8話 ブラックラビット
地味にブクマ増えてて嬉しいです
あと、VRMMOってみんな読むのね。アクセス数はすごい
「シズネはどんなモンスターをテイムしたいんだ?」
時刻は現実でもゲーム内でも昼をとうに周っており、リュウキとシズネは食べ物を売っている屋台を見つけ昼食をとることにした。
ゲーム内での食事はバフ効果がメインであるが、味があるため多くの非戦闘プレイヤーは料理を試行錯誤しつつ楽しんでいた。この屋台もそういったプレイヤーの一人が経営しており、店主オリジナルの串焼きを売っていた。
おそらくは何かしらのモンスターの肉。味は牛に似ているが、それよりもあっさりとしている。香草で肉特有の臭みを消しており、店主オリジナルのタレをつけて焼かれていた。
焼き時間は肉が固くなるほんの手前。赤い部分はなく、それでいて柔らかい。
肉とともに焼かれているネギとニンジンによく似た野菜はピリッとした辛さのあるタレに反して甘みがありそれがまた食欲をそそらせた。
食事が終わり、再び街を散策しつつアイテムを売っているという店に向かっている途中でふと思ったことを尋ねてみた。
二人で行動するのだ。リュウキにとっても仲間となるモンスター。できれば格好良いモンスターや強くて頼りになるモンスターがいい。
「……可愛いの。……ペットにしたい」
「……さいですか」
シズネは昔から犬や猫を拾ってきてはリュウキの家に連れてきて、それをリュウキが元の場所へと戻すという事を繰り返してきた。
予想できていたから仕方のないことだ。シズネのやることにリュウキは口出ししたりしない。やりたいようにやらせ、困っていればリュウキは助けるのみだ。
今回であれば強いモンスターをテイムするならばリュウキはそれを共にテイムしに行くだけだ。
「……これから倒しに行くブラックラビットが狙い目。……兎は何としてもほしい」
「そうだね。兎は可愛いものね」
リュウキは兎を抱いたシズネを想像する。悪くなかった。むしろ見たいとさえ思った。
「どうする?このままブラックラビットも倒しに行っちゃう?シズネも四時まで大丈夫でしょ?」
「……うん。……はやく兎ほしい」
まだ数時間は余裕がある。早いとこアイテムを揃えて兎狩りに行くのも良いだろう。リュウキはそう決めて歩を速めた。
「よし、じゃあ行くか」
アイテムショップはNPCによる店であったので特にリュウキたちにとって新鮮なものはなかったが、品揃えは良かった。
初心者に必要なのは安くて大量に買える下位ポーション、下位解毒剤、下位MPポーションである。それぞれ200、400、600という値段であるためリュウキは下位ポーションを多めに、シズネは下位ポーションと下位解毒剤を多めに購入した。
初期に配布されていた薬草も初心者にとっては必要なアイテムであるのだが、薬草が固定値10を回復するのに対し、下位ポーションは4秒で5回復する効果を20秒間継続するものである。薬草が100ゴールドであることからもどちらが有用であるかは一目瞭然であろう。
下位解毒剤は下級モンスターの毒であれば解毒でき、下位MPポーションは下位ポーションのMPバージョンで効果は同じである。
シズネはテイムスキルを使うときにMPを使うが、岩魔法を使うときは二つ名の効果でMPを使わないため比較的少なめで済んでいた。
一方、リュウキは格闘家というスキルにMPを必要としない職業のためMPポーションは『悪鬼変身』を使用したときのみ。リュウキの二つ名の能力は必殺技のようなものになるため今回はそこまで数は用意しなくても良いだろうと判断した。
「ええっと……ブラックラビットがいるのはガラクサ草原の端のほうか」
モンスターはそれぞれ自分たちの縄張りがあるかのように草原の中でもリポップする場所が決められていた。例えば転職後の職業が10レベルを越した頃に狩るウルフはなぜか初心者の開始位置に近く、ガラクサ門の近くにはマッドドッグがいる。方角でいうと南がウルフ、北がマッドドッグである。そして東の方向に生息するのがブラックラビットだ。
ブラックラビットは兎の名に反し、気性が荒い。小さい身体、身軽な動き、鋭い歯から初心者には敬遠されがちなモンスターである。攻撃動作の遅い武器――ハンマーや斧、大剣を扱う者では攻撃をする最中に攻撃され、避けられてしまうだろう。
ギャブーがリュウキたちにブラックラビットを進めた理由はリュウキたちの職業にあった。リュウキは格闘家である。フットワーク、手数、攻撃の繰り出しの速さはブラックラビットに負けていない。そこにシズネの魔法があれば手間取る相手ではないと考えたのだ。
そしてその考えは見事に当たっていた。
「シズネ、後は頼むぞ!」
「……うん。『テイム・バレット』
リュウキが打撃を繰り返すこと1分。そこには9割型の体力を減らしたブラックラビットがいた。モンスターをテイムするためにはテイム用のスキルで止めを刺さなければならないが、手数を武器とする格闘家であるならば体力の調整もしやすかった。
「……駄目だった」
「またかー。じゃあ次行ってみるか」
テイムはDEXとLUK次第と言われていたが、これが中々テイムできなかった。
他に何か条件があるのか、テイム自体がかなり難しいモンスターなのか分からない。だが、リュウキは一言も文句を言わずにブラックラビットの体力を減らしていた。
ブラックラビットの見た目は黒い兎である。大きさは小型犬ほどで、肩に乗せようと思えば乗せられる。シズネは見て一言、可愛いと言っていたが、リュウキにもぜひともテイムしてほしいと思わせる格好良さがあった。
「やっぱ黒ってのがいいよな」
まだリュウキは高校生になりたてである。ブラックラビットは黒い動物ということでリュウキの琴線に触れていた。
黒や赤といった動物はいい。どんなに可愛い動物でも格好良さが出てくる。そう思うのがリュウキであった。
「でももう兎少なくなってきたんだよね」
ブラックラビットは元から5、6匹ほどしか近くにはいなかったのだが、それもリュウキたちによってあらかた狩りつくされてしまった。もう少し移動すればいると思うのだが、さてリポップを待つまで休憩しようかとシズネに聞こうかと思ったときである。
「……リュウキ。……何か違う兎来た」
「え?」
シズネが指刺した先にはたった今リポップされたと思わしきブラックラビットに似た何か。
モンスター名を見てみると確かに名前すらもどこか違っていた。
「『血染めの黒兎』……」
それは所謂ネームドモンスターと言われる一般的にポップするモンスターの強化版。
黒い体毛に所々赤く血のような体毛が混じったそれはいかにもというオーラを発していた。
「シズネ、あれだ!あのモンスターをテイムしよう!」
そして、黒くて赤いモンスターはリュウキの琴線にビンビンと触れまくっていた。
ようやくモンスターを倒しに行けるぜ!




