↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生対策本部転生撲滅推進課〜悪魔な上司の意外な素顔〜  作者: 樹弦


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

344/365

ルイ&二階堂の場合

「ハルは誰とも契約していないし、この先もしばらくは特定の悪魔とも契約させるつもりはないって陛下は言ってるけど…最近少し魔力量が上がってきたから、心配ではあるんだよね」


 残ったルイは言った。


「なるほどね。どうしてそこまでして手元に置いているの?」


 セイルがチョコレートを冷蔵庫にしまいながら尋ねた。田崎は悪魔のチョコレートとは何なのだろうと気になりつつも、聞けずにいた。


「うーん、先生も仮契約しちゃったから…情報共有しておこうかな。ハルは異世界から来た凶暴な悪魔に凌辱されて、めちゃくちゃにされてるところを助けたから、記憶を操作して消したんだ。でも何がきっかけで思い出すか分からないから経過観察中なんだよね。養父母のところから逃げて銀の枝にいた悪魔の手に掛かったんだ…先生、一時期都内で薬をやってて幻覚を見たんじゃないかとか言われた、変な事件がありましたよね?三メートル近い大男にぶっ飛ばされた、とか…」


「あぁ…そういえば都内の不審者の目撃情報で…本当に人間なのか?っていう怪しい話が一時期世間を騒がせてたな…いつの間にか消えてたが…」


 田崎はニュースを思い出しながら言った。


「あれは、また別の世界から来ていた悪魔で、そいつらは陛下の部下が始末したんだけど…ハルのように何度か悪魔とそういう関わり方をしてしまうと…元の生活には戻れないと思うんです。先生はどうですか?セイルさんのことを知らなかった日常に戻れる自信はありますか?ハルの場合は不可抗力だったけど…身体に刻み込まれたものって身体が記憶しているから…ハルはきっとこの先どこかで好きな人なり悪魔なりに出会ったら、辛い記憶を取り戻すかもしれないとも思っていて心配なんです…そうなった場合…ハルを受け止めるのは人間じゃ無理かもしれない…」


 田崎はセイルを知らなかった日常になど、もう戻れないと少し前に自覚したばかりだった。だからルイの言いたいこともよく分かった。しかも田崎の場合は幸福な体験だったが、ハルの体験は真逆なのだ。ハルは養父母からも虐待を受けていたようで、しばらく学校に通っていない期間があった。それに同年代の子と並ぶとまだ小学生のように細くて小柄だ。食事も満足に与えられていなかったのかもしれないと思った。


「あぁ、それでカイムがカイくんになって付き添ってるって訳?まさかあのクソ真面目なカイムがベルフェゴール大佐の妻になるなんて思わなかったけど…ん?カイムって結局何番目の妻になったんだっけ?」


「第四夫人が離婚したから、そこにカイムが入ったよ」


「なるほど…」


「第四夫人…?魔界は一夫多妻制なのか??」


 田崎が驚きの声を上げた。


「一妻多夫の悪魔もいるみたいだし…僕も第二夫人だしね。妻を一人しか持たない陛下の方が特殊っていうか…僕は第一夫人も公認だから仲良しだけど、ベルフェゴール大佐の第一夫人は第二夫人と仲良くなれないってお茶したときにボヤいてたからなぁ…」


「暮林くんが第二夫人!?」


 大佐とやらの第一夫人とお茶をするような仲なのかと田崎はますます信じられなくなる。目の前の少年が女子会に参加している構図を思い浮かべたが、あまり現実味は感じなかった。


「もう、リヒトったら驚き過ぎだよ。でもその呼称すら結婚する際の便宜上のものでしかないよ。夫婦間の取り決めで性別を入れ替えて産んだり産んでもらったりする訳だし…」


「あ…!そうだ、暮林くんは妊婦なんだって!?」


「もう…そんなことまで喋っちゃったの?先生の頭がパンクしないといいけど…うん。家に留守番させてる方の僕はもうかなりお腹が大きくなってて、まだ悪阻も続いてるから、僕がモリモリ食べて栄養補給をしてなんとかなってるって感じですね…でも、好きな人の子どもが産んでみたかったから、僕がしつこくお願いしてそうしてもらったので…ストラスは最初は本当は僕が卒業してからにするつもりだったんです…でも、僕が待てなかった…ストラスは優しいから僕の望みは結局叶えてくれるんです。胎動を感じるとすごく幸せな気分になりますよ…」


 ルイは微笑んでそう言った。田崎はお腹に新たな命を抱えた者の強さを垣間見せられた気がした。それに学校に来たばかりの頃よりも今のルイの方が将来に対する展望を抱いているようにも見えた。


「暮林くんは…何になりたいんだ?進路指導のとき…はっきりとは聞けなかったと…担任の大友先生が言っていたのを聞いたことがあって…」


「あぁ、だって、僕はリツ…国王陛下の妻の筆頭使い魔になりたいから、中学を卒業したら魔界の学校で使い魔に必要な知識を本格的に学びたいと思ってるんです。だからうまく説明が出来なかったんです…言っても…信じてもらえないし、それにストラスの子どもも産みたいし、やりたいことはたくさんあるんですよ?」


