92話
言葉遣い考えるの大変_(:3」∠)_
「それでは、山吉様。話し合い結果をお伝えしますね」
「はっ」
とりあえず遊佐さんとの話し合いは終わったので、山吉さんに結果を伝えるとしよう。
平伏し、体も顔もガチガチに固まった山吉さんを見ていると何か手助けをしたくはなる……が、やはり他国ということもあって出来ることと出来ないことがある。
まず米と治水に関して。
俺としては越後平野をどうにか開発出来ないかと考えていたけれど、そもそもあのあたりは為景さんに反発する連中の拠点であり、下手に手を出せば内乱まったなしの状況だ。
なので米をどうにか出来るのは為景さんと山吉さん、それに協力的な国人衆の拠点ぐらいで肝心な越後平野の開発は出来ない。
だから米だけだと為景さんの状況は多少改善するだろうけど、それで越後が落ち着くかというと不足してそうな気がする。
金山に関してはもっとやばい。
この状況下で金山の情報だそうもんなら正史より酷い内乱になりそう。
なので金山については匂わすのすら危うい状況だ。
それじゃ他に何があるかと言われると……まず元々長尾家の資金源だった青苧に関してはあまりテコ入れ出来なさそうなんだよねえ。
というのも青苧から布にするまでの作業が難しくて、手作業に頼るほか無さそうなんだ。
なので俺にはせいぜい密集して植えたほうが品質あがるよーとか。肥料これが良いんじゃないかなーと助言するぐらいしか出来ない。
なので他の方法にする。
当初この世界に来た時に、油をうってお金にできないかなーと考えた事があったよね。
ただ座が怖いから……と当時は諦めていた。でも戦国時代の油って菜種油とかじゃなくて荏胡麻油なんだって。
だからこれは越後で開発した荏胡麻油とはまったく異なる油です! ってことでごり押しできる可能性がある。
それに稲を植える時期を調整すれば、裏作としてもいけるし。油粕は肥料になる。
油自体も高く売れるし、これはぜひ直ぐにでもやって貰おうと思う。
あとはありがちだけど塩だね。
流下式塩田だかにすればずっと効率的に塩がつくれる。
他所より低い原価で大量の塩を用意できるから儲かる……まあ、越後はそこまで流下式塩田に向いている地ではないけどね。
やらないよりはずっとましだろう。
能登畠山でもまだ試行錯誤しているようなやつは除外しておいた。
てか、そっちも流すとさすがに能登畠山への影響がでかい。
他にもあるんだろうけど、ぱっと思いついたのはこのあたりである。
「もうこじれにこじれていますので、全てを納得させて円満解決は無理だと思うのです」
山吉さんの顔がぐっとこわばる。
無理という言葉は彼にとってもっとも聞きたくないものだったはずだ。
俺はあえてそこには触れず言葉を続ける。無理なのは円満解決ということだけなのだ。
「でも内乱以外に、ある程度落としどころを見つけることは出来るのかなと」
山吉さんの顔が少しだけ上がる。
内乱が起こると本当もう最悪だが、今は……嵐の前の静けさというやつだが、一応表面上は落ち着いてはいる。
正史で起こった内乱は1530年の1月だそうだ。
一応1年半の期間は残されているので、この間にどうにかして最悪の状況になるのを避けねばならない。
「いくつか私から長尾家に贈り物をします。それを用いてどうにか国人たちがある程度従うのもやむなし、となるだけの実績を作ってください」
そう言って俺は山吉さんの前にいくつかの書物と図面を置く。
要は為景さんにもっと力があれば良い……それは何も武力だけの話じゃなくて、経済力でも良いのだ。
金を稼いで札束で頬を叩けば、多少為景さんになびく勢力だって居るだろう。
「これは……」
「米、塩、油のとれる量を増やしましょう。やりかたはこの指南書に。必要な道具がこの図面をみて作成してください……私たちの田んぼを見たでしょう? あれを山吉さんと為景さんのところでも広めます」
俺の言葉を聞いて山吉さんの顔に希望の光が差す。
生育途中とはいえ、あの田んぼを見たんだ。明らかに成長具合が違うのは分かっているのだ。
収穫量爆増によって経済的に余裕が出れば、国人衆に対する段銭の徴収だって減らすことが出来るし、独占しようとした特権も多少元に戻したりもできるだろう。
そうすれば多少は時間を稼げるはず。稼げなかったらもう内乱まったなしなので、どうにか一向宗と手を結ぶのを思いとどまるように為景さんを説得するしかない。物理的に。
まあ、ここは時間を稼げる前提で話をしよう。
「それと……こちらはアブラナと呼ばれる植物の種です。稲の収穫を終えたあとに撒いて、まずは種を増やしてください。次の年からは収穫した種を絞れば油がたくさんとれます。稲の詳細については遊佐様から後程説明しますね」
油って結構高いんだよね。
同じ広さの畑で育てた場合、油のほうが2~3倍米より儲かるんだ。
裏作でそれでが出来るのならやらない手はない。
稲に関しては遊佐さんに丸投げするよ!
「秋の収穫が終わってからになりますが、私も手伝いに向かいます。ある程度落ち着けば次の段階に進めますので、それまでの辛抱です。頑張りましょう」
指南書だったり種や種籾渡すだけでも良いかも知れんが、俺がいくことで作業もはかどるし、何より神仏かどうかは分からんけど、尋常の生物ではない存在と長尾為景が協力関係を結んだ……と噂は広まるんじゃないかな。
国人衆は為景さんのこと警戒しまくっているだろうし、その手の噂も彼らの元に届くと思うんだ。
そうやって時間を稼いでいる間に、お金稼ぎまくって経済力で他を圧倒して貰おう。
なんなら余った金を使って常備兵とか用意しても良いかも知れない……こっちは国人衆を刺激しそうだから、慎重にやらんとだけど。
ある程度余裕がでたら、船も造ろうか。
大勢を一度に運べるようにしておけば、佐渡の金山をおさえるのも楽になるだろうしねえ。
と、まあ色々考えて提案してみたけれど、実際うまく行くかは……やってみないと分からない事が多い。
俺も協力して成功率上げるつもりではいるけどねえ。
ただこのまま何もしないでいると内乱が間違いなく起こるので、何のやらないという選択肢は無いのである。
「不才の身ながらひとえに御神威を以てこの度の御恩、忝く存じ奉る」
平伏していた山吉さんが、畳に額が付くほどに深く頭を下げた。
難しい言葉いわれても良く分からんて。




