49話
畑に実った野菜をもぎもぎと収穫していたある日の朝のこと。
「ん……?」
ふいに、以前にも感じた何かが広がったあの感覚がきた。
「広がったねえ……?」
野菜を置いて少し歩いてみると、明らかに以前よりも例の領域が広がっている。
時期的に思い当たるの一つだけ。お米が豊作だったんだろねえ。
種籾を配ったときは半信半疑だったけれど、いざ豊作になったのを目にして考えが変わったとかそんなのかな。
あとは豊作になったと噂でも広がったとか?
まあ何にせよありがたい。
これが来るのを待っていたのだ。
キャンピングカーから離れても安全な距離が増えると、殿様に会いにいったときの安全性が高まる。
あと範囲が狭いと何かあるたびにキャンピングカーを移動しないといけないとかなりそうでねえ。
範囲が広がればその心配も減るというものだ。
とはいえどれだけ範囲が広がったかによる。
1mしか増えていません! だとちょっと困る……とりあずどこまで広がった確認してみよう。
「いや、まじで随分広がったな」
キャンピングカーからおよそ500mほど歩いたところで不安感に襲われた。
半径500mって相当だぞ。
前回は50mの謎ゾーンが追加されて、予算が500円アップだったよな。
「今回は謎ゾーンがさらに250m追加されている……ってことは、予算が2500円アップ!?」
倍額になるのはでかいぞ。
今の倍買えちゃうんでしょ……お金がなくて諦めていたあんなものやこんなものが買えてしまうだと……?
こうしちゃいられん。はよ戻って確認しないと!
「500円しか上がってないじゃん!」
現実は非常である。
500円かあ……鮭フレークのでか瓶でも買うかねえ。
「まあ、今はお金よりも範囲広がるほうが嬉しいから……お金はおまけだから」
うそです。
やっぱお金もほしい……普段の生活は困らなくなってきたけれど、いざ何かが大量に必要! って場面でどうにもならんのがつらい。
信者? ぽいものを増やしていけばいずれはもっと増えるんだろうけど……先は長いねえ。
「とりあえず豊作だったってことだよな。よかったよかった」
豊作イコール信者が増える! ってことだからね。
来年は今年とれた米を種籾に回せるから、肥料と農薬系をメインで買い集めておこう。
あ、養鶏を推奨するのも忘れずにやらんと……とりあえず朝食にするか。
せっかく採れたての野菜なんだから鮮度落ちる前にくわにゃ。
「ナスうまあい」
今日はおナスがいっぱい採れたんだよね。
とりあえず焼きナスにしてみたけどくそ美味いなこれ。
ちょっとほかの料理方法も試してみよう。
「うますぎる。俺って料理の天才なのでは……?」
トマトとチーズでナスのグラタンぽいの作ってみた。
朝からヘビーだけど美味しい。
もうちょっと気温下がってからのほうが美味しいんだろうけど……そっちは秋にとれるナスに期待だな。
一気に採れると困るから、植える時期ずらして正解だねえ。
「煮ても焼いても美味いし、漬物とか考えれば生でもいける。ナスって優秀」
煮びたしとか、漬物は……ちょっと時間かかるけど、きゅうりとかと一緒に山形のだしだっけ? あれにしてご飯にかけて食べるとおいしい。
ほんと優秀……子供のころは苦手だったんだけどねえ。
年取ると味覚が変わるのか、割と好きな部類の野菜になった。
「もちろん揚げても美味しい」
そして個人的に一番好きなのはナスの天ぷらだ。
そのまま天つゆつけて食べてよし、他の天ぷらと一緒に丼にするもよし。
「天ぷらだな。天丼にするか」
せっかく採れたなんだ、一番好きな食い方で食うべきだろう。
さすがに朝ごはんとしてはヘビーすぎるので、朝昼兼用かなー。
「何やらうまそうなのを食ってるな」
「美味しいですよ?」
天丼2杯目突入したところで遊佐さんがきた。
お供の人は……居ないね。おいてきた?。
てか遊佐さん微妙に酒臭いぞ。
昼間っからお酒飲むなんて悪い大人だ。
まあ、なんで飲んでるかは何となくわかるけどねえ。
「豊作だったみたいですね」
「……うむ! 笑えるぐらい採れたぞ!」
相変わらずためらいなく食べるねえ。
天丼もう一つ作って渡したら、ノータイムで食べやがりましたよ。この人。
んで、やっぱ豊作だったと。
昼間から酒を飲んでいるのは祝い酒とかそんなんでないかなー。たぶん。
そして酔った勢いのままここにご飯を食べにきたと……いや、さすがに何かほかに用事があるはずだけどね?
こう、天丼をがつがつ食べている姿を見ると、本当に食べに来ただけなんじゃなかろうと不安にですね……?
たぶん、お米がどれだけ採れたとか。
来年はもっと広げるぞーとか。
鶏糞確保したいから養鶏を推奨しようとか。
殿様に会いにいこうぜーとか。
色々あるはずなんだ。
「……もう一杯食べます?」
「うむ!」
……色々と。
どうしよう。
酔っぱらってぽんこつになってないかこの人。
とりあえず冷えた水でも飲ませとこ……。




