71話
遊佐さんの野宿生活がスタートしてからおよそ二月が経過した。
あれから大分涼しくなり、季節は秋を通り越して冬の気配を感じるほどになっている。
「思ったいたより立派になりそう」
境内の整備は大分進んでいる。
まず例の範囲に沿ってぐるりと堀の掘削が進んでいる。
川の水を利用して一応水堀にするらしい。幅はそこまで広くないので水堀というか水路というかなんとも言えないところだ。
次いでキャンピングカーの周りにもぐるりと堀ができた。
俺の家庭菜園も含んだため、円ではなく四角く囲われている。
真上から見ると永楽通宝とかあんな感じだ。
これに関しては掘る量も少なかったことから、既に掘り終わっていたりする。
あと特徴的なところで円の外側に対角線上になるように4つほど櫓……櫓にしては随分立派になりそうだけど何やら建物を建てるらしい。
遊佐さんにあれは何? と聞いてみたところ『丸い城壁だと壁に張り付いたやつを狙いにくい。故にここら矢で射るのだ』と答えが返ってきた。
考え方が実に戦国時代なんよ……てかこれ、疑似的に五稜郭とかそれっぽい構造になってないか? 遊佐さん良く思いついたねえ。
「館というかお城というか……」
境内は土を盛って外より高めになっており、そこにぐるりと境内に沿って塀が出来ていく……まだ本の一部しか出来ていないが、櫓やら建物と一体化したそれは城壁みたいなものだろう。
遊佐さんの住居を優先して建てているが、あれも住居と言うよりかは防衛施設のようになりそうな気がする。ちなみに完成していないので遊佐さんはまだ野宿だ。
「いざとなったらここで防衛することになるでな」
さすが戦国時代というかなんというか。
義総様の統治下では、比較的周囲との関係は落ち着いてはいるそうだ。
ただ表面上友好関係にある朝倉や、一向一揆はいつ何時しかけてくるか分からない状況らしい。
今は俺の存在は他国には知られていないだろうが、時間の問題であり何も準備せずにただ待っているのはあり得ない。
よってこのキャンプ地を中心に麓の村まで含めて要塞化してしまうつもりのようだ。
んでみんなが境内の整備に精を出す中俺が何をしていたかというと。
「うーん。見事なまでに自然破壊!」
自然破壊に勤しんでましてよ。
……嘘です。って言いたいけど嘘じゃないんだよなあ。
ひたすら森の中をキャンピングカーで爆走してたからねえ……おかげさまで当初の予定通り4km×1kmの範囲にあった木は全てなぎ倒した。元々森だった場所は今ではただの草原というか、俺が走りまくったせいで荒れ地になっている。
木をなぎ倒した後はひたすら根っこを引っこ抜いているけど、これがなかなか終わらないんだよね.
なぎ倒した木や引っこ抜いた根も普請の人らが運んでくれるから、俺はひたすら抜くだけで良いんだけどねえ……それでもまじで終わらん。
単純に数が多すぎるのだ。
それに木と根の処理も追いつかないし……なので最近は午前中がんばって午後は別の作業に勤しんでいる事が多い。
「……ちゃんとお酒の匂いだ」
まだ発酵の途中だけど、この段階でもちゃんとお酒の香りがする。
動画や酒造メーカーのHP見ながらの作業ではあったけど、割と順調に酒造りが進んでいる気がする。
いきなりでお酒造れるなんて俺ってこの手の才能あったのか……とは思わない。
なんとなーくだけど、神様パワー的な補正が入っている気がするのだ。
そうじゃなければいきなりこうも上手くはいかないだろう。
まあ、今回は製造工程の確認が出来ればそれで良い。
細かい調整なんかは職人さんにお任せである。
とりあえずお酒が出来た段階で村人に飲んでもらおう。
そしてこのお酒を造ってみないか? と遊佐さんとタッグを組んで村人に進めるのだ。
幸い麹菌は通販で手に入るし、酒用のお米も買えちゃったりする。
個人がお酒造るの禁止されているのに何で酒用のお米が売っているかは謎である。
食べるのかなあ?




