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2|地球|アカデミア|アダール

第一部


何千年もの苦しみと、何十億もの死でさえ、人類には足りなかった。


いまだに三つの戦争が続き、さらに何百もの紛争が世界中に散らばっているという現実を、私はなかなか受け入れられなかった。


二千年近く続いた気候の混乱がようやく落ち着いた途端、人々は再び、他者より優れたい、他者より大きな存在でありたいと望むようになった。


私はいつも、何かもっと大きなものを信じたいと思ってきた。


もしかすると、異星人の存在さえ。


だが、それで何かが変わるわけではない。


ブラウンの言った通りだ。あれほど視野の狭い民と、彼らが友になれるはずがなかった。


私はイェヴァとの会談を終えて、怒りに満ちたまま部屋を出た。


ユナイテッドは、多くの面で、ひとりでは生きていけない子どもたちの集まりのようなものだった。


それでも、あれほど率直で、明るく、愛情深い人々を嫌うことなどできなかった。


彼らを遠くへ送るのは苦しかった。だが、彼らが死んでいくのを見ることは、アカデミアの心臓に最後の刃を突き立てるようなものだった。


イェヴァはとても美しい若い娘だった。だが、本当に恐ろしいのは、彼女が持っている知性のほうだった。


問いを先回りし、たったひとつの視線だけで答えてしまうその力に、私たちはしばしば言葉を失った。


それでも、誰もが魅了されたのは彼女の笑顔だった。


彼女が微笑むのを見るときだけ、私は本当にセクヴェンスの存在を信じられる気がした。


デルフィアント号の乗組員たちの記録には、セクヴェンスの笑顔について熱に浮かされたように綴られた箇所がいくつもあった。


中には、セクヴェンスに笑顔で頼まれたなら命さえ差し出す、と書いた者までいた。


イェヴァは、そこまでではなかった。


それでも、もう彼女の笑顔を見ることはないのだと思うと、胸が痛んだ。


第二部


「お呼びでしょうか、アダール様?」


「クレリック、ユナイテッドを屈辱の砦へ送る。

あそこは堅固な施設だ。極限の気候にも耐えられるよう設計されていて、何千人も収容できる洞窟もある。

必要になりそうなものはすべて用意しろ。全部だ。

少なくとも一年分の物資を確保したい。その後の補給は、そのとき考える。

十日以内に、彼らをここから出したい」


「承知しました」


「いっそ船が海に落ちてくれたほうがましだ」


私は聞かれるつもりもなく、そうつぶやいた。


「何ですって? 船を落とせと?」


「まさか。疲れているだけだ。

ただ、そちらのほうがまだましな終わり方かもしれないと思っただけだ。

もし我々が失敗したら……もしアカデミアが崩壊したら……彼らはゆっくりと、苦しみながら死んでいく。

誰も助けない」


「ユナイテッドは賢い人々です」


クレリックは答えた。


「きっと繁栄すると、私は信じています」


考えすぎているのは私だけなのかもしれなかった。


それでも、彼の言うことには一理あった。


ユナイテッドには、たとえ少人数でも世界を支配し得るだけの素質があった。


だが、それを成し遂げるには、ときに残酷でなければならない。


戦わなければならない。


それは、彼らが信じるすべてに反していた。


それでも、命が脅かされれば、何かが変わるかもしれない。


私は心のどこかで、彼らがこの社会を打ち負かす姿を見たいとさえ思っていた。


「資材、道具、薬を用意しろ。研究用の図書、発電機もだ……それから金やロドックスのような高価な品も送れ」


「ロドックスを?」


彼は驚いたように聞き返した。


「力場を作る必要が出るかもしれん。

村へ行き、イェヴァと会って、あらゆる可能性を探れ。彼女はそういうことに非常に優れている。

それと忘れるな。場所は絶対機密だ」


第三部


私は椅子に腰を下ろし、自分の執務室を見回した。


そこは、私が育った家よりずっと広かった。


私の子ども時代は楽なものではなかった。


ほとんど毎年のように嵐が作物をなぎ倒し、何度もアカデミアに救われた。アカデミアは、食料を管理し、世界中に分配していた。


誰もが誰かに依存していた。


そして、誰もが平等だった。


私はアカデミアが象徴するすべてを愛するようになった。


宇宙へ打ち上げられる船も、皿の上の食事も。


だからこそ、私は議長の座に就くまで休まなかった。


受け取ったものを返したかったのだ。


だが今、世界の処刑人という役割が私の上にのしかかっていた。


誰だって、自分にとっていちばん大切なものを失うことは受け入れられない。


私は憎まれるだろう。断罪されるだろう。


それでも、その衝撃が、新たな結束を強いるほど大きなものであることを願うしかなかった。


だが今回は、世界はアカデミアを憎しみの目で見ることになる。


そして破壊しようとするだろう。


だからこそ、ユナイテッドを安全に隠しておくことが不可欠だった。


