59話
もうすぐ夏休みですね_(:3」∠)_
「っと……よし、割れてないな」
予想より高く飛びすぎてしまった。
そこそこの勢いで屋根に着地したが、幸い屋根をぶち抜くとか瓦が割れるとかそういった被害はないようだ。ぶち抜いてたら本丸で居るであろう殿様に奇襲かけたことになっちゃうところだったね。
せーふせーふ。
「……ほんっと眺めすごいな。カメラ持ってくればよかったよ」
顔を上げた瞬間飛び込んできた景色に一瞬心を奪われる。
絶景とはこういう事を言うのだろうか。
天気が良く空気も澄んでいて、湾や半島が良く見える。
現代ほどではないが市街地も広がっていて、山の麓には城下町もある……いかにも日本家屋といった佇まいで、本当に戦国時代に来たんだなといった気持になる。
生で見たからか、現代の写真や動画みた光景よりも綺麗に見えるね。
景色が開けていて、湾や半島が……ああ、そうか。ほどよく禿山になっているから遮るものがないのか。
もちろん城の屋根に乗っているからというのも大きいだろうけど、現代は木が多すぎて視界が悪くなっちゃって、見えるように一部を伐採したんだったかね?
つまり俺が見ているこの光景は過去から現代において一番良い眺めと言うことだ。
なんか山に登る人の気持ちが分かった気がするねえ。
「カメラ買うか」
スマホにもカメラついてはいるけどあまり性能は良くない。
何せ大分型落ちだからな……電池がダメにならないからと使い続けていたけれど、こんなところで困る事になるとはねえ。
あとでお手頃価格のデジカメがないか探してみるかねえ。
安くてもスマホカメラよりは性能良いだろう。
……よし、そろそろ戻るか。
良い眺めでずっと見て居たくなるけれど下で兄君と遊佐さんが待ってるからねえ。
「む」
さあ降りよう……と思ったら、滅茶苦茶人だかりが出来てる。
どうしよう。やっぱ本丸登っちゃダメだったんだろうか。
…………冷静に考えたらダメだな!
とりあえず何事も無かったかのように降りてみよう。
当然ですって態度でいればスルーしてくれるかも知れない。
ダメだったら神使だから人間どもの常識なんぞ知らんのだ。で乗り切ろう。
んじゃ飛び降りるかね。
出来るだけ優雅な感じで……ひょいっと。
「本当に素晴らしい眺めでした。ありがとうございます」
「え、ええ……それはよかったです」
割と適当ジャンプだったのに兄君の前に着地できた。
あと着地時に音が一切しなかったんだけど、どういう理屈なんだろうか……人ほどの重さがある物体があの高さから落ちたら結構派手な音がしそうなもんだけどね。
地面をみても足跡もないしクレーターとかもできてない。代わりに人の輪が広がっただけだ。
謎である。
それはそうと……うん。ドン引きはしてそうだけど怒ってはなさそうだ。
このまま何か突っ込まれる前に話を進めてしまおう。
「そういえばなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
話を進める前に、声掛けようにもなんて呼べばいいのか分からんのよね。
最初の名乗りも……半分ぐらい忘れちゃったし、うっかり間違えて呼ぼうものなら本人はともかく周りが怒り出しそうだし。
なので呼びかた確認するのは結構大事なことなのである。
「……秀盛で構いませぬよ」
「それでは秀盛様と呼ばせて頂きますね」
俺の問いに兄君は少し疲れたような笑み浮かべこたえる。
この短時間でちょっとやつれたように見えなくもない、お労しや。
あとでお酒あげるから元気だして欲しい。
瓶のお高いやつは明日献上するやつだから今日は出せないけど、最近は紙パックの日本酒でも結構美味しいのが増えているらしいんだよね。俺は飲んだことないけど……でもお値段もお手頃で量も多いし、それで味も悪くないんであれば今日の夕食で出してもいいなーってね。
楽しみにしていてくださいね。そんな気持ちで笑みを浮かべたのだが……秀盛様の頬がちょっと引きつってたのなんでだろうか。
それと秀盛様さんと話している最中ずっと視界の端に遊佐さんがちらちらうつりまくってるんですが、何かのアピールだろうか。
何か言いたいことあるー? と視線で投げかけると、遊佐さんはハッとした様子で自分を指さした。
「そ、それがしも重盛と……」
「遊佐様」
「御子神殿ぉ!?」
また兄君もとい秀盛様が顔を伏せてしまわれたぞ。




