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ブラック副業、第二皇子隠れ補佐  作者: summer_afternoon
すべては銀のために

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20/61

アヘン精製所を探せ

 兵士に扮した第二皇子が、シェシェを抱き上げる。


「どーしてシェシェが? なんか、大きくなってる?」

「くーんくーんくーん」


 シェシェは第二皇子にぶんぶん尻尾を振りまくる。千切れそう。


「荷物に紛れていたようです。途中の検問所で、十王府へ送って欲しいと頼んだのですが」


 と私は説明した。それよりさ、どーしてここにいるわけ。そっちこそ説明してよ。


(ルイ)様、お疲れ様。留守にすまない。宿の者が案内してくれたんだ」


 朱氏(しゅし)様は、少しもすまなさそうじゃない。


「宿帳には偽名を使いましたが」

「妙に綺麗な男と言ったら、通じた。親切に部屋の中で待たせてくれたよ」


 朱氏様、ここは乙女の部屋です! 鍵が掛けてあったはずなのに。都のスーパー宦官って噂聞いてるから、宿の主人はなんでも言うこと聞いちゃったんだね。


 第二皇子はシェシェと遊び始める。一方、朱氏様は、真剣にアヘンタバコについて考えていた。


「ここの検査はザルだ。どう考えても、検査できる100倍の貿易量がある」

「100倍? そんなにですか?」

「明日から5日間、港の検閲現場を見学する予定だ。今のままじゃ、とてもアヘンタバコを防げないな」


 5日間も朱氏様が張り付く。うっわー。みんな嫌がるだろうなぁ。賄賂(わいろ)渡せないし、もらえないし。=検査をごまかせない。きっちり隅々まで改めていたら、仕事進まないよね。溜まっちゃうよね。気の毒。


「最終日までに1つはアヘンタバコを見つけて、殿下の功績にしたい。というわけで、瑞様、頼んだよ」


 むちゃブリ。


 ところで。


「船からアヘンタバコは見つからないと思います」


 船の積荷を運ぶ男達から聞いたことを伝えた。生アヘンとタバコの葉は別々に来て、央の国でアヘンタバコが作られることを。第1工程で生アヘンを精製してアヘン膏を作り、第2工程でアヘン膏とタバコの葉をブレンドすることもプラス。


「それは困った。せっかく来たのに積荷の検査で摘発できない。見せしめもできない」


 見せしめ。怖っ。


「もう、ここへは5日前にアヘンタバコ禁止の話が届いてます。商人達は売り(さば)いた後だろうと、積荷を運ぶ男達が話していました」

「5日も前に?!」

「はい。独自の情報網を持っているそうです」

「普通に伝達するなら2ヶ月はかかるだろうと踏んでいたが。そうか。」


 朱氏様は黙り込む。

 かつて密輸の本拠地だった三日月港は、朝廷が取り締まりきれずに公認したような因縁の場所。大きな押さえつけることすらできなかったのに、それに積まれてる小さな生アヘンだけを排除するなんて、無理ゲー。


 と、突然、シェシェと寝っ転がって遊んでいた第二皇子が顔を上げた。


「じゃさ、アヘンを加工してるところがあるってこと?」

「殿下、素晴らしい着眼点です。第1工程のアヘンの精製所を取り締まればいいのですね」

「「……」」


 いえいえ、そんなこと言ってませんでしたよ。朱氏様は、強引に第二皇子の手柄を企てる。


「この近くに加工している場所があるでしょう。彼らは、都の人間がアヘンタバコの工程を知らないと分かっています。急いで精製しているはずです。摘発するなら、油断している今です」


 どーして朱氏様って、こんなに無謀なことに意気込めるんだろ。三日月港周辺っていったって、どこでやってるか分かんないよ。広いもん。引き連れてきた兵士に探させるとしても100人で見つけられるかどうか。そんなことをしたら、兵士達の本来の目的である第二皇子の護衛&貿易の視察が手薄になってしまう。半分諦めている私と、シェシェと遊んでる第二皇子。


「ときに第二皇子。ご健康ですか?」


 突然、朱氏様が尋ねる。うん。どう見ても、健康そのものだと思うよ。転げ回ってるし。


「私は何をすればいいでしょうか」


 私は朱氏様に質問した。


「瑞様は、軍の人達に見つかることのないように潜伏を。追って知らせる」

「はい。分かりました」


 やったー。しばらく仕事なし。



 翌日、見晴らしのいい高台から眺めた。今日もたくさんの船が浮かんでいる。沖には異国のガレオン船。その傍に、央の国の帆船もある。動く気配はない。たぶん、停泊している。異国の船は分かる。入港拒否られてるから。央の船で港に入ってくる船と沖に停泊してる船があるのはなぜ?


