75話
っと、
「うーん……」
開拓した土地は畑に変わり、道の整備も大分進んだ頃。
簡易的なテーブルの前で一人ぽつんと膝を抱える者が一人。俺である。
「うー……」
テーブルの上にあった緑色のつるりとした実を手に取り、ぱくりと一口で食べ首を傾げてうなる者が一人。俺である。
いやね。道を整備していたらこくわの実って食べられる実が見つかったのだ。
地元民がこれ美味しいよと言うので一抱え摘んでうきうきしながら帰ってきたのだが……ほんのり甘味があり、ひどい酸味とえぐみがあるそれは正直美味しいとは……むう。
でも地元民的には美味しいんだから、たまたまはずれを引いただけかも知れない。
そう思いもう一つ摘まんで口に放り込むが……。
「むぐぅ……」
やっぱ美味しとは言い難い。
他の地元民の様子をみるに、みんなにこにこしながら持って帰っていたことから、こいつは地元民的には美味しいのは間違いないはずだ。
食い方が悪かったんだろうか……実は煮たり焼いたりしないとダメとか?
そうやってうんうんと頭を悩ませていると、飯盒片手にスキップしながら近付いてくる人物が一人。
まあそんな人、遊佐さんしかおらんのだがね。
遊佐さんは膝を抱えている俺をみて、ついでテーブルの上のこくわの実を見つけるとすっと手に取った。
「む? こくわの実ではないか」
食べても良いですよ。そう言おうとして寸前で止まる。
こくわの実を食べた遊佐さんの反応を見てみたかったが、貰って来た以上は俺が責任を盛って食うべきだろう。
「少し置いておかねば旨くないぞ」
「…………ちょっと口開けてください」
「ぬ? ……ま、待つのだ。それはまだ熟れてないから不味いのだ。やめるのだ」
一週間後。
バナナと一緒に保存しておいたこくわの実はとても甘くておいしゅうございました。
教訓。
初めて食うものは事前に食べ方を調べましょう。
さて、境内の整備を始めてからしばらく経つが、主食で貨幣もかねる米の量産体制、外貨を稼ぐための日本酒造りであったり椎茸栽培、それに砂糖大根と甘薯等々。色々と能登畠山の国力を上げる準備は進んでいる。
他にも色々とやることはあるが、今日は俺も興味があった陶芸に関して能登畠山でも磁器を造れないかとパソコンのキーボードを叩いていた。
「陶石の産地が意外と近くにあったけど……ちょっと嫌な予感がするねえ?」
磁器を造るにはまず陶石がいるらしい。
もちろん窯も必要だが、そちらは作ろうと思えば作ることは可能である。
だが窯があっても磁器の原料がないことには何も出来ない。
なので日本における陶石の産地を調べていたのだが……一応近所にあるにはあったんだよね産地が。
ただ場所がすっごい微妙な位置にある気がしてならないのだ。
「うむ……そこは一向一揆の勢力下であるな」
「やっぱりー!」
助けて遊佐衛門!
ってことで聞いてみたら予想通りで俺は悲しいよ。ちくしょうめえ……。
「ほう。そこで磁器の材料が採れるのか」
「なのです。交渉してどうにか入手……だめだ碌なことにならない気がする」
「御子神殿は特に関わり合いにならないほうが良いであろうなあ」
かくかくしかじか。
遊佐さんに南西のほうで磁器の材料となる陶石が採れる事を伝えるが、やはり遊佐さんも一向一揆との交渉はやめたほうが良いと考えているらしい。
というか喋り方は穏やかだけど目がかなりガチなので、これは一切関わらないレベルのほうが良さそうな気がする。
「他に採れるところは無いのであるか?」
「ん……他に採れるところは」
あるんだろうか?
とりあえず検索して出てきた有名どころがそこだったんだけど……ちょっと地方を絞って調べてみるかねえ。
ぺちぺちとキーボードを叩いて調べること数分。
思っていたより産地あるもんだね。あと初めて聞いた焼き物の名前も出てきたよ。
見た目が結構よさげだったから、安く手に入るなら買ってみようかな……っと、それはとりあえず後だ後。
「近いのは飛騨と次いで会津かなあ」
近いといっても結構離れているんだけどね。
飛騨は現在の地図でみると100km以上離れているし、会津に至っては400kmは離れている。
もっと近いところにもあるんだけど、一向一揆がいる方向だからちょっとね?
「どちらも可能性はあるぞ」
「え、そうなんです?」
距離がかなりあるか、めちゃくちゃ山奥だから無理なんじゃね? と思っていたけど入手できてしまうのか。
会津は……そっか、船ならいけなくもないのか。新潟までどうにか運べばそこから船で行けると。
飛騨はどうなんだろ。
こっちはちょっと分からんねえ。




