5 | 地球 | ショロス | スザンヌ
パート I
私はキスで目を覚ました。
けれど、それはカレルのものではなかった。
私は微笑み、ミレナから受けたそのキスに応えた。
彼女のそばで眠るのは心地よかった。
ある意味で、どのセクヴェンスに抱かれて眠っていても、私はいつも彼女と眠っている。
たとえ彼女が何光年も離れていたとしても。
私たちはひとつだった。
感覚が別々の身体に宿っていたとしても。
彼女の身体、そのキス、その抱擁がこんなにも近くにあることで、すべてが違っていた。
そして、素晴らしかった。
ショロスはクセラントの中でも最大級の艦で、何千もの乗組員を抱えていた。
その艦が、五十六人ものセクヴェンスを乗せていることにとりわけ高揚していた。
私たちにとって、それは心地よい数だった。
多ければ多いほどよかった。
ミリアメデスの艦リルスもまたショロスの格納庫に収められており、擬装して姿を消すことができた。
私たちと共に来たミリアメデスはわずか十六人で、その中にはマレット、マハモン、ソッハがいた。
あの巨大な艦に乗るのは何年ぶりだっただろう。
艦橋へ向かう途中、セクヴェンス区画とそこへ向かう輸送区画を隔てる巨大な庭で私たちが迷ってしまったのは、ほとんど滑稽ですらあった。
ミレナはまだ笑っていた。
そんなとき、キル大佐が私たちを見つけ、抱擁で迎えてくれた。
クセラントにはその習慣はなかったが、もう私たちに慣れていた。
「地球には近づいている」
キルが告げた。
「だが、ユナイテッドがいる場所はまだ深い夜の中だ。惑星の極南に位置しているからな」
「かわいそうに」
ラナが言った。
「闇の中で生きることを強いられているなんて。あの洞窟をミリアデスみたいに快適にできないの?」
彼女が言っていたのは、何十億もの住民を抱える広大なミリアメデスの地下都市のことだった。
地球の状況が繊細であることは、私たちもわかっていた。
苦しんでいるのはユナイテッドだけではなかった。
ただ、彼らの場合、その運命は自ら選んだものではなかった。
私たちがアカデミアに彼らへの特別な配慮を求めたとき、望んでいたのは、彼らが人類に自然に溶け込み、新たな全体を形づくることだった。
だが、隔離されたことで、彼らは別の民になってしまった。
それは人類の歴史において、一度としてよい結末を迎えたことのない道だった。
「あの洞窟は、もっとずっと広くなければ無理ね」
ミレナが答えた。
「それに、私たちの技術をあそこに残すこともできないわ。キル、朝食に来る?」
パート II
クセラントは食事中に会話を楽しむのが好きだった。
私たちに似ているのは偶然ではない。
その話題が、意外にもユナイテッドではなく、カレルがクセラントの冬季競技会で長距離走に勝ったことだったのも面白かった。
「夏だったら、あなたに勝ち目はなかったわ」
キルがからかった。
「五十度の中じゃ、スタート前に死んでるよ」
カレルが答え、笑いを誘った。
地球の太陽がショロスの内部を照らした。
艦はその光を受けるように位置を変えた。
それは植物にとってありがたいエネルギーであり、私たちにとっては魅惑的な光景だった。
私たちは艦の講堂に集まった。
地球の映像を見つめたとき、胸が締めつけられた。
私たちに起源を与えた惑星を、私は初めて見ていた。
人間と接したことのない者たちにいつも気を配っているナターシャは、それに気づき、愛撫で私を慰めてくれた。
一方で、もっと大胆なサーシャは同じようにカレルを慰めていた。
私は、自分が口づけや愛情を受けるよりも、私の伴侶がそれを受けているのを見るほうが好きだった。
「あそこに私は生まれたの」
ビアンカが映像の一点を指して言った。
「大きな都市があった。ブエノスアイレス」
彼女の視線は一瞬、遠くへ漂った。
「地球は美しかった。今ではただの影よ」
私たちは本能的に手を取り、ひとつになった。
エドゥアルドは、クセラントとミリアメデスとのヴォルテックスを可能にするための適切な球体を手にしていた。
