54話
「……ほいだらまた戻ってきてくれるんだべか」
遊佐さんに少し遅れて外に出て、人だかりの方へと向かうと何やら不安げな様子で遊佐さんと話しこむ村人の姿があった。
こっちをちらちらと見ていることから恐らく俺に関する話題だろうな。
「うむ。顔を出しに行くだけなのでな……早ければ明日戻ってくるだろう」
遊佐さんがそう言うと、あからさまにほっとした様子をみせる村人たち。
普段あの広場から出てこない俺が遊佐さんと一緒になって出てきたから、どこか行ってしまうと思われていたんだろうか。
……いつの間にか慕われていた? 種籾あげた以外ろくな事していない気がしなくもないけど。
とりあえず俺も挨拶しておこうかね。
「少しお城まで出かけてきます。留守の間よろしくお願いしますね」
なんか近寄ったら俺を中心に輪が出来たと思ったら広がったんですが、どういうことなんでしょう。
慕われてたんじゃなかったんかい。
いや、確かに手を合わせて拝まれてるけど……拝まれてるってどういう状況なの。
しかもみんなこちらに目を合わせようともしないんですけど。
泣いていい?
「……」
とりあえずあの後は特に何事もなく村を通ることが出来た。
だが村の景色を楽しむことは出来なかった……さすがにあの状況で村の中を歩き回るのは無理だったよ。
「どうかしたのか?」
村を出てから静かな俺をみて、遊佐さんがそう問いかけてきた。
村人に何か距離おかれてショックだったんです! なんて馬鹿正直にいうわけにもいかんので、とりあえず頬をかきながら誤魔化すように軽く笑う。
「ええと……まさか拝まれるとは思わなくて」
「そりゃこの辺りは豊作だった者が多いかったからな。拝まれるのは仕方ないことだ」
つまりはガチで神様かその系統扱いになっているという事なのだろうか?
何を言ってるんだお前と言わんばかりの遊佐さんに、そういう事かと納得しかけたが……さきほどの村人の様子をみるに、何か違うんじゃないかと疑問が浮かぶ。
「でもその割には……拝み方が必死というかなんというか」
「それは……今までの行動を思い出してみたらどうだ?」
「……」
今までの行動……村人に対しては種籾あげたり、水車作って貰ったときに食事を出してあげた。
こちらまで来るのが大変だろうと道を拡張もしてあげた。
今でも鮮明に思い出す……森林破壊にいそしんだ日々を。
……うん。はい。そうね。
原因がきっとそれだね。
荒神か何かの扱いだこれ。
「ずっと走らせているが、休みを入れなくても良いのか?」
これからはちょっと大人しくしようと思う俺であった。
なんて考えながら道を徐行していると、遊佐さんがそんなことを聞いてきた。
「こいつは休みいれなくてもずっと走れますよ」
「素晴らしいな!」
何せ燃料無限ですし。
まあトイレ休憩とか食事とかは必要なので、ずっと走りっぱなしって訳にはいかんのだけどね。
……っと、そろそろ森を抜けて平地に出てきたな。
もうちょい道なりに進んだら今浜に出るのかねえ。
「しかしこの神輿……? は速いな。平地であれば馬を全力で駆けた時と変わらぬ」
神輿じゃないです。
今の時速は30kmちょいってところだ。
平地とはいえ道は狭いしでこぼこしているのであまり飛ばしてはいない。まあサスペンションの性能がやたらと良いので、でこぼこ道を走ってもあまりお尻に振動こないんだけどね。
「道が良ければもっと速く走れるんですけどねえ」
「なんと!」
無理すれば出せるとは思うけど、ちょっと気持ち的にこの道では飛ばしたくない。
根性ブレーキ的なものが発動しちゃうのだ。
「これ見えます? この針が速さを表していて、こちらに傾くほど速いってことになります」
「なるほど……まてまて! 半分もいってないではないか!」
一応まだ速度出せるんだぞーってことを遊佐さんに説明すべく、スピードメーターを見せてみるが……さすが遊佐さん理解がはやい。
「ですねえ……その気になれば今の何倍も速く走らせますよ」
「なんと……」
この車体トラックベースではあるけど重い荷物を運んでいる訳じゃないので、普通に100kmとかで無理なく走れるんだよね。
道が良ければ……いやせめて見通しが良ければもうちょい速く走れるんだけどねえ。
一度遊佐さんにも最高速度を体験してもらいたいところではあるが…………おう?
なんかちょい広くて遠くまで視界が効く道にでた。
そろそろ今浜かも知れない。
「この先見渡し良いですね。飛ばしましょうか」
「…………うむ?」
良くみたら遠くに町っぽいのもあるし、あれが今浜かな。
とりあえずその手前までとばしてみようかね。




