55話「城壁からこんにちわ」
「あれかなあ……」
今浜の手前で遊佐さんの魂が抜けてしまったので、海岸沿いにそのまま北上し邑知潟についたところで右折。そのまま山に突き当たったところから山沿いに進んでいくと、何やら山頂に人工物が見えてきた。
おそらくあれが七尾城じゃないかな。
このまま進むと城下町に突っ込んでしまうので、一旦ここで止まっておこう。
人口密集地に突っ込むと人が消えるわ鉄の塊が爆音あげて突っ込んでくるわで大騒ぎになるからねえ。
ただでさえ何人か強制的に範囲外に飛ばされてるぽいのに、これ以上騒ぎになると荒神どころの話しじゃなくなりそう。こわいこわい。
ああ、そうそう。
例の範囲に入ったらどうなるか、だけど。
まずキャンピングカーが動いてなく外から人が入ろうとした場合は、例の範囲内に脚を踏み入れるとフッと姿が消えて、数十m離れた適当な位置に飛ばされるそうだ。特に体に害があるとかはないみたいだね。
壁の中に居るとかも発生しないので安心してほしい。
んで、次にキャンピングカーが突っ込んでいった場合はどうなるか。
これも範囲内に人が入った瞬間姿が消えて、適当な位置に飛ばされてしまう。
数百mとかkm単位じゃなくてよかったね!
森のそばとかだと遭難者続出するところだったよ。
ま、それはさておいて。
ここから先は遊佐さんの案内が必要になる。
そろそろ魂戻ってきてるかなあ?
「遊佐様、城の方角ってあっちであってますー? ……遊佐さまー?」
ゆすってみるとこちらへ顔を向ける遊佐さんであるが、目が虚ろである。
とりあえず口元におにぎり持っていったら食べたので、そのうち復活するだろう……俺もおにぎり食べてようかな。
「それじゃこれから山を突っ切ってお城の裏に回ります」
おにぎり1個食ったあたりで遊佐さんの目に生気が宿り、あの山が目的地であっている事が確認できた。
あとはなるべく人の居ないところを通って城へと向かうだけだ。
向かうだけであるが……。
「……ちなみにこのことって他の方はご存じです?」
「ああ、一応伝えてはあるぞ。笑っておったがな」
俺の質問にそう返して鼻を鳴らす遊佐さん。
これは信じて貰えなかったやつだねえ。
そりゃ山を突っ切って木をなぎ倒しながら裏に向かいます。とかいっても信じてはくれなないというか、相手にされないだろうねえ。
しっかしどうしたものか。
言ってはあるってことは、実行しても問題ないと考えるか。
向こうが信じていないならやらないでおくべきか……どうしようねえ。
「許可は出ているので問題ない。なんなら壁を突き破っても構わんぞ」
ちらっと遊佐さんに視線でどうしましょ? と聞いたらそう答えがかえってきた。
「では、頑張って突き破りますね」
「うむ!」
許可出ているなら問題なしなのでよし!
せいぜいド派手に壁をぶち破ってくれるわ。
ぶいんぶいんとエンジンをぶん回し、木々をなぎ倒しながら山中を爆走する俺のキャンピングカー。
木も崖もなんの障害にもならないぜ。遊佐さんも隣でノリノリで突っ込め、もっと飛ばして良いぞと叫んでいる。ストレス溜まっているのかなあ?
しばらく遊佐さんの指示に従い、進んでいくが……視界に入る城が大分大きくなったところで、遊佐さんがはっと表情を返る。
「……突き破るのは隣の館にしてくれ」
「隣と言われましても、あまり区別がつかない……」
もしかしてあれかな。
自分のところの屋敷に突っ込ませようとして、途中でやべえと気付いたとか?
だから隣に……ええと、隣は誰の屋敷なんでしょうねえ?
まあ、許可出ているからよし!
「こっちです?」
「そっちは本丸……」
あぶねえ。
そっちはガチで突っ込んじゃいかんところでしょ……。




