9話 血染めの黒兎
まだまだ読みにくいかと思います
ご指摘あれば待ってます!
「シズネ、さっきまでと同じように行くよ!」
「……わかった」
血染めの黒兎ことブラッドラビットの見た目はブラックラビットに赤い体毛を増やしただけである。大きさは一回りほど大きくなっているが、それは逆に利点であった小回りの利く身体ではなくなったかのように思えた。
これなら大振りの攻撃でも当たるんじゃないか。
そうリュウキは思ったが、
「はやいっ!?」
ブラックラビットの速さは人間が全速力で走ったときのものと同程度であった。その程度の速さであれば、初心者でもない限りは対応できるのだが、如何せん兎は小さ過ぎた。
ハンマーで砕こうとする。当たらない。
斧で地面を割ろうとする。当たらない。
剣で切り落とそうとする。当たらない。
大きな武器での攻撃は振り上げる際にすでに避けられている。ブラックラビットに攻撃を当てられるのはナイフやホーミング性能のある魔法、遠距離からの弓矢、そして溜のない格闘家による攻撃であった。
しかし、ブラッドラビットはその利点であるはずの小ささを減らした上でそれ以上の速さを獲得していた。
「うぐっ!!」
まるで車にでも当てられたかのような衝撃。
とっさに腕をクロスしガードしたにも関わらず、体力は二割ほど削られていた。
ブラックラビットを狩りレベルも上がり、ステータスは駆け出し冒険者を越えていたのにこのダメージ。
「『サイドクロウ』」
お返しとばかりにリュウキはブラッドラビットの腹に拳を突き上げる。
「『ナックルリボルバー』!」
続けざまに左右の拳で合わせて20以上の打撃を加えていく。
たまらずブラッドラビットは衝撃により吹き飛ばされていく。
「ハアッハアッ……」
まだブラッドラビットの体当たりによる衝撃が残っているのかピリピリと痺れる感覚がある。
しかし、あれだけの攻撃をしたのだ。手数と速さを武器にする格闘家ではあるが、それだけに全て当たればその威力は大剣や斧にも匹敵する。
「なっ……!?」
下位ポーションを飲みながらブラッドラビットの体力を見てリュウキは驚いた。
総数にして21の攻撃をしてブラッドラビットの体力はわずか数ミリだけ減っているという今までの攻撃が無駄だったかのような減り方。
「防御力までブラックラビットより上がってるのか? いや、それにしても……」
リュウキは気づいていなかった。
ネームドモンスターとは名前のあるモンスターではない。
二つ名を与えられたモンスターであるということを。
ブラッドラビットに与えられた二つ名は『赤黒毛皮』。その効果は相手からのダメージを一定量カットするというもの。
これがブラッドラビットがネームドモンスターの更に上に位置するネームドボスに近いと言われる所以。
威力のある大振りの攻撃はその敏捷さによって当たらず。
威力はないが手数で当ててくる攻撃はその毛皮によって通らず。
体勢を整えたブラッドラビットは再び突進をしてくる。
「なら、『カウンターネイル』!」
今度は攻撃を受け止めない。
その突進の威力をこちらの攻撃に加えさせてもらう。
飛んでくるブラッドラビットの鼻柱に向け拳を突き出し、迎撃する。
リュウキとブラッドラビットは互いに吹き飛ばされ、リュウキはシズネの元へと一度下がる。
「……リュウキ、大丈夫?」
「ちょっとまずいかな」
リュウキの体力は今の攻防で半分を切った。
対するブラッドラビットの体力はようやく一割を切ったほど。
「……私も手伝う」
「じゃあ、俺が引き付けている間にでかい攻撃をよろしく!命中制度の高いものよりも威力の高いのを頼む」
「……わかった」
ブラッドラビットは大人しく待っていた。まるでお前等の攻撃なぞ効かぬから作戦会議などいくらでもやっていろとでも言うかのように。
「待たせたな。これからは本気の本気だ。『悪鬼変身』」
リュウキの手足が黒く染まっていく。
鋭く、尖り、より攻撃に適した形へと変化していく。
「……レベルが上がっただけはあるのかな」
『悪鬼変身』のレベルが2に上がったことにより今までは手首足首までしか変身出来ていなかった悪鬼の部分が、今は前腕の半ばまで、ふくらはぎの下当たりまで変身している。
「さあ来い!」
「グキュルルル!」
初めてブラッドラビットは声を出した。
面白い、と言っているかのように。
そこからは突進、打撃、蹴り、蹴りが入り混じった攻防であった。
悪鬼になっている手足はブラッドラビットの毛皮の防御を打ち破るほど高く、ブラッドラビットの攻撃を受けられるほど硬い。
だが、ブラッドラビットの毛皮は全身にあるが、リュウキの悪鬼の部分は手足にしかない。
リュウキの体力は4割ほど。ブラッドラビットの体力は6割。攻撃も防御も相手のほうが上ではあるが、リュウキには仲間がいた。
