82話「新年のあいさつ。その2」
「この岩なんてどうです……? ほら、良い感じに苔むしてますよ」
「……確かに立派な岩ではあるが」
庭にただの岩が転がっているなんてことは無いだろうから、あの岩はきっと庭を飾るために置いてあったと考えるのが自然だ。
そんな岩を偶然とは言え粉砕してしまった以上弁償するなり代わりの物を用意しなければならない。
というかもうこれ土下座案件ですよ。もう二度と壁を登って侵入とかやらんぞ!
くそう……素直に正面玄関から入ればよかったよ。
その場合門とか階段とか粉砕することになるんじゃないかと? それはそう。
でも正面から堂々と入るのが大事になのだ。
真ん前から打ち砕く! ってノリでいけばきっと許されるよ。たぶん。
「某は岩の良し悪しは分からぬのだ」
なんか反応鈍いな思ったら遊佐さん岩に興味なさそうだねえ!
俺も興味ないけど、お揃いだね。
あ、でも苔とかは割と好きだよ。
苔テラリウムとか良いよね。小さな森表現したりとか色々できるのちょっと育てみたいなーて思ったことある。
結局忙しいし枯らせてしまいそうだからやらんかったけど。
っと、そんなことよりも今は岩をどうにかせんと。
秀盛様がくるまでに岩を入れ替えておかないと……サイズ微妙に大きいけど、まあ成長したんじゃないですかねーって言えばきっと誤魔化せるよ。誤魔化されてくれないかなあ!
「これはこれは御子神殿。よくぞお越しくださいました」
「やっべ」
粉砕岩をどかして、いざ取ってきた岩を置こうってタイミングで秀盛様が帰ってきてしまった。
どうしよう。人の家の庭で岩を抱え佇んでいるとか、不審者にもほどがあらあ。
「御子神殿?」
あかん。
な、何か良い言い訳はないか。
人の家の庭で岩を抱えていてもおかしくない言い訳は。
こてりと傾いた秀盛様の顔が、どんどん角度ついていく。
「し、新年の挨拶に来たのです。これは心ばかりの引出物です……お納めください」
「おお、これは……まことにかたじけなく……?」
苦しい。
苦しいにもほどがあるぞこの言い訳。
新年の引出物に岩を抱えてくるとか頭おかしいにも限度というものがですねえ?
あ、でも一応岩は受け取ってくれそうだし、ワンチャン誤魔化せている可能性が……? ないかなあ。
「それで今日はどうされたのですか? そこにあった岩が砕けているようですが」
ばれてーら。




