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異世界転生対策本部転生撲滅推進課〜悪魔な上司の意外な素顔〜  作者: 樹弦


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新婚旅行の場合 39

「えっ?何言ってるんですか…そんなの…悪魔に決まってるじゃないですか」


 フィランジェルは慌てて言った。


「いや…確かに…言われてみれば可能性はゼロではないな」 


 アルシエルまでが真面目な顔をして考え込み始めたのでフィランジェルはなぜか動揺してしまった。別に悪魔以外の何者であっても、それは二人の子どもに違いないのだから問題はないと思う自分と、仮に天使だった場合その子は魔界に住むことが可能なのか、天使と悪魔のハーフだった場合その子は天界と魔界どちらの住人となるのか、と思い突然新たな可能性が浮上したことによりフィランジェルは動揺を隠せなかった。それに。


「アルシエルが神さま寄り…?どういうこと?」


「そんな昔のことは別にどうだっていいだろう。可能性のことを考え出したらキリがない。子どものことは生まれてからのお楽しみでいいじゃないか」


 それはアルシエルが他の悪魔の魔力を与えられずに育ったことと何か関係があるのだろうかとフィランジェルは考える。考え込んでいる間にアルシエルはフィランジェルの腰に手を回して意味深な手つきでお腹を撫で回していた。


「…ここにはいないよ?」


「どうだろうな。先ほど精を放ったから…もしかするとその身体でもまた妊娠するかもしれない」


「ええっ!?お腹に二人もいたら大変だよ…」


「そうだな。だが何事も試してみないことには分からないからな。ミカエルも天使の繁殖計画には前向きに検討すべきだと私は思いますよ。デジタル庁からは可能な限り堕天使を出向させてもいいでしょう。そこから自然と恋愛に発展すれば…ミカエルがその身を削らずとも面白いことが起きるかもしれないしね」


 アルシエルは不意に悪魔じみた笑顔を浮かべる。ウリエルは目のやり場に困って咳払いをした。


「わぁお!天界と魔界の中間地点で天使と悪魔のランデヴーって楽しそうだなぁ。ウリエル、議会で承認されたら私も参加したいな!」


「ランデヴーって…ミカエル上官…言い回しが古くないですか?」


 フィランジェルが苦笑する。


「えぇ?じゃあ何、君の転生先だと逢引??」


「えぇと…」


 ノリノリなミカエルにイオフィエルが思わず声を張り上げる。


「そんな悪魔とミカエルさまが逢引などと…!そんなことは…絶対に絶対にダメです!!そんなことになるくらいならこの私が!!」


 思わず口走ったイオフィエルは慌てて口に手を当てたが遅い。ミカエルはニコリと笑うとまるで少し前のアルシエルのような表情でサリエルの机にいるイオフィエルに詰め寄った。ミカエルも悪魔じみた表情ができるのだなと、フィランジェルは意外に思う。ミカエルはイオフィエルのあごに指をかけると持ち上げた。


「聞いたよ?イオフィエル。じゃあ悪魔とは逢引しないからその代わり君が私の相手をするんだ。なんのためにここ数十年一緒に行動してると思ってるの?少なくとも私の前では女の子の姿を維持するのは慣れたよね?」


「そ…それは…だって、ミカエルさまが、こっちの方がいいって言うから…」


 イオフィエルは困り果てたようにうつむく。


「ミカエル…あまりイオフィエルに意地悪を言ってはいけませんよ…」


「意地悪じゃないよ。このくらい言っておかないと、イオフィエルは理解しないからさ…」


 そのままミカエルは屈むとイオフィエルの唇にキスをする。イオフィエルは硬直しミカエルが顔を離すと、徐々に赤くなった。


「逢引の予約。いい?忘れないでよ?私だって繁殖計画に乗るにしても誰だっていい訳じゃないからさ…」


 ミカエルはふわりと微笑むとこちらに戻ってきた。イオフィエルは目を見開いて硬直していたが、声を張り上げた。


「いやぁぁぁ!堕天しちゃう!!」


「イオフィエル…キスしたくらいで子どもは出来ないよ?まったく…子どもじゃないのにキスくらいで騒がしいんだから。キスした責任は取ってあげるから安心して。堕天したらしたで魔界で暮らせばいいじゃないか。天界よりも楽しいかもしれないよ?どうなのフィランジェル」


 話題を振られてフィランジェルは返答に詰まる。


「楽しいか楽しくないかで言ったら…楽しいですよ?景観も整っているし、異世界の物も積極的に取り入れているし…」 


「それに好きな時に好きな相手と何をしても文句は言われない」


 アルシエルはそう言ってフィランジェルのこめかみに口付けをする。不意にアルシエルはポケットから何かの小瓶を取り出した。フィランジェルはそれが何かすぐに分かった。魔界の寝室の枕元に並べられる媚薬の一種だった。この前も舐めた。


