↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生対策本部転生撲滅推進課〜悪魔な上司の意外な素顔〜  作者: 樹弦


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

360/363

少女リツ&少年ベルの場合

 翌日ジーンと六季は少し早くに登校した。朝早くにそれぞれのクラスが葉光祭で何を担当するかを決めることになっていたからだった。必然的にリツとベルフェゴール大佐も早起きして同じ時間に家を出ることになる。


「カイム…眠いよ…」


 大佐は大きなあくびをした。もう学校は間近だ。


「大佐がムツキにいたずらし過ぎるからですよ。まったく…キスを解禁にした途端に調子に乗るんですから…」


 ステアリングを握るカイムが呆れたように言った。ムツキの耳が赤くなったのにリツは気付く。ジーンはどこか名残惜しそうにリツの首筋に唇を這わせていたが、小さく笑った。


「まぁ、多少は寝不足かもしれないが、魔力は足りているだろう。いっそのこと魔力不足を装えば、芦沢の本性が見れるかもしれないな…大佐…」


「は?俺に芦沢を釣れと仰るんですか?」


「…だったら逆に聞くが…大佐はムツキが芦沢に手を出されてもいいのか?」


「うっ…嫌に決まってますよ。あぁ…分かりましたよ。うまくいくかは分かりませんけどね」


 ジーンは透明なシールが何枚かついたシートを手渡した。大佐はピクリと眉を上げた。


「ターゲットが近くにいるときに、このシールを身体に貼り付けてシールに魔力を吸収させろ。それで相手がどう反応するか調べる…」


「なるほど。強制的に魔力不足の状態を作り出せる訳だ。これがあれば早退し放題だな!」


「……そんなことで、いちいち迎えには来ませんからね!」


 カイムが冷たく言い放つ。大佐がため息をついたところで駐車場に入った。顔見知りの警備員に車から降りたカイムは爽やかな笑みを向ける。


「おはようございます。子どもたちをよろしくお願いします」


 三人は車から降りると元気に登校していった。



***



 校舎に入ると委員会の代表メンバーは小会議室に集まったが、さすがにまだ教室に向かうには早い時間帯だったので、大佐とリツは早朝から開放されている談話室へと向かった。中に入ろうとした大佐は立ち止まると人差し指を口の前に当てて、足音を立てずにもと来た廊下を少し戻った。


(どうしたの?)


 リツが心の中で尋ねると、大佐はニヤッと笑った。


(んーちょっとタイキとヒトミがいい感じだから、今は入らないでおきましょうか)


(そうなの!?)


(手繋いでました。タイキのやつ、めちゃくちゃ緊張してるみたいだったけど……いいなー初々しくて)


(大佐の初恋は?)


(えー?秘密ですよ。リツさんこそどうなんですか?)


(え…私?恋なんかする余裕なかった…生活が苦しくて…そしたらジーンが会社に来たときに…倒れちゃって…目覚めたら…キスされた…最初は冷たい感じで…ちっとも親切だとは思わなかったんだけど…)


(…それが初恋ですか?)


(初キスを奪われた思い出?何だろうな…でもフィランジェルの初恋はアルシエルだから、間違いではないのかも…)


(朝からのろけますねぇ)


(だって…そっちが聞いてきたんじゃない!)


 突然リツの脳裏に談話室の隅の少し観葉植物で廊下からは見えにくい席に座る太輝とヒトミの姿が見えた。二人は手を繋いでいて、太輝が小声でヒトミに話しかけていた。


(僕を目覚めさせてくれたのはヒトミだよね…僕…覚えてるよ…夢かと思ってたけど…)


 そこで太輝は顔を近づけるとそっとヒトミの唇にキスをした。ヒトミは目を閉じるのも忘れて真っ赤になっていた。そこで唐突に脳内に流れた情報は見えなくなった。


(今のは!?)


 リツが大佐の顔を見上げると、大佐はニヤッと笑った。


(三回目のキスの覗き見ですよ)


(え?三回!?)


(一回目は幼稚園のとき…二回目は目が覚める前…で、三回目…あームツキと何回キスしたかなんて数えてないなぁ…)


 大佐がぼやいたのでリツは頷いた。


(初めては覚えていても…律儀に回数を数えてるのは社長…ルシフェルくらいだと思う…)


(は?あいつ、リリスとのキスの回数数えてんの!?)