ひとつの心として結ばれながら、私たちは次の行動を描き、マハモンの記憶を通して人類の言語を学び直した。
時間はあった。
そして違いはあっても、私たちはみな深く《結びつき》を愛していた。
互いの記憶を追体験した。
既知宇宙において、すべては皆のものであり、何ひとつ隠されない。
私はキルの記憶を通り抜け、その民への愛情を示した。
結びつきは長く続き、私を高揚させ、落ち着かなくさせた。
誰かにキスしたくなった。
ちょうど隣にいたのはケインだった。
私は彼の手を取り、自分のほうへ引き寄せた。
メリッサとサーシャが少し離れたところで順番を待っているのに気づいたのは、そのあとだった。
けれど、その瞬間、彼女たちの伴侶は私のものだった。
パート III
屈辱の砦に夜明けが訪れていた。
その名は、意味を理解してからというもの、私に不快感を与えるようになっていた。
それでもなお、それは理解しがたいものに思えた。
動物でさえ、あんなふうには振る舞わない。
観測者たちが送ってきた映像で、皆が眠っているのが見えた。
ただ一人、イェヴァだけが起きていて、ノートに何かを書いていた。
観測者が近づき、画面には翻訳が映し出された。
それは、やるべきことの一覧だった。
やがて彼女は横になり、枕を強く抱きしめた。
彼女は孤独だった。
私たちにとって、孤独は死よりもつらい。
たとえ、それをいつも自覚できるとは限らなくても。
私たちが有り余るほど持っているものを持って、すぐにでもそこへ行きたいという衝動は、ほとんど耐えがたいものだった。
「忘れないで」
ミレナが自分を立て直し、声に出して繰り返した。
「人間の感情は私たちとは違うわ。直接目を見つめすぎないこと。無造作に触れないこと。瞳の輝きは抑えて」
「艦は降下準備が整った」
リルスの艦長モリスが告げた。
私の心臓は高鳴った。
不安を抑えようとしながら、私はカレルに抱きついた。
私たちの半数が、リルスで地上へ降りることになっていた。
私はその艦に初めて乗った。
外から見ると小さく見えたが、中に入ってみるとずっと広く、居心地がよくて、その驚きを隠すのは難しかった。
その艦は、技術的な意味だけでなく、人間の目にも見えなかった。
砦の近くの平原に着陸するまでには、ほんの数分しかかからなかった。
その景色は、アンテイアの凍った砂漠を思い出させた。
私たちは黙って歩いた。
冷たく激しい風そのものは苦ではなかったが、二人の人間が砦の門を修理しながら、それに耐えようと必死になっていた。
「服を調整して」
エドゥアルドが言った。
ミレナは、ひとつ異例の頼みをした。
私たちが互いから離れることだった。
愛は力だ。
けれど私たちは、脅威に見える必要があった。
本能を引き出したかった。
私の本能は抱きしめることだ。
愛情を与えること。
決して一人にならないこと。
だが、私たちは知りたかった。
純粋な民が追い詰められたとき、何が起こるのかを。
最初に響いたのは叫び声だった。
そのあとに慌ただしい動きが続いた。
イェヴァは、その目によってすぐに見分けがついた。
彼女は数秒、動かずに立ちつくし、顔を覆っていた布を外してからようやく反応した。
「ナツ、裏へ行って。箱で壁を作って。全部隠して。私のそばには、強い者だけ残して」
「君は?」
「時間を稼ぐわ」
「戻ってくる。君のそばにいる」
「だめ。たぶん、彼らは私で復讐を満たすでしょう。あなたは私の次に立てる人だから」
「今は勇気を見せる時じゃない、イェヴァ。私たちが君を守る」
「何で守るの?」
「裏切られたんだ……アカデミアはこの大陸は近づけないと言っていたのに」
「行って。私が私の民を守るわ」
「武器すら残してくれなかった……」
男は後ずさりながらつぶやいた。
言い争っても無駄だと分かっていた。
距離があり、風も吹いていたのに、私たちにはよく聞こえた。
同じように、イェヴァが死を予感しているのも伝わってきた。
