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異世界転生対策本部転生撲滅推進課〜悪魔な上司の意外な素顔〜  作者: 樹弦


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新婚旅行の場合 43

 一方同じ頃、少女姿のリツはアルシエルに抱きしめられていた。リツはストラスに聞かされたのと同じ話をアルシエルにまで言われていた。リツに人殺しをさせたくない、やはりアルシエルもそう思っていたのだとリツは思って、情けない気持ちになった。役立たずだと卑屈になっていた自分が恥ずかしくなる。それでもせめてもう少し足手まといにはなりなくない、最低限身を守れるようになりたいと思ってしまうのだった。


「それなら…影響の少ない夢の領域で少し護身術などを身につけるのはどうかな。後は簡単な魔力での攻撃方法…気絶させる程度ならリツも罪悪感を抱かずに済むだろう?」


 アルシエルの提案にリツは頷く。アルシエルはうつむく少女姿のリツに口付けをしてしまった後で、自身がわずかな罪悪感を覚えて少し気まずくなった。遠慮がちに扉がノックされる。フィランジェルの声がした。


「入ってもいいかな?」


 フィランジェルは中に入るとなぜか困ったような顔をして口ごもる。フィランジェルは突然扉を開けると外で待機するつもりだったストラスを中に引っ張り込んだ。


「ストラスが言って!」


「えぇ?どうして俺を巻き込むんですか…」


 ストラスは困り顔のまま口を開く。


「では…本人が言いにくいようなので言いますが、陛下が元天使の身体でも妊娠するかを試した結果として…今お腹の中に受精卵があるのを発見しました…すぐに着床するでしょうね」


「…それは…本当か?」


 アルシエルはフィランジェルの身体をじっと見つめてから重々しく頷いた。


「本当だな…天界では分からなかったが…やはり、悪魔の力は天界では全ては発揮できないらしい…見えなかったんだ」


「えっ?フィランジェルも…?ってことは…戻ったら私はどうなるの?」


 リツが困惑したような声を出す。フィランジェルはリツを見て言った。


「多分…二人…少しの時間差はあるけれど…二人妊娠した状態になると思う」


 フィランジェルはそう言ってリツの隣に座るとそっと手をつなぐ。リツは少し慌てた。


「待ってフィランジェル!心の準備が…!」


 けれども止める間もなくフィランジェルはリツに同化して姿を消す。リツが気付くと少女の姿からは解放されていつもの姿に戻っていた。リツは恐る恐るお腹に触れる。まだ何の気配もなく何かが変わった気もしなかったが、ストラスはまじまじとリツのお腹を見つめると言った。


「確かに二人になりましたね…」


 リツはストラスの言葉になんとなく頷いたが自覚がある訳ではなかった。アルシエルは姿の戻ったリツを抱きしめて口付けをした。


「リツ…ケビンを救おうとしてくれて、ありがとう…まずは、一番にこれを伝えるべきだったな。ケビンも無事だよ。だから安心してほしい。リツはあのときリツのできる最善の方法を選んだ結果、分裂してしまっただけだ。本来のリツはフィランジェルと共にあるべきで…だから、役立たずなどと…そんなことは思う必要はないんだ」


「うん…」


 リツは小さな少女になってしまって感じた途方もない不安感がようやく消え去るのを感じた。フィランジェルの不在がもたらした状態にリツは混乱し、アルシエルがなかなか戻らなかったことで、このまま取り残されてしまったらと思ったら、どうしようもなく悲しくなってしまったのだった。隣にストラスがいてくれなかったら、もっとまずい状態になっていたかもしれない、とリツは思った。


「ストラスも…ありがとう…」


「いや…俺は別に大したことはしてませんよ」


 ストラスは照れたように頭を掻く。


「それはそうと…本気で天界に介入する気ですか?」


 ストラスは真顔でアルシエルに聞いた。


「あぁ…放っておくとウリエルの手首が腱鞘炎で壊れるからな。まずはデジタル化の導入。そのために、屋上に繋留している浮島を拡張して天界と魔界の中間地点の上空にデジタル化に向けてのシステム構築及び天使を指導する基地を作る。基地には堕天使と未婚の真面目な悪魔を中心に送り込み、自然と天使と悪魔との間に信頼関係が築けるように誘導する。そこから恋愛関係に発展すれば後は放っておいても繁殖する…そうだな、個別の休憩室も作ろうか…カフェを併設するのもいいな…」