「国王補佐官の妻の座に大人しく座ってないんだ…まぁ、確かにみんな色んな業務を兼任しがちだけどさ、悪魔は。分裂できるしね。リヒトは悪魔になったらやってみたいことある?」


 急にセイルに振られて田崎は思わず考えた。


「やってみたいこと…なんだろうな。まだ悪魔がどういうものかもよく分かっていないんだ…何となく天使とは仲が悪いんじゃないのかとか、そんな印象しかないから…でも…セイルと家族になりたいし…子どもも欲しい…俺は単純な人間だからまだそんなことしか思いつかないけど…」


 ところがそれを聞いたセイルは驚いたように田崎の顔を見つめた。


「うそ…今子どもが欲しいって言ったよね?昨日は…まだずっと先のことになりそうな手応えだったのに…ホント?今すぐでもいいの?欲しい!リヒトの子ども産みたい!」


「あれ?なんかスイッチ入っちゃった?じゃあ、僕は外した方が良さそうだね?先生、じゃあ頑張って!」


 ルイは爽やかに笑うと立ち上がって部屋から出てドアを閉めた。ドアには札がぶら下がっていていくつか外に向けて意思を伝えられるようになっている。


「うーん、さすがに直接的なのはないか…」


 ルイは入室禁止の札を表にすると部屋からそっと離れた。昨日まで無精髭が伸び放題で死んだ魚のような目をしていた相手が、身体中に悪魔のキスマークを残されて急に人生に前向きになっていることには心底驚いたが、リツと出会った頃の自分も何かが変わるかもしれない予感にドキドキしていたことを思い出した。談話室の方に向かうと、マレフォルがルイと大差ないような年代の少女の話を親身になって聞いているところだった。近づきすぎないようにしてロビーの椅子に座わると、診察室から二階堂が出てきてルイに気付いて礼をした。やってきた二階堂を見つめてルイは小声で囁いた。


「…仮契約したの?」


「あ、うん…やっぱり分かる…?」


「うん…キラキラしてるから…」


「キラキラ?」


「あ、魔力の印象?それと…マルバスさんの魔力が…身体の奥にも感じるから…また一歩進んだのかな?とか…その程度だけど…」


「えっ?そんなことまで分かるの?」


 二階堂は恥ずかしそうな顔をした。


「うん、悪魔と深い関係になるときれいになる人が多い気がする。魔力が安定するのもあるけど、内側からキラキラしてるから、変な人に目をつけられたりもするんだよね。僕の場合はひっきりなしに男女問わず告白されるんだよね…付き合おうとかセフレでもいいとか様々だけど」


「え…ルイくんって何年生?」


「ん?中三だよ?どうして?」


「いや…その…セフレって…いくらなんでも…」


「そうかな?周りでは時々、そういう話も聞こえてくるし。どこまでした?とか。下らないなぁって思うけど」


「下らない?」


「だって僕、そんなのとっくの昔に全部経験してるし。ほぼ不可抗力で。初めてなんて、全然いい経験じゃなかったから、もう慣れるしかなかったっていうか。こんなもんか大したことないって。下らないってのとはちょっと違うか。もっとそういうことは大事にすればいいのに、他の子がしてるから焦ってそんなに好きでもない子と付き合っちゃうとか、もったいないなって思うんだ。だって自分の初めては本当は全部一番好きになった人に捧げたかったっていうのが本音だから。だから女の子の姿の僕を初めて全部ストラスに捧げたときは…苦しかったけどすごく満足したし幸せになれたんだ…」


「そっか…僕も…男の子の姿になれたら…そう感じるのかな…女の子の僕は…僕じゃないんだ。ルイくんと同じで全然いい経験じゃなかったから…」


「僕たち、ちょっと似てる?」


「そうかもしれないね…」


「あのね、悪魔に全てを捧げたら、もう人だった頃には戻れないよ…僕はストラスと離れるなんて考えられない…」


「マルバスさんと僕も…そうなる?」


「うん。きっと仮契約したときとは想像もつかないくらい世界が広がるよ…だから、不安にならなくて大丈夫」


「そうなんだ…実は少し不安だったんだ…」


「大丈夫だよ」


「うん…」


 診察室に呼ばれた少女がマレフォルに付き添われて中に入って行った。少し経ってから中に入ってきた人物に気付いてルイはおやと思った。


「ガブリエルどうしたの?」


 配達のついでに寄ったのか、そこには少し若いガブリエルがいてルイに向かって片手を上げた。


「ガブリエル?」


 不思議そうに二階堂がそちらを見る。


「あぁ、うん、ガブリエルは天使。現役の」


 ルイの言葉に二階堂はぽかんとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。