彼女はよくなかった。
愛する者たちが壊されるのを見るくらいなら、自分がそこで倒れるほうを選ぶつもりでいた。
気づけば、涙が私の目からこぼれていた。
「止まって! これ以上近づいたら攻撃します!」
その脅しは弱々しく、子どもじみていた。
動物ひとつ脅せるものではなかった。
私たちは歩みを止めなかった。
イェヴァは絶望の中であたりを見回した。
震える手には重すぎる石を持ち上げた。
呼吸は乱れ、絶望が肌の上にまであふれていた。
「石を持って。戦って!」
従った者もいた。
皆が泣いていた。
暴力は彼らのものではなかった。
あと数メートルというところで、イェヴァは膝をついた。
「お願い……私たちを静かに生かして」
ビアンカもまた膝をついた。
そのあとすぐ、私たちセクヴェンスの女たちも、立ち続けることの耐えがたい努力に屈した。
男たちは私たちを支え、その身を貫く痛みを抑えようとしていた。
私は顔を上げた。
ミレナはエドゥアルドの肩に顔を埋めて泣いていた。
目の前では、ユナイテッドが呆然と見つめていた。
自分たちを殺しに来たのだと思っていた者たちが、今や雪の上にひざまずき、自分たちも知らなかった感情にとらえられていたのだ。
私たちが感じていたのは悲しみではなかった。
困惑だった。
イェヴァは制御できないほど震えていた。
顔から色が失われていった。
ミレナは駆け出したが、イェヴァはその前に倒れた。
顔が雪に沈み、次の瞬間には私たちの腕の中にいた。
残りの私たちも静かに近づいた。
私たちの微笑みはユナイテッドを硬直させた。
手袋があったおかげで、彼らは私たちを完全には感じられなかった。
それでも、いずれ理解するはずだった。
冷たさが私の身体に入り込んできた。
砦の中では、さらに怯えた人々が待っていた。
「誰にも危害は加えない。ベッドが必要よ」
サーシャが言った。
ナツがマットレスを引き寄せ、ミレナはその上にイェヴァを寝かせた。
すぐにエドゥアルドが再生器を彼女の唇に当てた。
それは本当の危険のときにだけ使う仕草だった。
すべてはあまりにも速く起こった。
私たちの心は同期し、私の個としての感覚は脇へ退いていた。
そして、それを取り戻したのは、ひとりの若い男が近づいてきたときだった。
「俺はグレイだ。君たちは誰だ? アカデミアの者か?」
「私はカレル。私たちは友達だ」
私の伴侶が答え、私を引き寄せた。
「アカデミアは、もう誰も来ないと言っていた」
「私たちはアカデミアではない。民を落ち着かせてくれ」
グレイはうなずいた。
沈黙はやがて、低いざわめきへと変わっていった。
パート IV
数秒後、イェヴァは目を覚まし、エドゥアルドが彼女を起こして座らせた。
「あなたたちは……誰?」
「私たちは友達よ。そして、あなたたちを愛している」
ミレナが言った。
「アカデミアの人?」
「違うわ」
「みんな、私たちを嫌っていると思ってた……」
「嫌う者もいる。愛する者もいるわ」
ミレナが彼女の顔に触れた。
イェヴァはくらりとし、ミレナにもたれかかった。
「変……でも、いい。変……」
「ごめんなさい。愛が多すぎると、それも重みになるの。横になって」
イェヴァは従ったが、目は大きく見開かれたままだった。
「あなたは私たちに感謝したかった」
ミレナは微笑みながら言った。
「そして助けを求めた」
「ミレナ……リーベ?」
イェヴァは信じられないというようにささやいた。
「あなたたちはもう一人じゃない」
彼女の心拍が速くなり、興奮で呼吸が浅くなっているのが分かって、私たちは思わずおかしくなった。
ささやき声で話していたのに、砦の中をざわめきが走るのが聞こえた。
「彼らはセクヴェンスなの?」
「それはあとで分かることだ」
グレイが言った。
「仕事に戻れ」
けれど、イェヴァは信じていた。
それは明らかだった。
恐怖は、混乱したような喜びに変わっていた。
ミレナは彼女のそばに座り、微笑みながら見つめた。