「シズネ、今だ!」
「……『ロックインパクト』」
頭上にとてつもなく大きな岩が現れる。
家一軒に匹敵するそれは隕石のようにリュウキとブラッドラビットの頭上から降ってきた。
本来であればシズネのMPを根こそぎ持って行くほどの大魔法。それを可能にしたのはやはりシズネの二つ名であった。
リュウキは岩に気を取られたブラッドラビットの足を掴み、そのまま空中へと放り出す。
ジタバタと空中でもがくブラッドラビットを見向きもせず、リュウキはすぐさま後方へと避難した。
「グルルルルル!!!!」
空中で何もできずにいるブラッドラビットを飲み込み、岩は地面へと落ちていく。
地面は窪み、数メートルの地割れを起こして岩は停止した。
「やり過ぎじゃないか?」
「……まだ」
見上げるほどの大岩が砕け散り、ブラッドラビットが姿を現す。額に角を生やして。
ブラッドラビットの体力は残り一割強。だがそれを楽と二人は思えなかった。
ブラッドラビットの足下が爆ぜた。そう思えるほどの脚力でリュウキへと突進してくる。
初手と同様にリュウキは両手をクロスして受け止める。だが、今は悪鬼の腕である。先程までとは防御力が違っていた。
「っ!?」
だが、先程までとは違っていたのはブラッドラビットも同様であった。
ブラッドラビットの額に生えた角はリュウキの腕を貫通とまではいかないが、貫こうとしていた。
「……やばいな」
「グラルルルルル」
勝ち誇ったかのように、ブラッドラビットは高らかに鳴く。今のでリュウキの体力は二割。もう一度攻撃を食らえば死が待っている。
再度ブラッドラビットの突進が始まり、リュウキは一か八かカウンターをしようと拳を突き出す。せめて、相打ちになろうかとの思いで。
「……『ロックプロテクト』。……リュウキ、それは違う」
だが、リュウキの目の前に出てきたシズネがカウンターを遮った。腕に付着した岩をブラッドラビットの角は貫いているが、シズネの腕にまでは届いていないようだ。
「……リュウキはこの兎を私にテイムしてほしいんでしょ?……私もテイムしたい。……だから、この兎は、後は私に任せて」
シズネは腕に刺さったブラッドラビットを抱き止める。ブラッドラビットは当然暴れ回るが、岩が砕けていくだけでシズネにダメージはない。
「……『オーバーテイム』」
瞬間、シズネのMPが恐ろしい勢いで減っていく。そしてブラッドラビットは体力をほんの1ミリほどまで減らす。
シズネのMPは減り続け、無くなると体力すら減っていく。
「シ、シズネ……?」
「……後は任せた」
『オーバーテイム』とはMPと体力を使い、テイムできるまでテイムを続けるというスキル。
モンスターの体力は1で止まるため、モンスターからの攻撃に耐えつつスキルの体力減少にも耐えなくてはいけないという自殺に近いスキル。
シズネはこれを岩魔法による防御で攻撃を無効化。後はテイムできるか、シズネの体力が尽きるかの運任せの勝負であった。
回復役は使って使っているが、それも追いついていない。
そして、この闘いの後はどのような結果であろうともシズネは満身創痍となる。リュウキに言った、任せるとはテイム出来なければ止めを、テイム出来れば体力が僅かしか残らないであろう自分が回復するまで守ってくれという意味であった。
暴れ回るブラッドラビットと砕けていく岩、そして体力が減っていくシズネ。リュウキはただ見ていることしかできないでいた。
一瞬の静寂があった。パリンという音とともにブラッドラビットが光となり散っていく。
「シズネ……?」
シズネは手元のステータス画面を弄る。
少し手間取る仕草をしたのちにシズネの手元に散っていった光が再び集まり形をつくる。
「……ぶい」
シズネの腕の中にいたのは赤と黒が混じった毛並みの兎であった。
リュウキ 格闘家 LV5
『悪鬼変身』 LV2
HP 190
MP 60
ATK 40
DEF 19
INT 17
AGI 40
DEX 17
LUK 17
*ATK・AGIに補正
所持スキル:格闘家スキル
装備:ギャブー印の失敗作(格闘家用)
シズネ テイマー LV4
『地底神王』 LV2
HP 120
MP 80
ATK 8
DEX 20
INT 35
AGI 7
DEX 40
LUK 26
*HP・MP・ATK・DEF・INT・LUKに補正、AGI・DEXが微減少
所持スキル:岩魔法 テイムスキル
装備:ギャブー印の失敗作(テイマー用)
職業によるスキルはレベル1、10、20と10レベル上がるごとに新しく覚えていきます
魔法は普通なら魔法使い系統の職業でしか使えませんが、二つ名のおかげでシズネは使えます
次回はテイムした兎の性能でも書きましょうかね