「……」


 リツがじっとアルシエルの顔を見上げているので、彼は何か失言したことに気付いた。


「繁殖って…家畜か何かみたいで…」


「あぁ…天使を滅亡から救うための計画…天使誕生計画…とでも言おうか…」


「あ、天使で思い出しましたけど、主の方に連絡がつかないからと…ガブリエルからこちらに連絡があったんでした。ちょっと繋ぎましょうか」


 ストラスはタブレットを操作する。程なくしてビデオ通話になる。


「やぁ、元気にしてる?この度結婚したから伝えようと思ってさ。紹介するよ、あ、大丈夫。魔界と天界については大雑把に説明はしてあるから」


 相変わらず胡散臭い眼鏡をかけたガブリエルが画面の向こうに声をかけると、画面の中に瞳の大きなどこかリツに似通った顔立ちの若い女性が姿を現した。リツは妙な気分になる。相手もこちらを見て同じことを考えている気がした。


「あ、あの…みなさん、こんにちは。神力人さん…ガブリエルと結婚した三木弥生(やよい)です…あの…私…リツさんの…姉…です…」


「えっ??」


 ストラスが思わず声を上げる。


「あ…姉?」


「うん、そうだよー転生者施設に行って調べてきたから間違いない。それに誰がどう見ても似てるでしょ。元、王女の転生者。この度、天使の僕でも生殖機能はちゃんと働いてるってことが立証されたからさ、彼女妊娠してるよ。そっちもでしょ?おめでとう。ちなみに天使も悪魔並みに着床するのが早いっぽい…逆算したら人のスピードに合わなくてヤヨイをめちゃくちゃ混乱させちゃってさ。悪かったと思ったよ…」


 リツは話についていけずに頭を抱えそうになる。突然姉と名乗る自分にどこか共通点のある顔立ちの女性が現れたと思ったら、ガブリエルと結婚していてしかも妊娠している?いつの間に?聞きたいことは山ほどあったが、リツはその中で一番気になっていたことを質問した。


「あの…こんな胡散臭い人が自分は天使だって言って…よく信じられましたね…」


 弥生はリツの言葉にフフッと笑い声を立てた。


「信じてませんでした。最初は。変な人に引っ掛かっちゃったなって思った…屋上に連れて行かれて飛ぶって言われたときには人生ここで終わりだって思っちゃって…でも…翼を見せてもらいました。一緒に空を飛んで…この人は本当に天使なんだなって…思ったの…」


 ガブリエルは弥生の肩を抱くと頬に口付けをする。弥生は赤くなった。何を見せられているのかとリツは思う。姉がガブリエルの子どもを産む?


「少し前に連絡がつかなかったのは、天界に行っていたからなんだ。ウリエルが腱鞘炎で手首が壊れかけていたから、天界にもデジタル化を進めてきて…天使も恋愛解禁の流れになるように、悪魔じみた誘惑をしてきたところだ。ミカエルとイオフィエルがもしかすると、解禁前に試すかもしれないな。堕天しない媚薬を渡してきたから…」


 アルシエルが告げた。


「あぁ…今のところ僕は天使の力を失っていないし、むしろ絶好調だよ。ムツキもヤヨイに懐いてるしね…あぁ、あとはそうだな。最近あったことと言えば…アサヒが本格的に養父母と決別してラウムと暮らす方向になったよ。後から来た養子がなかなか悪知恵の働く奴でさ。財産を独り占めしたいみたいでね。結果として、アサヒが自宅で襲われそうになって…って、あ、要するに強姦されそうになったんだけどアサヒも悪魔の力が覚醒してたから反撃したら向こうは気絶しちゃったんだよね。それでラウムがブチ切れて、成人したらアサヒと結婚するって宣言して今は君の家で二人仲良く新婚ごっこしてるよ…卒業前に妊娠しないか心配になっちゃうよね…」


 リツはとてもではないがこんな話をルイには聞かせられないと思った。結果としてはアサヒの生きやすい方向にはなったのかもしれないが、アサヒは怖い思いをしたに違いないと思った。するとリツの頭の中を覗いたかのようにガブリエルが笑った。


「あーアサヒなんだけどさ、養子とその友だち二人に襲われて、使い魔モードになってめちゃくちゃに引っ掻いたり噛み付いたりして反撃したから、化け猫が出たって大騒ぎになって…最終的には駆け付けたラウムが記憶を改ざんしてその三人は病院送りになってるからさ…強くなったよアサヒも」


 思っていたのと何だか違う、とリツは安心していいのか心配していいのか分からなくなる。


「ま、とりあえず様子は見とくから安心して。じゃ何かあったらまた連絡するねーバイバーイ」


 実に軽い挨拶と共に呆気なくビデオ通話は終わり、リツとアルシエル、ストラスは互いの顔を見合わせて、たった今知らされた状況に関してしばらく思い悩まされることになった。

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