 またまた、積荷を運ぶ男達がいたから聞いてみた。


「でかいから」

「港が狭い?」

「ちゃうちゃう。外国と行き来してる船はでかくて、船底が深くて入ってこれねーんだわ」

「そーなんですか」

「満潮のときはギリOKでも、干潮になったらOUTとかさ」


 知らんかった。


「だから。ほら、あの周りにある小さい船が運んでんだわ」

「あの台みたいな船、面白い。初めて見た」

(はしけ)?」

「兄さん、都って言ってたよな? 都って海ないのか?」

「ないっす」

「艀は便利だぜ。商人らの家の中へ直行できる」

「あの辺、水路いっぱいあるだろ?」

「はい」


 眼下には小さな水路が入り組み、きらきらと陽光を反射している。それらは港から直接繋がっているものもあれば、港に流れ込んでいる大きな河に繋がっているものもあり、迷路状態。水路沿いには家々がある。さすが元密輸拠点。カオス。


 湾の東には大海。広すぎる湾の南側、大きな河の河口付近に正規の港が位置する。積荷のチェックは、港に入るよりもずっと手前である湾の入り口付近で行う。船が姿を現すと、役人達が小船でチェックに行き、OKだったら湾内へ進ませて港の沖に停泊させる。このとき役人は、税やらなんやらを銀で徴収していく。


 でっかい船にアリみたいに小さな船や艀が群がって、せっせと荷物を積み下ろしている。その荷物が三日月港の中に入ってくる。三日月港には正規の桟橋が7つあり、そこで積荷の上げ下ろしをすることになっているし、一応、役人が見張ってはいるけれど……。


 湾の中をきっちり区切るなどできない。港には小さな水路が何本も繋がって、正規の桟橋に寄らずに水路に消える船があれば、湾に流れ込んでる河へも消える船もある。反対に、どこからか現れた荷物を積んだ船が正規の桟橋に寄らずに港から出ていく。あらら。無法地帯。


 第二皇子が検査を見学してるのは、役人がチェックした結果や徴収した銀を持ってくる建物の中。これもう、実質ノーチェックだよ。


「あの水路がさ、商人の家の地下に繋がってんだわ」

「なんか、かっこいい」

「外から見ただけじゃ、生活用水の出入り口みたいでさ、でもちげーの。そっから艀が入れる」

「そーそー。普段は床板で隠してあるんだぜ」


 おおーっと。隠してるってことは、密輸なんだろーね。


「銀とか重いだろ? だからクレーンまであって引き上げるんだ」

「相当儲けてますね」


 銀の箱をクレーンで引っ張り上げるなんて。$_$


 シェシェとの散歩は楽しい。けれど、短時間で終了させた。人目に触れないようにってことよりも、シェシェの体調が優先。わんこは暑いのが苦手だもんね。ここは、都よりもずっと南で蒸し暑い。できるだけ涼しい場所で静かに過ごそう。幸い、部屋には涼しい海風が入ってくる。


 ◇


 部屋でシェシェとだら〜っと寝ていたら、朱氏様と官僚の服を着た見知らぬおじ様が来た。突然すぎ。私、ヨダレの痕があったかも。


医師(くすし)(ワン)です。アヘンについて説明に参りました」


 官僚の服を着たおじ様は、医師だった。まだ頭が起きてないんだけど。私、説明聞く必要あるっけ。そして、はっとする。私、おりこーさんになりたいんだった。浩宇が喋ってることをするする理解できるくらいに。


「お願いします」


 びしっと姿勢を正す。と、朱氏様が「その前に」と業務計画を述べる。


「瑞様には、アヘンの精製を行っている場所を探して欲しい。王先生によれば、かなり独特な(にお)いがするとのこと。瑞様と王先生が見つけた場所へ、偶然を装って第二皇子が踏み込んで摘発するという算段だ」


 まさかの1番ムリゲーなとこ回ってきたじゃん。


「分かりました。ですが、お願いがあります。シェシェは夏の暑さが苦手です。連れて歩くことが難しいのです。どうか、私が留守の間、シェシェを誰かに預かってもらってください。申し訳ありません」


 朱氏様は承諾してくれた。私はてっきり、宿の従業員にチップをはずんで預けるって思った。そしたら。


「殿下も喜ばれることだろう。検査の見学をする側にサークルを用意させよう」

「十王府にいるシェシェがここにいるのは変です」

「瑞様、十王府の中は一般人にとって禁断の場所。シェシェを知る者はいない。なんなら、この港で拾ったことにすればいい」


 なんて強引な。その後、朱氏様の小さな声が聞こえてしまった。


「でつよね、シェシェ」


 ん? 聞かなかったことにしよ。


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