53話「おにぎりの具の好みは人それぞれ」
あれから色々酒を買いあさる日々が続き、9日が経った。
買ったの酒は合計9本。あいにく予算の関係で全て容量の少ないタイプではあるが、数はそれなりに集まった。
たぶん大体のお偉いさんには行き渡るんじゃないかな……時代はちょっと違うけど畠山七人衆とかあったみたいだし、今の家臣もたぶんそれぐらいの人数でしょ。
違ったらセール中の日本酒飲み比べセットでも買うとしよう……もっと小さくなるし能登の酒じゃなくなるけど勘弁な。
買ったお酒はとりあえず冷蔵庫に入れておいた。
あとは冷凍の食料品を詰め込めるだけ詰め込む……詰め切れなかったものは今日のご飯としよう。
キャンピングカーがないと冷凍ストッカーは起動しないから、ここから移動すると冷凍ストッカーが止まっちゃうんだよねえ。
これはちょっとうっかりしてたよ。
ま、そんなこともあるさ。
とりあえず今はいつもより豪勢な朝食を楽しむとしよう。
「……こないな? おにぎりでも作っておくかねえ」
朝食どころから昼食まで豪勢になったぞ。
てっきり良いタイミングで遊佐さん来るだろうし……と昼食は多めに作っておいたんだけど、結局一人で食べることになってしまった。
おかずを大量に食べた分、ご飯は余っているので全部おにぎりにして遊佐さん行きだな。
普通サイズのが……20個ぐらいできそう。
具は適当にいれるかねえ。あ、ツナマヨ解禁しちゃおっかなー?
遊佐さんが苦手でも俺が食えば良いしな。あとは俺の好きな具にしよう。
よし、どんどこ握ってくぞー。
「ぷぅ」
……握りおわったけど来ないな?
半分は冷蔵庫行きとして、残りどうするかねえ……冷房効いた車内においとけばこの時期でも傷まないと思うけど。
どうしたもんかねえ……お?
「すまんな少し遅くなってしまった」
噂をすればなんとやらではないが、おにぎりを作り終えた割と丁度良いタイミングで遊佐さんが現れた。
でも何か疲れてそうだね。
何かあったんだろうか……俺が向かうにあたって色々あったとかかね?
「良ければさっそく出発したいが……」
「準備は出来ているのでさっそく行きましょうかー。あ、これ車内で食べてくださいな」
遊佐さんには苦労かけますな。
とりあえず冷房効いた車内でおにぎり食べてお茶でも飲んでゆっくりして貰おうか。
そのあとジェットコースターが待ってるけど。
「それじゃしゅっぱーつ」
隣から聞こえるくぐもった音を聞いて、アクセルをふみこむ。
なんでもう1個食い終わってるんですかねえ?
え、美味いけど何の具? 魚を酸味のあるたれで和えたものだよ。
「ツナマヨっていいます」
「つなぁまよぅ……うむ!」
うむじゃないよ。
思わず吹き出しそうになったじゃん。
まあ……気にいったようでなにより。
でも俺の分は残して欲しいな……そう思い遊佐さんをちらっと視線を向けるが、すでに3個目に突入しているところだった。
てか、木々をなぎ倒している中でよく平気で食えますね……?
酔っても知らないぞっ。
「ん、あれ村かな……遊佐様どうしますー? 森に戻って進みますかそれとも村に入るか」
「…………む?」
全滅したツナマヨに涙していると、木々の間から家や畑がちらほらと見えてきた。
柵もありそうなので、村を通るならどこか入り口を探すしかない。さすがに壊すのはね……ご近所さんですし。
遊佐さんは、小さくなったおにぎりをひょいと口に放り込み、飲み込むとそこで初めて村に気が付いたように視線を動かす。
おにぎりに夢中になりすぎなんよ。
ツナマヨそんなに美味しかったのか……これは戦国時代初のマヨラーを生み出してしまったか?
「ああ、向こうから村に入れるのでな、村を通っていこう。入ったところで一度止めてくれるか? 村の者には数日不在になると伝えておこう」
「はい……このへんかな?」
キャンピングカーを止めると、遊佐さんは下りて集まってきていた村人へのほうに向かう。
俺も一緒に降りるとしようか。村の中をこんなのが通るのに挨拶しないのもね……それに種籾配った時に見た顔がいくつかある。
どこか嬉しそうな表情にも見えるし、歓迎されないってことは無いだろう。
それに、戦国時代の村とか初めて見るしちょっと見てみたい。
まあ、挨拶するだけだろうしあまり見れないかもだけどねえ。