「ミカエル、これを」


 アルシエルはミカエルの方にそれを無造作に放る。片手で難なくキャッチした相手は光に透かしてその薄い紫の液体を見つめた。


「魔界で研究した毒薬の失敗から生まれた媚薬です。大昔、我々がいがみ合っていた頃に捕らえた天使を無理矢理悪魔に変えてしまおうという過激な悪魔が開発したのですが…どういう訳か真逆の物が出来上がってしまって。これは天使が人間と交わっても堕天には至らない…ということが証明されています。すでにガブリエルが何度も試しましたから」


「ええっ!?」


 思わずフィランジェルは傍らの悪魔を見上げて声を上げてしまった。アルシエルは肩をすくめる。


「暮林里津のいる世界は悪魔には特に相性が悪いと思っていたら天使も例外ではなくてね。悪魔ほとではないが、ガブリエルも魔力が徐々に底をつきかけていたんですよ…。最初は魔力回復薬で補っていたが、ガブリエルも最終的には悪魔の方法を試すことにしました。その際に渡した…悪魔の転生者は避ける方向で…元聖女から試してどこまで確認できたのだったかな。王女だったか女王だったか…とりあえず、それでもガブリエルは堕天していないでしょう?イオフィエルがそこまで堕天を恐れるなら一滴二滴舐めてから試せばいい…本当は渡したくなかったが、私はこれでも天使が嫌いじゃない。だから絶滅されると困るのですよ。フィランジェルが悪魔でも…今のところ目立った変化が見られないのは…私が二滴ほど舐めてから交わっているからかもしれない…これはまだ検証中だから確実なことは言えませんが…将来的には堕天した者も…天使に戻せる薬を開発出来ればと思っているのですよ…私は諦めが悪いのでね」


 フィランジェルはアルシエルを見上げて目を見開いた。この悪魔はここにきてなお自分に隠し通してていたことがあったのかと思うのと同時に、天使としてのフィランジェルを本当に大切に思っているのだということを理解してしまったからだった。


「黙っていてすまない…君が悪魔になりながらも天使の力を失わないのは…恐らくこの薬の効果だ…私は将来的には天界と魔界の垣根を越えた共存共栄を目指している…ま、なかなか実現するには難しい課題が山積みだけれどね。天界と魔界が自由に行き来できる時代があってもいいじゃないかというのが、私の考えだ」


 アルシエルに言われてもフィランジェルは頷くことしかできなかった。今までは二人の問題だと思っていたことが実はそうではなかった。世界の仕組みそのものをこの悪魔は変えてしまう気でいるのだ。


「へぇ…これがその薬ね…君がそんな壮大なことを考えていたなんて…それに天使を滅ぼさないなんて変わってるよ本当に。今の君なら天界も支配下に置いて天使を殲滅(せんめつ)することだって容易いだろうに。でもその考え方は面白いな。私はこの計画に全面的に賛成だよ。議会が承認しなくても一足先に試してみたいね。これで堕天せずにイオフィエルが妊娠できるのかどうか」


 名指しされたイオフィエルは大いに動揺し手元が狂って判を押すのに失敗した。


「あぁっ!!上官が変なこと言うから曲がっちゃったじゃないですか!」


 フィランジェルが立ち上がる。


「角印は…曲がると目立つんですよね。承認印を丸に変えてはどうですか?いったい何百年この角印を使ってるのか知りませんけど…角印はこう押すと失敗しませんよ?リツも稀に社長に頼まれて押印することがあるんです。だから覚えました」


 フィランジェルはイオフィエルに手首の使い方を教えているようだった。イオフィエルは感心する。判を一つ押すにしても、一部が薄くなることもなく全体が美しく見える押し方があるのだと学んだからだった。


「アルシエル…君はいつからそんなことを考えていたんだ…?」


 ウリエルが問いかけるとアルシエルは微笑んだ。


「フィランジェルがまだ天界にいて剣を交えていた頃からずっと考えていましたよ。この天使と私が結婚しても罪深いと言われない世界を目指すにはどうすべきかと…だがフィランジェルの翼は焼失してしまった…悪魔に変えるしか手立てがなかったが、皮肉にもそのお陰で魔界はフィランジェルを妻にしても大きな反論は起きなかった…大々的に会見も開きましたが歓迎されたようでホッとしているところです」


「そうか…我々も変わるときが来ているのだな…長寿の種族は繁殖に関しては鈍いところがあるが…長寿でも悪魔は欲望に忠実な分、その野生の本能が研ぎ澄まされていて…羨ましいよ」


 ウリエルが苦笑すると、アルシエルは真面目な顔をして提案した。


「その野生の本能を刺激する媚薬も多々取り揃えているのが魔界です。天界でも繁殖計画が始動したら喜んで輸出しますよ」

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