私は何度か深呼吸をし、自分の右腕であるナツを呼んだ。


「もう、自分が何をするかわかっているんだろうな、アダール?」


私は黙っていた。


彼は続けた。


「あなたが命令を出せば、老化抑制剤の工場はすべて破壊されます」


「命令は出す。

ユナイテッドが目的地に到着したら、そこにいる人間を退避させて、工場をすべて破壊しろ。

何も残すな。塵だけにしろ」


「承知しました」


ナツは慌ただしく出て行った。


任務を果たすまで、残された時間はわずかしかなかった。


第四部


アカデミアは、老化抑制剤の知識と生産を独占していた。


それは全住民に配給されるもので、その化合物は寿命を三倍に延ばし、ほとんどの病気に対する免疫を与えていた。


それを奪うというのは、父親が子どもの手から菓子をもぎ取るようなものだった。


最初に来るのは衝撃だ。


そのあとに怒りが来る。


ユナイテッドが凍える大陸で孤立して生きる一方で、アカデミアの者たちは複合施設や船に閉じこもることになる。


私たちには武器があった。だが使うつもりはなかった。


食料も、長年持ちこたえられる支援体制もあった。


この惑星の空輸はすべて停止される。


人類は再び苦しむことになる。


そうすれば、自分たちが持っていたものの価値を学ぶかもしれない――それが唯一の望みだった。


私は声明文を用意した。


なぜこんな行動を取るのか、その理由を説明し、戦争をやめるよう求め、すべての人間に再びひとつになるよう訴える。


そのときになって初めて、私たちは対話を再開する。


だが必要なら、自衛する。


「パパ! 荷物も全部持ってきたよ!」


私は末娘のルーシーを抱きしめた。


三人の娘たちは、自分たちがもうこの複合施設を出られないことを知っていた。宇宙へ向かうか、別のアカデミア施設へ移るとき以外は。


妻のミラジェーンが、次女のジュビアと手をつないで近づいてきた。


私は二人を抱きしめた。あのぬくもりが必要だった。


長女のエルザは、ひどく打ちのめされていた。


「どうしてユナイテッドを私たちと一緒にいさせてくれないの?

私の親友を遠くへ送ってしまうのよ!」


彼女の顔に浮かんだ失望が、私を打ち砕いた。


私は膝をつき、涙がこぼれ落ちるのを感じた。


「ごめん……ごめんなさい……」


エルザも膝をつき、泣きながら私を抱きしめた。


「許してくれ、娘よ。

もし戦争になれば、ユナイテッドは到底耐えられないような残虐なものを目にすることになる」


私は彼女とともに立ち上がり、受付にいる人々を見た。


悲しげな顔。静かな涙。


私は無理に笑顔を作った。


「イェヴァがユナイテッドの指導者になった」


「もう話せなくなるの?」


エルザは尋ねた。


「どんな通信でも、彼らの居場所を暴く危険がある」


「お別れだけでもできる? 私、イェヴァのことが大好きなの」


私は許可した。


二人は同い年で、同じ月に生まれていた。


私はいつも、娘たちがユナイテッドの中で育つことを許してきた。


あれほど素晴らしい人々はいなかった。


私は部屋まで這うように戻り、ミラジェーンに世話をされながら、疲れ果てて眠りに落ちた。


第五部


エルザがやって来て、私は目を覚ました。


限られた部屋数の中で暮らすことに慣れるのは、私には簡単だった。私はそういう環境で育ったからだ。


だが娘たちは、もっと苦しむだろう。


「パパ……あんな状況なのに、イェヴァは笑っていたの。

私が慰めようとしたのに、逆に慰められた」


「イェヴァは天使だ」


「セクヴェンスの世界って、きっと素晴らしいのね……イェヴァみたいな人たちでいっぱいなんだわ」


「セクヴェンス?」


「最近、彼らのことを読んでるの」


「どうやら、みんな急に彼らのことを読み始めたようだな」


「何かにすがらないと、やっていけないもの」


「ブラウンに頼んで、記録を全部公開してもらおう。

お前、セクヴェンスが人間だったって知っていたか?」


「えっ!?」


その顔がおかしくて、私は笑ってしまった。


私は彼女にブラウンを探してくるよう頼んだ。


彼女はすぐに走って行った。


その夜、食堂にはタブレットを手にしていない者が一人もいなかった。


誰もが、何かもっと良いものを信じたかったのだ。


エルザは記録をイェヴァに送った。


友人のことが心配だったのだ。


デルフィアント号の乗組員に起きたことが本当に現実だったのか、それとも集団ヒステリーにすぎなかったのか、私たちはついに知ることはなかった。


おそらく、彼らと共に過ごした者たちのほうが信じやすかったのだろう。


時間はすべてを消していく。


感情も、記憶も、真実さえも歪めてしまう。


もしセクヴェンスの物語にあるように、記憶を分かち合うことができたなら、時間に負けることもなかっただろう。


時間は、人類にとって残酷な捕食者だ。


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