サイド 勇者 3
総数100万を越える叫びは教国の首都を揺らすほどの怒号になった。戦いに行く者はもちろんのこと首都に住む住民達、決起集会を見に来た民衆、そして信者達・・・。誰もが熱に促され興奮を抑えられずにいた。勝利を疑わず、正義は我と誰もが考えた。それぞれが正義のためにやれることをとこれから突き進むであろうことは誰の目にも明らかであった・・・。
「本当に哀れで、汚く馬鹿なゴミ達ね・・・。待っていて私の愛する主様・・・」
法王の後ろに笑顔で佇む聖女の口から呟かれた言葉は叫び声に消されて誰にも聞こえなかった。
そこから戦う者達を壮大に送り出す住民の歓声を浴びながら聖戦士達は首都を後にした。
2か月の移動で帝国領に入り半年後には魔国に組する国の国境にほど近い城塞都市へ到着した。
「この城塞都市は今では人でいっぱいになっているが、一時魔族の襲撃に会い当時の住民はほぼ全滅したらしいぜ。数十万入りそうなこの都市がだ。魔族の奴らはどれほど残酷な生き物なんだろうな?俺達正義の味方として悪は許さない。」
「この街にも強者はいたはずなのにそうなったってことはやっぱり俺達でしか倒せない奴がいるんだろうな。俺達は正直誰よりも強くなった。俺達の中には強さの序列もあるが勇者以外には誰にでも勝てるようになった。俺達が魔族から人々を守らないとな!」
「ええ!私達は強い!聖女様からのお墨付きも貰ったもの、油断せずに人類の平和のために働くわよ!」
勇者全員で会議室を借り今一度自分達の方向性を確認し合い皆で心を一つにしていた。
「作戦では二つの進行ルートがあるって話だったからそれぞれ頑張っていこう!これから戦う相手は魔王に洗脳された王国の人々だ。正直人と戦いたくは無いが魔国の先兵として長年人類の敵らしい。洗脳を解くとか解かないとかじゃなくて解けない説得しようと思うな。魔王が現れた時からずっと魔国側だそうだから覚悟を決めないとこっちがやられてしまうそうだ。」
「わかっているさ。俺達もしっかり聖女様の話は聞いていた。それに魔族と交配を重ね魔族の特徴を隠すために特有の幻惑魔法を使ってこちらを戸惑いを誘うって話だろ?聖女様から頂いた戦う前に飲むように配布されたこの「聖強化剤」があれば聖なる力で惑わされず本当の姿が見えるらしいからな。本当に卑怯な野郎達だよな」
「あぁ、皆もその薬を当日飲むのを忘れずにな幻惑魔法の厄介さはゲームをやっていた人は知っているけど本当に定番で厄介な物だからね」
「さて後1時間ほどで二手に分かれて進行を開始する。皆魔王を倒し人類の救世主になろう!」「「「「「「おう!」」」」」
俺達の小さな身内だけの決起集会は終わった。これから俺達勇者は悪の魔王を倒すべく聖戦に参加する。
強さに自信を持ち女神様から特別な力を授かった僕達は人類の明るい平和な未来を想像しやる気に満ちていた。
「僕もしっかりがんばらないとなっ!」
勇者の中で平凡なモブであるこの子は最初の疑問を昇華させることが出来ず、教国の説明を受けただけで疑問を解消し、絶対悪等ないというのに平和な日本、見た目が同じ人類に似ている同じ人が困っているというだけで思考を止めた。自分自身がやられてもいないのに見たこともない王国・魔国を悪と断じ、化け物達との戦争に身を落とす。
こうして召喚された勇者達は希望を胸に悪を打ち倒すべく準備に入った。




