瑠璃の過去
わたしは籠の鳥だった。生まれた時から都合の人形、或いは便利な道具であることを望まれた。家は嘘か本当か平安の世に妖怪や禍神を収める神楽の巫女が源流とされている1000年以上の歴史を持つ大家らしい。物心がつく前からわたしの世界はこの屋敷の中だけだった。
朝から晩まですべてはお家の名を落とさぬ様学ぶだけ。ただ、その狭い世界の崩壊はあっけないものだった。
「如月家の次期当主の俺が人形のお前には勿体ないが披露してやろう。」
そう言ったのは腹違いの長兄であった。
自分は家に必要とされて家に必要とされていないわたしを見下し、優越感に浸りたかったんだろう。
当主にしか代々教えぬ秘伝を教わり、まだ未熟な舞をわたしに見せたのだ。
「どうだ?お前には扱えぬ物を見た感想は?」
正直がっかりした。どう考えても美しくない。技術も動きも位置も角度も何もかもが穢れていた。
「ちっ!所詮人形、出来損ないか」
わたしが何も言わないでいるとそう言ってわたしを蹴り飛ばした。まだ幼く体重も軽いためわたしは壁まで吹き飛び叩きつけられた。
その音を聞き、女中が駆け足で近寄ってきた。
「若様、妹君に何てことを!」
「こいつは如月家の人形だろう?次期当主は俺だ!何しても許される!」
「御当主様は瑠璃様への干渉は許されてないはず」
「ふんっ!」
それだけ言って部屋を出て行った。
その後介抱され、気がついた時には自分の部屋の布団の中だった。気がつき最初に考えたことは(あの舞はとても綺麗だった。なのに穢れていた。いや、穢されていた。そうだ。わたしが貰おうか。わたしだけの物にしてしまおうか。)
それから数時間後、屋敷の中は血の海だった。如月流の伝承者は悉く殺した。その血を引く継承者もすべて殺した。逃げだした女中以外も屋敷の者はすべて殺した。
「如月家の女中が緊急連絡をして来てみたら随分な事になってるな」
白の地の着物が血でどす黒く変わっている瑠璃を見ながら侵入者は言った。
「あら?まだ屋敷に人がいましたのね?あなたは舞えますの?」
わたしは首を傾げて尋ねた。そして、舞を踊った。
次に気がついた時は20畳はありそうな立派な部屋だった。
ソファーに寝かされていたわたしは起き上がり礼儀正しく座った。そして、目の前にある大きな机で何かしらの書類を書いている女性に声をかけた。
「ここはどこでしょう?」