 驚きのあまりため口になった大佐に向かってリツが頷くと大佐はげっそりとした表情を浮かべた。


(あいつのそういうとこ…ちょっと病的だなと思っちまうんですよ…好きな相手に対する思い入れが半端ない…重たいんですよね…ルシフェルの愛情は。そういう点を含めても。そろそろ…談話室に入っとかないと、他のやつらが来ますね…)


 大佐はそう心の中で言って談話室のドアを開けた。リツも後から続く。リツは談話室の時計を見てふと気付いた。


「おはよう!タイキ、あと二分で葉光祭のジャンケン始まるんじゃない?」


 太輝は慌てて立ち上がる。


「わぁ!ホントだ!!じゃ、また後で!!」


 大慌てで太輝は談話室を飛び出して行った。ヒトミは慌てっぷりに少し笑ってから照れたようにはにかんだ。リツは肘でツンとヒトミをつついた。


「なっなに?」


「朝からデート?」


「…う…うん」


 ヒトミは小さく頷いた。ヒトミは時計を見て水筒を取り出すと、セラヴィで処方された魔力回復薬を飲んだ。これを飲み始めてからヒトミは頭痛がしなくなったと言っていた。


「あーベル!おはよー」


 双子の少女が手を振る。


「おはよ」


「右左どっち!?」


「しつこいなぁ。だから右がユズキで左がミズキだろ?」


「あーまた正解!!私たちが入れ替わってても誰も当てられないのに!どうして!?」


「勘だよ勘!」


 大佐はしれっとそう言ったが、リツにも違いは分かった。見た目はそっくりだ。けれども魔力の気配が微妙に違う。それにこの二人の父親は、芦沢と在学した期間は被ってはいないが、父親がOBでPTA会長も務めていた。少し前に会長だった男性が警察沙汰を起こし、副会長だった双子の父親が繰り上げになったことを大佐は知っていた。警察沙汰とはもちろん二階堂へのストーカー行為だ。子どもの方は大佐のクラスにまだいるが、それ以来表立っていじめられてはいないものの、無視されていることに大佐は気付いていた。


「ねぇベル、なんで、あいつに話しかけるの?止めときなよ、なつかれるよ?」


 柚月が言う。瑞月も頷いた。


「あいつ?」


「分かってるでしょ?カナデだよ。父親と同じでストーカー体質受け継いでんの。あんまり構うと勘違いされるよ?」


「はぁ?まさか…」


「とりあえず…気を付けた方がいいから」


 瑞月が言う。


「あのさ、ベルは顔が広いみたいだし、この子たちに何かされても嫌でしょ?」


 瑞月は言いながらリツの顔をしげしげと見つめた。


「ねーいつも一緒のイケメン彼氏は?」


「え?」


「実行委員会に行ってるんだよ。だからその間に変なのが寄ってこないように見張ってんの」


 大佐はニヤッと笑った。


「はぁ?嘘でしょ?」


「嘘じゃないよ。フォスターさんは俺の父親の上司だから、ちゃんと見ておかないとさ」


「なにそれ。マジで?意外!そんなのちゃんと守んなさそうなのに!私見たよ?旧校舎裏で…」


「しーっ!こんなどこで言うなよ。仕方ないじゃん。ケンカするのも面倒だもん。殴られるより気持ちいい方が楽じゃん」


「ねーアメリカってそういうの…こっちより多いの?」


「まぁね」


 適当に流して大佐は歩き出す。リツとヒトミも後ろを歩き出した。


「ベル、おはよー」


 男女問わず声をかけてくるが、大佐はわざわざ四年生の教室まで二人を送り届けてから手を振って六年生の教室に戻って行った。少し遅れてジーンが戻ってくる。登校してきた入江が隣を歩きながら声をかけていた。


「僕が負ける訳がないだろう」


 当然のように言ってジーンは教室に入ってくる。


「うちのクラスは第一希望のお化け屋敷に決まったよ」


 ジーンが言うとすでに登校していたクラスメイトたちは一気に盛り上がった。涼しい顔で隣に来たジーンはリツの顔を見て微笑んだ。


「腹の底から震え上がらせてやろうじゃないか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。