「もう一度あなたに触れるわ。呼吸して」
触れ方はゆっくりだった。
そして頬へのキス。
ミレナは抑えていたが、それでも少女のまぶたは重くなり、そのままマットレスへ崩れ落ちた。
「ごめんなさい」
ミレナはつぶやいた。
「キスせずにはいられなかったの」
「今までで……いちばんよかった……」
イェヴァはぼんやり笑った。
「全部、回ってる……」
彼女は抗えず、そのまま眠りに落ちた。
エドゥアルドはひとつの視線で周囲を安心させた。
ナツとグレイは互いを見た。
信じるということが、そこから始まっていた。
私たちは手を取り、目を閉じ、イェヴァが目覚めるのを待った。
自分たちが感じたものを受け止め、理解する必要があった。
イェヴァが目を開けると、私たちもまた目を開けた。
「どうして私たちが誰か分かったの?」
ミレナが尋ねた。
「信じたから。デルフィアントの記録で、医師があなたにもう少しでキスされそうになったって読んだの……それが大惨事になるところだったって」
「私たちはあなたのために来たのよ、私の天使」
「私のために?」
「あなたは柱なの。強い……でも、ひとり」
「外で死ぬかと思った……」
「死んでいたかもしれない」
エドゥアルドが認めた。
「私は何を抱えているの?」
「愛の欠乏よ」
ミレナはやさしく答えた。
「それはユナイテッドを死なせることもある」
イェヴァは赤くなり、その顔は明るくなったように見えた。
あちこちで控えめな笑いが起きた。
「私たちはあなたたちが成長するのを助けるわ」
ミレナは続けた。
「あなたたちはあまりにも長く影の中で生きてきた」
「ありがとう……地球は危険よ。気をつけて」
「私たちは守られているわ」
ミレナは答えた。
「たとえあの崖から飛び降りても、私は死なない」
若い娘は、疲れきったまま微笑んだ。
だが、それでもミレナを止めるには足りなかった。
彼女はもう一度、今度は唇にキスをした。
天国を見つけた者のような目で、イェヴァは微笑み、そのまま横へ倒れた。
「また眠るはずじゃなかったのにね、私の愛しい子。でも、愛情だって疲れるものよ」
ミレナが言った。
パート V
人形のようだった。
見つめているだけで痛みを覚えるほど、静かだった。
イェヴァのために部屋を整えているとき、グレイの目には涙が浮かんでいた。
エドゥアルドが彼女を運ぶと言ってくれた。
純粋な力においては、私たちのほうが勝っているからだ。
ナターシャと私はイェヴァのそばに残った。
そのあいだ、他の者たちはユナイテッドに会い、話しに行っていた。
少し離れたところから、ミレナがイェヴァは無事であること、私たちが助けるために来たこと、そして詳しい説明は彼女が回復してから自分の口で行うことを伝えているのが聞こえた。
部屋にはナターシャと私のほかに、ナツとその妻アナがいた。
ナツはイェヴァの安全を気にかけており、二人とも彼女を起こさないよう静かにしていた。
アナは彼女のためにスープを持ってきた。
その香りはあまりにもよくて……
「味見してもいい?」
「もちろん」
アナは小さな声で答えた。
「お皿を持ってくるわ」
私はスープを味わいながら、眠るイェヴァを見つめていた。
彼女の顔にはまだ思春期の名残があった。
ユナイテッドの身体的成熟がより遅いことの特徴だ。
肌は私たちに似ていたが、もう少しざらつきがあり、色も白かった。
気づけば私は、アナとナツがじっと見守る中で、彼女の指先にキスしていた。
「あなたたちは、とても愛情深いのね」
イェヴァの声に、私は驚いた。
目覚めていたのだ。
私はそのまま彼女の唇に軽くキスして返した。
彼女はまた目を閉じ、ふらついた。
私は謝らなかった。
そもそも、私たちは罪悪感というものを知らない。
ただ、必要だと思うときにその言葉を使うだけだ。
「起きなくちゃ」
彼女は不満そうに言った。
「大事なのは、私があなたにキスしたいってことよ」
彼女は眉をひそめた。
だが問い返す前に、ナターシャが現れた。
