撃を無効化する。
・再生Ⅱ
魔力を消費することで再生速度が大幅に上昇。
・魔力探知Ⅲ
物体に含まれる魔力量や周辺の魔力濃度を認識できる。
・溶解補食Ⅱ
接触した物質を溶解させ、自身に取り込み、魔力を回復させる。
・記録解析Ⅱ
補食した相手の遺伝子と記憶、スキルを解析し、自身のものとする。
・性質再現Ⅱ
解析した遺伝情報からその性質を再現する。
・模倣Ⅱ
体を変化させ、様々な物の性質、色、感触を模倣する。
・硬質化Ⅳ
体表を黒く硬く変化させる。
面積が少なければ少ないほど硬くなる。
・水針Ⅲ
魔力を消費して水の針を飛ばす。
・水刃Ⅲ
魔力を消費して肉体を刃へ変化させる。
・吸水Ⅲ
水を吸収することで内部の魔力を取り込み、魔力を回復する。
・瘴気吸収Ⅱ
瘴気を取り込んで浄化し、2割を魔力に変換する。
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「まじかよ、ヤバいスキルがゴロゴロあるなぁ……」
プルは相変わらず腕の中で頭をこすりつけてきている。
柊は、プルのステータス画面をスクロールしながら冷徹な分析を走らせる。
(俺と同じで戦えば戦うお度強くなる……本当に凄まじいな。)
「任務は無効化されたが、ポイントとチケットの代わりに、とんでもない『リソース』が転がり込んできたな。」
ガチャを引けないのは惜しいが、この先の世界を生き抜くための手駒としては十分すぎる。
そして、様々な副次的要因によって好感度も高い。
「ますたぁ。」
プルは柊の顎を下から覗き込むようにして、無邪気に首を傾げる。
「プル、おなかすいた。あっちに、おいしいの、いっぱいある。マスター、いっしょに、いこ?」
プルが小さな指で指し示したのは、トカゲ魔獣が飛び出してきた水路の奥――
さらに瘴気が濃く、漆黒の植物が鬱蒼と群生する、谷底の完全なる未踏の領域だった。
「おいしいのか……お前が喰えば喰うほど、俺たちの戦力は底上げされるんだ。悪くない。」
柊はフッと笑みを浮かべ、腰のホルスターへ『胡狼』と『伸牙』をカチリと収めた。
魔力は底を突きかけており、魂を削られたような脱力感も残っている。しかし、ピンチの後に最強の盾であり矛となる眷属を得た高揚感が、彼の「鉄の心」をさらに鋭く研ぎ澄ましていた。
「行くぞ、プル。俺の足を引っ張るなよ。」
「うん! プル、マスターのために、ぜんぶ食べる!」
柊は聖骸布外套の裾を翻し、仲間に加わった少女とともにさらに湿気と瘴気が濃くなる谷底の深淵へと、足を踏み入れる。
紳士諸君、プルのバストを記載しておきます。
Aカップ
Bust:69.5cm Waist:53.2cm Hip:77.7cm
【お詫び】
作者のロリコンが爆発しました。
プルの身長削ります。




