76話
飛騨はどうなんだろ。
こっちはちょっと分からんねえ。
「まず会津の場合は長尾家経由で入手できるかも知れぬ」
「おー」
長尾って会津の隣だったかな。
記憶があいまいだけど、確か今は上杉謙信の父親が治めているんだよねえ……あれ?
上杉謙信……七尾城……何か攻められてなかったか。
「……長尾家とは仲良いんです?」
「うむ。なかなかに交易が盛んであるな」
おそるおそる遊佐さんに聞いてみたが、あっさり答えがかえってきた。
交易が盛んで、遊佐さんの口振りを見るに割と仲良いんだろうかねえ。
「なるほどなるほど」
もう少し詳しく聞いてみると、長尾が輸出する品物はどうしても能登を通る必要があるそうな。
で、もし能登畠山と仲が険悪になってここは通さん! とかされると長尾としては経済的なダメージがとんでもないことになる。なので仲良くしているんだと。
とりあえず今の上杉謙信に代替わり前の状態であれば問題なしってことだねえ!
てかまだ謙信生まれてないよね……生まれたら贈り物でもして個人的に仲良くしておこうかしら。
酒好きらしいし、いっぱい送っておけばこっち攻めてこんじゃろ。たぶん。
「飛騨であればこちらも交易はあるのでな。川を使い運ぶことは叶うだろう」
「どちらもいけそうですねえ」
飛騨は……何かあったかな。
前に調べた時に能登畠山関連では飛騨の名前出てこなかったような……なら大丈夫かねえ。
問題としては一向一揆が近くに居るってことかな。
まあそれはこっちにも言えることだけど。
これらを踏まえてどこから陶石を入手するか……ふむん。
「……どちらからも入手して構わんのでしょう?」
「む」
と、ちょっと決め顔で言ってみたけど、遊佐さんは特に気にした様子もなく考え込むしぐさを見せる。
スルーされる悲しみよ。
「もし何かあって片方から供給が止まっても、もう片方が生きていれば磁器を焼き続けることはできますし……勿論材料によって色々調整したりといった手間は出るでしょうけど」
「そうであるな……うむ! 某に任せるが良い!」
そう言って胸をドンッと叩いた遊佐さんは、行先も告げずに引き留める間もなくどこかへと走って行った。
まあ、たぶん七尾城にでも行ったんじゃないかなー……徒歩で?
「おかえりなさい」
一刻後。よれよれになった遊佐さんが無事帰ってきた。
途中まで走って行ったけど、力尽きて戻ってきたらしい。
そりゃそうよ。
すっかり寒くなり、もうすぐ冬になりそうな寒空の下。
俺はコンロで餅を焼きながらスマホをながめていた。
「うーん」
見て居るのは例の中古品販売サイトである。
ここで買うのは大抵換金用のガラス製品や磁器であるが……だんだんと購入出来るものが減ってきているのだ。
俺が安いものを片っ端から買っているもんで、残っているのは高額ばかり。
一応毎日新しい品が追加されてはいるのだが熟れそうで安く入手できるものは限られているからねえ。
それに買うのは俺だけじゃないし。
「陶石売ってるのね」
そんなら本格的に自分たちで造れるようしないとねと言うことで、磁器を造るのに必要なものが入手できるか調べてみた。
まず材料だね。
こいつは陶芸専門のお店をみていたら、粉になった陶石を販売しているところがあった。
しかも割と無理なく買えるお値段だ。
試しにいくつかポチっておこう。
「電気炉0円……動くんかこれ」
あとこれがないと磁器造れないぞーってので、電気炉も探してみた。
新品を買うと二桁万円するのでまず購入不可能。
ただこれも例の中古サイトであさってみると安かったり、中には無料のものが存在していた。
……元が二桁万円するのを無料でとか、絶対壊れてそうではあるけど。まあこれもポチる。
「ろくろもちょい錆があるけど0円のあるねえ」
どうせなら電動ろくろが欲しいなーと探してみると、これもいくつか見つかった。
新品に近いのは結構なお値段だったが、とりあえず動くレベルであれば安くすむ。
「釉薬……割とお高い。ぎり3000円で助かった」
釉薬に関しては思っていたよりも高級品だったね。
一番容量すくないやつでほんっとギリギリ買えるお値段だ。
磁器造るなら釉薬も造らないといけないねえ……ま、そこは職人さんにお任せするけども。
陶石を買ってしまうから、こいつは後で購入だな。
幸い釉薬が使うのは最後のほうだし、とりあえず釉薬以外を買って磁器造りをやってみようと思う。
うまくいったら遊佐さんと丸山さんあたりに話して……かな。うまくいったらね。
「割といいんじゃない?」
力尽きたク〇ネコヤマトの配達員さんを横目にろくろを回していたのだけど、初めてにしては綺麗なお皿が出来上がった。
厚みも均一だし、ゆがんでないしで自分で言うのはなんだけど良い出来だと思う。
「絵付けは最後のほうだから、筆とか色々用意せんとね」
無地だと寂しいから素焼きした後に絵付けはするつもりだ。
ただそれだけだと面白くないんだよねえ。
「……あ、そうだ」
力尽きたク〇ネコヤマトの配達員さん……じゃなくて、そこの近くで丸まっている三郎をみたら良いこと思いついた。
「三郎ちょっとおいでー……バナナあげるよ?」
ひょいっと抱えて運ぼうとしたら、イヤイヤしだしたのでバナナをちらつかせると……急に大人しくなりやがりましたよ。
すっかり餌付けされおってからに……まあ、今回はそれで助かったけど。
「よっと」
三郎の前足をつかんで、肉球部分をお皿にぐっと押し当てる。
すると皿には綺麗に三郎の足跡がついた。
……猫みたいな可愛さではないが、これはこれでまあ良いだろう。
あとは絵付けの時にたぬきの絵でも描いておけば完璧かな。
「いっぱいおたべ」
ほいっとバナナを一房まるまる上げると、器用に一本ずつ剥いて食べ始める三郎。
無駄に器用だなこいつ。