セクヴェンスの雌が持つ自然な緑の瞳をそのまま見せて。
イェヴァはその強い輝きを見つめた。
「私たちはこういうものなの。たくさん抱きしめて、たくさんキスする。あなたたちは最初は戸惑うでしょうけど、慣れて。もっと気持ちがほどけてきたら、この愛情はみんなに向けられるわ」
「それは困るかもしれない」
イェヴァはためらいながら言った。
「私たちの文化はかなり伝統的なの」
「私たちの文化は拒絶を知らないわ。あなたは指導者なんだから、うまくやるでしょう」
私は答えた。
「あなたたち、私より若く見える。それが混乱するの」
「私たちは老いないの。身体が若ければ、心も若く保たれる。あなたたちの時間にすれば何千年も生きているのよ」
「セクヴェンスは一緒にいるのが好きだって読んだわ。だから何千人も来たの?」
「違うわ。来たのは少ないほうよ。この旅に来たセクヴェンスの半分がここにいる。残りはミリアメデスと何千ものクセラント。ミレナのことになると、彼らは少し大げさなの」
イェヴァはためらい、それから尋ねた。
「あなたも、彼女と同じくらいの愛を伝えられるの?」
「できるわ」
私は答えた。
「でもミレナは、すべてのセクヴェンスの愛を集めているの。彼女にとって、それは努力ではないのよ」
「感じた」
ナツが低い声で言った。
「イェヴァを抱えて入ってきたとき、妙に落ち着く感じがあった。ほとんど動けなくなるほどだった」
そこへ影が差し、ミレナがやって来た。
彼女はベッドの脇にしゃがみこんだ。
「スザンヌの愛情は気に入っている?」
恥ずかしくなったイェヴァは起き上がろうとした。
私は彼女を押さえた。
「無理しないで」
ミレナは手を差し出した。
「今から触れるわ。もしめまいがしたら言って。あなたには導かなきゃいけない心がたくさんある。いつまでも眠ってはいられないわ」
「触れられるたびにこうなるのに……どうやって起きればいいの?」
「でも、もっと欲しいんでしょう?」
私は言った。
イェヴァはミレナの手を握った。
けれど力が抜け、すぐに放してしまい、呼吸を整えた。
ナツとアナが不安そうに見ていた。
その様子をミレナは見逃さなかった。
彼女は二人の顔に素早くキスをした。
ナツはベッドに手をつき、アナは座り込まなければならなかった。
「イェヴァのほうが強いわね」
私は面白がって言った。
「あなたたち二人は、そのうち気絶するわ」
二人を眠らせておいて、私たちは再びイェヴァに意識を向けた。
「彼らは普通の人間より、私たちのエネルギーへの耐性がある」
ケインが言った。
「こんなに少しの愛を与えるだけで、こんなに苦労するなんて思わなかったわ」
ミレナはこぼした。
「もし彼らが普通の人間だったら、イェヴァは死んでいたでしょう。私にはこれ以上愛を減らせない」
私は想像した。
彼女を抱えてリルスへ駆け込み、ショロスへ急ぎ、やっと再生カプセルに入れるまでの自分たちを。
そんな必死さが、少しだけ可笑しく思えた。
パート VI
その場所は明るく、私たちが想像していたよりも寒さがやわらいでいた。
私たちは厚い服を脱いだ。
驚いた視線を浴びながら。
私たちは寒さに適応していること、そして愛情表現を抑えるのが難しいことを説明した。
「ナツはどこ?」
イェヴァが尋ねた。
「みんなを集めたいの」
「私がキスしたの」
ミレナが答えた。
「気絶したわ」
笑いが響いた。
「やっぱり、私が大げさに騒いでるだけだって思ってたでしょう!」
イェヴァが冗談めかして言った。
「ナツ?」
私は呼んだ。
「みんなを集めて、ナツ。アナ、子どもたちがもう落ち着かなくなってるわ。お昼を用意して」
イェヴァが頼んだ。
二人はまだ少しぼんやりしていたが、それでも十分動けた。
私たちを前にして、大きな輪を作ることができた。
イェヴァはその中心に立った。
彼女は輝いていた。
