47話
「そんなことになってたんですねえ」
唸っている遊佐さんの丼に追い肉をして色々と話を聞きだした。
曰く神使を語る罰当たり者だとか。高価なものを遊佐さんに渡し取り入ろうとしている、最近では殿にまで送りものをして一体何を企んでいるとか。
なぜ私には何も送ってこないのだ。ご近所付き合いがどうのこうの。
米は確かに旨かったが、本当にそんなに収穫できるとは信じられない。騙されているに違いない。
将軍より下賜された刀を渡すなど、殿は何を考えているのか。
などなど。
色々とあったらしいよ。
個人的には最後のやつがかなり驚いた。
この刀って将軍からもらったやつなんかい……鏡のお礼にそんな大事そうなもの貰って良かったんだろうか。
……あ、もしかして鏡を将軍に送ったとか? そのお礼に下賜されて、俺にも回ってきたと。
それでもやっぱそんな刀渡しちゃうのはどうかと思うけども。
とりあえず遊佐さんの状況は把握した。
ようは怪しいやつ。遊佐さんにも贈り物したんだから俺にもよこせよ。将軍の刀を貰うとか妬ましい。
そんな感じで思われていると……どうも遊佐さん、殿様ラインと他家臣の間で考えに隔たりがあるようだ。
遊佐さんは直にあってるけど、殿様はなんかすごいね? せめて怪しんだりしそうなものだけど。
好意的に捉えられているのであれば、ぜひそのままでいて欲しいね。
というわけで、他家臣をちょっと懐柔する方向で行こうと思います。
収穫まで待てないかなーって思ったけど、今の感じで秋まで半年近く待つのはちょっとね?
あ、ちなみに焼肉丼は話を聞いている間にいつの間にか食い終わってたとだけ。
あまり食ってる姿みてないんだけどねえ?
「遊佐様。一つ教えて頂きたいことが」
懐柔するなら何か送るのが基本かなって。
相手の好みとか地雷とかわからんのでここは遊佐さんに教えてもらうとしよう。
贈り物でもしようかなーって言えばきっと教えてくれるだろう。
「なるほどなるほど……それではですね。さすがにあの鏡に対して刀を貰うのは申し訳ないので」
遊佐さんから大体の話を聞いた俺は、すっと席を立つと冷凍ストッカーへと向かう。
家臣のほとんどが、どうやら甘いものに対して興味を示していたこと。そして銭などは内心はともかくあまり喜ばないだろうということも分かった。
砂糖とかハチミツ羨ましかったんだろうかね。
そんならかすてーらでも……と考えたが、割と交易が盛んな土地らしいので食べたことがあるかも知れない。
なので渡すものは別のものだ。
「これをお土産に持って行って貰おうと思います」
「冷たい!?」
ごそごそと冷凍ストッカーから引っ張り出したものを、ひょいと遊佐さんの手に乗っける。
そして躊躇うことなく袋を開ける遊佐さん……少しは躊躇え。
「おお! これは氷菓子か……うまい!」
そして何の躊躇いもなく食うでない。
いや、ほんと度胸がすごいな!
「お茶を凍らせたものに、豆を甘く煮たものか。実によく合ってうまい」
ようは宇治金時のアイスだね。
冷凍ストッカーの空きを埋めようと、ちょいと高級なのを買っておいたのだ。
ただ時期的なものをあって、食わずにそのまま放置してて……今日はまあ暖かいからいけるんじゃね? ってことで引っ張りだしてみた。
こいつを氷を満載したクーラーボックスにいれておけば、町までは溶けずに持つと思う。
何せ普通の冷凍庫より大分温度ひっくいし。かっちこちだよかっちこち。
いやまて、よくそんなにばくばく食えるな。
歯が折れても知らないぞ。
「贅沢をいうのであれば、暑い時期であればもっと美味しかっただろうな」
あっさり一つ食い終わった遊佐さんのセリフがこれである。
まあ、確かにそれはそう。
「ですねー。でもさすがに夏だと持ち帰るまでに溶けちゃうかな……まあ、数は結構ありますので、殿様以外にも渡してくださいな」
「うむ! しっかり渡しておこう! これに入れておけば解けないのだな?」
「半日は持ちますが……」
一応宇治金時以外にも練乳入りのみぞれアイスとか、そのへんもいくつか入れておいた。
1個ずつ配ったとしたら、30人ぐらいには渡るんでないかな?
で、個数わかっているのに何で疑問形かというとだ。
「……途中で味見しようとしたりしないでくださいね? あまり開け閉めすると溶けちゃうかもなので」
「そ、そそそんなことせぬ!」
ほんとかなあ??




