50話
いっこうに良くなる気配がありませぬな(´・ω・`)
「ちゃんと3石採れた田んぼもあったんですねえ」
「うむ! 新しい手法を行った物は概ね3石前後といったところだな」
水飲ませたら酔いが多少覚めたらしく、各地の収穫の様子を教えてくれた。
もともと他の田んぼに比べて今回協力してくれた農家さんの田んぼは稲の生育が良く、色々と噂にはなっていたんだって。
あの田んぼは神様から特別な種籾を貰って植えたらしい、それに特別な肥料や虫を寄せ付けない神薬も貰ったそうだ。だからあんなに青々と力強い稲が育っているのだ。とか何とか……遊佐さんとか商人さんが噂広めてそうだなこれ。
最初は噂だと聞き流してたんだろうけど、実際に田んぼを見た人の証言なんかもあってこれは本当ぽいぞとなり。いざ収穫の時期になるとあちこちから見物人が集まっていて、その収穫量もあって大分騒ぎになっていた。
遊佐さんたちも駆り出されて整理と警備で大変だったそうな。
んで、その時にちゃっかり他の家臣のところからも人手を借りて、種籾と新しい手法について宣伝しておいたと。
来年以降自分のところも米の収穫増えるなら……と、俺への不信とかも概ね無くなってはいるようだ。
内心はどうか知らんけど、こうも強烈な実績が出てしまった以上は表立って何か言う人はいない。
「……まあ中にはこちらが伝えたことを全部やらずに居た者もおったが、それでも2石は採れていた」
「最初はそんなもんでしょうねえ。それでも2石なら十分採れている気も」
貰った種籾は使ったけど、木酢液とか怪しげな薬とか使うのはちょっと……とか、こんな聞いたこともない肥料使えるか。うちは今までこれでやってるんだ。みたいのとか色々あったんだろう。種籾を受け取った場に全員居たって訳じゃないだろうし、中には代表の人だけ来たところもあったはずだ。
まあ、ちゃんとやっていれば2石どころか3石狙えたんだから、次からはきっちり言われたことを守ってやるんでないかな。
次があるかは知らない。一応フォローしたつもりだけど、この時代の常識とか分らんし……そのへんは遊佐さんとかにお任せよ。
「そうだな……この地は元々米を作るにはあまり向いてなくてな。だが、この手法を広めれば米に困ることもなくなるだろう」
遊佐さんの話を聞いて『あ、そうなんだ?』と思ったが、そういえば棚田とかで有名だったなーと思いなおす。
あれってどうにか米の収穫量を上げようとした苦肉の策だと聞いた覚えがある。
「殿もぜひ礼をと……行けるだろうか?」
あ、やっぱその話忘れてなかったのね。
個人的には忘れてくれると嬉しかったけれど……まあ、豊作だったし行っても問題ないかねえ。
ただ、安全は保障しておきたい。
「ええ、まあなんとか。とりあえず近場まではあれに乗っていくつもりなんですけど」
そういってキャンピングカーを指さすと、遊佐さんの目が一瞬点になった気がした。
「……まさか山を突っ切るつもりではないだろうな?」
「まさかあ。なるべく平地を行きますよ」
「そ、そうか……」
城までそこそこ距離あるし、ずっと山中を走るとか酔いそうですし。
でもねえ何か遊佐さんが疑いの目でみてくるんですよ。
最初に動いているのを見たのが、木を薙ぎ倒しているところだったから仕方ないのかもだけどねえ。
「ならばまず今浜に向かい、そこから七尾に向かう街道を進むと良いだろうな。だが、狭いところもある……ああ、その時は林なりを突っ切れば良いか」
「そゆことです」
聞き覚えのある地名が出てきた。
この時代でも同じだったりするのな。
街道ってぐらいだからそこそこ広いのかなー。確か荷車はほぼ使われてなくて、基本は人か馬が背負って荷物を運ぶんだよね? ってことは人か馬がすれ違うぐらいの幅はあると……ぎりいけるかあ?
行けるってことにしておこう。
いざとなれば遊佐さんの言う通り林なり突っ切れば問題なしだ。
とりあえず偉い人公認で色んなものをなぎ倒して進めることになりそうなので、道中は何とかなりそう。
あと問題になりそうなのはー……あれか。
「それで、城についたらですね。裏口とかあるならそこから入ろうかなと思うんですけど……裏口とかあります?」
例の範囲に人が入ると騒ぎになりそうなので、人口密集地を通るのは避けておきたいのだよね。
なので城が近づいたら裏から回って入れないかなーって。ほら、正面衝突でもしない限りは多少の崖っぽいところも平気で走れますし?
「裏口……門はいくつかあるが、あれで行けるようは道はないぞ? 大手門で止めて歩くしかないと思うが」
「別に道はなくても行けますので」
俺の言葉を聞いて、何いっとんのだこいつ? と首をかしげる遊佐さん。
これは伝わってないのかそれとも……そういや遊佐さんってキャンピングカーが崖みたいなところも走れるの知ってたっけ?
……いや知らんな。見せてないもん。
「ふむん……ちょおっと乗ってみます?」
それならば見せて体験させてあげれば問題なかろうなのだ。
助手席には荷物置いたりしていないので、もう一人乗せるのは問題ない。
「え、いや、それは……さ、さすがに恐れおおくてだな」
「別にそういうの気にしなくて良いんですよ。一度乗ればこいつがどんなところを通れるかわかると思うですよ。だから乗ってみませんか?」
遠慮する遊佐さんに、遠慮は無用だと笑顔を見せた……だと言うのに遊佐さんは俺から距離を取ろうとしている。
俺がじりじりと距離を詰めるも、その分後ろに下がってしまうのだ。
今こそ神様からもらった謎パワーを発揮するときだ。
「あ、いや……ま、まつのだ。引っ張ってはいかんのだやめるのだ」
0から100まで一気に加速し、遊佐さんとの距離を詰め両腕をがしっと捕まえた。
口調がおかしくなった遊佐さんをキャンピングカーまでずりずりと引きずり、助手席に押し込んでみる。
シートベルトを着けたところで諦めたのか遊佐さんは大人しくなった。
最終的に出発しても良いか遊佐さんに確認し、OKでたところで俺はアクセルを思いっきり踏み込み山へと突っ込んでいった。
それから10分後。
「とまあ、こんな感じです。これなら本丸? まで裏から行けるかと……大丈夫です?」
「…………うむ」
生まれたての小鹿のような遊佐さんが爆誕した。