「私たちは恵まれています。ここにいるのは、とても特別な人たちです。とても遠くから、私たちを助けるために来てくれました。この人たちがセクヴェンスです。私たちが子どもの頃に聞いた物語の。私もずっと、ただの伝説だと思っていました。でもブラウンさんは信じていた。彼らは私たちを見ていると言っていた……そして、私は信じた。助けを求めた。そうしたら、本当に来てくれたんです」
彼女はそのあと何を言えばいいのか分からないように、微笑んだ。
ユナイテッドは疑い深くなかった。
イェヴァが信じるなら、彼らも信じるのだ。
私はひとつ、確かめたいことを口にした。
「起こっていないことを話したりする?」
彼らには意味が分からなかった。
「私たちが嘘をつくかってこと?」
イェヴァが尋ねた。
「そうよ」
ミレナがうなずいた。
ひとりの少女が驚いたように答えた。
「どうして嘘なんてつくの?」
私たちが必要としていた答えだった。
ナターシャは彼女の唇にキスしようとしたが、思いとどまり、額に口づけた。
少女は大きく微笑みながら、ふらりと横へよろけた。
「私たちは嘘をつきません」
イェヴァが付け加えた。
「そのほうが生きるのはずっと簡単なんです」
「もっと早く、あなたたちに近づいているべきだった。あなたたちは、私たちが思っていた以上の存在よ」
ミレナが言った。
「ありがとう」
イェヴァは微笑んだ。
「私たちの文化について、あなたが説明してくれない?」
私は言った。
「さっき、ナターシャは本当に抑えていた。それには大きな努力が要るの。いつもこんなに集中できるとは限らないわ」
彼女は大きく息を吸った。
「セクヴェンスは……違います。たくさんキスをします。口にも。仲間同士でも、時には私たちにも。それは失礼ではありません。愛情なんです。この人たちは、愛はエネルギーだって教えてくれました。めまいがしたり、眠ってしまったりすることもある。……そうでしょう、ナツ?」
パート VII
私たちは皆、しばらく笑い、話し続けた。
残りの仲間たちも、手伝うために降りてきた。
その中にはメリッサもいた。
イェヴァが最も気をつけるべき相手だった。
「門を直したり、ほかの洞窟に照明を設置したりするための道具を持ってきたわ」
彼女は言った。
作業は驚くほど早く進み、日が暮れる前に門は修復された。
それを見てイェヴァは目に見えて嬉しそうだった。
彼らだけなら、何日もかかっていただろう。
暖房の周りには、話したり休んだりする小さな輪がいくつもできていた。
イェヴァと数人のユナイテッドと一緒に、私たちもそのうちのひとつに加わった。
私たちは自然に抱き合い、愛情を交わした。
その様子は好奇の視線を集めた。
特に女同士がキスしたり、愛情が固定の組み合わせに従わなかったりするときには。
イェヴァは、誰よりもよく見ていた。
痛々しいほどに恥ずかしがり屋だった。
おそらく、一度も伴侶を持ったことがないからだろう。
そんな彼女が、よくこれまで立っていられたものだと思うほどだった。
「イェヴァ、私たちは今夜ここに泊まるわ」
ミレナが言った。
「みんなのために部屋を用意できます」
「ひとつでいいの。風通しのいい部屋を。床にマットレスを敷きましょう。みんなで眠るわ」
ナツとグレイが、マットレスを取りに立ち上がった。
「イェヴァ、あなたも私たちと眠るのよ」
ミレナは続けた。
「いいですけど……特別な理由があるんですか?」
「あなたが一人で眠るなんて、私には想像できないの。あなたに、あまりにも長いあいだ欠けていた愛情だから」
「私たちはそれに慣れています」
イェヴァは気丈に答えようとした。
「一人で眠ったくらいで死にません」
「ええ、分かっているわ」
ミレナは微笑んだ。
「でも、私の心がそれを受け入れないの」
イェヴァは、もう抵抗しきれないというように、微笑み返した。
パート VIII
夜は石けんの匂いと静けさを運んできた。
眠る時間だと知らせるように。
イェヴァを怖がらせないために、ミレナは私たちに下着をつけるよう頼んだ。
「あなたたち……裸なの?」
イェヴァは部屋に入った瞬間、震えた。
「何も着ないで寝るほうが好きなの」
メリッサが言った。
「脱いでもいい?」
「だめ!」
イェヴァはすぐに答えた。
「そのままでいい」
彼女はいったん失礼すると言って部屋を出た。
外にはナツがいた。
二人は小声で話していたが、私たちには聞こえていた。
「みんな裸で……一緒に寝るのね」
イェヴァは困りきったように言った。
「それがどうしたんだ?」
「誰かの前で裸になったことなんて一度もないの。女の人の前ですら。男の人の裸の上半身だって見たことがない……」
「今朝は、俺たちのために死ぬ覚悟をしてただろう」
ナツが、やさしくもきっぱりと言った。
「生き延びるためだと思え」
私たちは小さく笑った。
会話は途切れた。
メリッサが扉を開けた。
「イェヴァ、寝においで」
彼女は頬を赤くしながら、私たちを見ようともせずに入ってきた。
「死ぬほうが楽かもしれない」
「聞こえてたの?」
「あなたの心臓、死ぬと思ったときより今のほうが速いわ」
メリッサが言った。
「死ぬ覚悟はしてきたけど……これは違うの」
「私たちの感覚はもっと鋭いの」
サーシャが説明した。
「私たちにとっては、あなたはここに来たときからもう裸だった。心臓の音も、呼吸も、感じていることも全部分かる。考えまでは読まないけど……あなたがあまりに委ねすぎたら別ね」
「もしあなたがセクヴェンスだったら、何もかも共有されていたわ」
ラナが付け加えた。
「服を脱ぐより、思考を共有するほうがまだ楽そう」
イェヴァはつぶやいた。
「分かってる」
メリッサがやさしく言った。
「あなたは深い孤独を抱えてる。だから今夜は私たちと眠るの」
「できるかどうか……分からない」
「イェヴァ、私たちと一緒に眠りましょう」
ミレナは、絶対的な優しさと逆らいがたい確かさを込めて言った。
「服を脱ぐのは、あなたのペースでいいわ」
ミレナがああ言うと、不思議と恐れすら後退していくようだった。
サーシャが近づき、イェヴァがうなずくのを待ってから、服を脱ぐのを手伝った。
カレルは彼女のうなじを揉んだ。
「ここをほぐすと落ち着くんだ」
彼が説明した。
「神経がたくさん集まっている。意識を保つようにして」
「ありがとう……」
彼女は下着だけの姿になり、少し落ち着いた。
私はその隙に、彼女の肌にジェルを塗った。
私たちのエネルギーの大半を遮るためだった。
服を一枚着ているのと同じような効果がある。
「あなた、とてもきれいよ」
カレルが言った。
「そんなに恥ずかしがるの、似合わない」
「文化の違いよ」
イェヴァは答えた。
「私たちは守られすぎてきたの」
大半はすでに抱き合ったまま横になっていた。
そんな中、メリッサが立ち上がり、下着を脱いだ。
「ごめんね、イェヴァ。これを着て寝るの嫌なの」
笑いが起きた。
イェヴァの心臓はまた速くなった。
ケインが下を脱ぐと、彼女は顔をそむけた。
サーシャが後ろからそっと彼女のブラを外したが、イェヴァは抵抗しなかった。
「あなたたち……」
ミレナがたしなめるように言った。
「彼女には難しいのよ」
「分かってる」
メリッサは少し柔らかく答えた。
「でももう、彼女は私たちを信じてる」
イェヴァは両手で顔を隠しながら、神経質に笑った。
皆が服を脱ぎ、いつものようにまた横になった。
「おいで、イェヴァ」
ミレナが呼んだ。
「私と一緒に横になって。エネルギーは抑えるから」
イェヴァはミレナの顔だけを見つめ、ほかを見ないようにしながら、彼女と向き合うように横になった。
メリッサが後ろから抱きしめた。
「おやすみ、私の天使。触れているだけで、きっと楽になる。メリッサが余ったエネルギーを吸ってくれるわ」
「また……くらくらしてきた……」
ミレナは今度は少し強めに、イェヴァの唇にキスをした。
彼女には反応する暇もなかった。
心拍は落ち着き、身体は力を失った。
彼女はミレナの肩に頭を預け、そのまま眠りに落ちた。




