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転生先は戦国時代でした。ただそろきゃんして、おいしくウィンナー食べたいだけだったのに  作者: 熊ごろう


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44話「種籾くばるよ!」


そう確認するように頷いた遊佐さんの顔は何時になく真剣であった。

自然とさきほどまで騒がしかった広場に静けさが広まる。


そんな中、俺は温めた甘酒をコップに入れて……入れたのは良いがどこに置こうかとちょっと頭を悩ましていた。


そしてその悩みはすぐに解決する。

遊佐さんが俺の手からコップをとり、口に運んだのである。

そして一瞬咽そうになるのを俺は見逃さなかった。


口を湿らせるために飲んだんだろうと思うけど、実は今回の甘酒は俺好みになるよう少しだけ前より度数が高めなのだ。

心構えなしに飲んだらそら咽るよねえ。


ま、それはさておき。

種籾渡して遊佐さんが何かためになりそうな事をいって解散な流れだよな。

その前に甘酒をついでおかないと……って、その前に置く場所確保しないとだ。


何かちょうど良い台か何かあるかなー。



「……さて、今回渡した種籾は御子神様に祈祷いただいた特別なものである。病気に強く、多く採れ、味も良い、本当に特別なものだ。故に……決してよそに流すようなまねはするな」


……遊佐さんのそんな厳しい顔で冷たい声を出すの初めてみた。

でもね。俺が後ろから余ってた岩を引きずって出てきたもんで、色々そっちに持っていかれて台無しになってそう。

みんなの視線がこっちに集まってるし……ごめんちょ。


「うむ。……これも前もって伝えてはいるが、この種籾から採れた米の年貢は五公五民であるが、去年より収穫量が増えた分は無税とする」


遊佐さんは俺のことはスルーして、話を続けていく。

無税と聞いた途端ざわめきが大きくなる。まさか本当に……? って感じだろうか。


……去年より増えた分なので、来年以降は普通に払えよ? ってことだろうけど、それでもなかなか太っ腹な気がする。

準備とか色々持ち出しもあるだろうに、遊佐さんというか能登畠山ってお金持ちなんだろうかねえ。



「その代わりといっては何だが、皆も知っての通り少し米の収穫量を増やすため普段と違う作業をやって貰わねばならん。それを来年以降新たにこの種籾を手にしたものへ伝えるのをお願いしたいのだ」


ほーん。

確かに全農家に遊佐さん達がやり方とか伝えるのは大変だし、効率悪いもんな。

同じ農家でしかも収穫量が爆増した実績ありとなれば、ちゃんと話は聞いて実践はしてくれるだろう……まあ、全員がってのは難しいと思うけど。


それも言われた通りにやった農家さんとそうじゃない農家さんで収穫量に差が出れば、自然ときっちりやるようになるんでないかな。数年で能登畠山の領地全体に広がる可能性だってある。

そしたらお米食い放題だよ食い放題。主食に余裕ができれば次はおかずに目が向くだろうから、そこで鶏の畜産推奨して肥料もとれるし卵もお肉もとれると……夢が広がるね。


それはそうと全員分の甘酒注いじゃったんだけど、いつ渡そうねこれ。

とりあえず遊佐さんにこっち向けこっちと念を送ってみようか。今ならいけそうな気がしなくもない。



…………振り向かないので手で扇いで香りを届けたらこっち向いたよ。


「おお、酒か。これは忝い……御子神様が我らを気遣い温かい酒を用意してくださった。感謝して飲むのだぞ」


そうコップを受け取って皆に話す遊佐さんだが……あなたさっき飲んだよね? まあ別に良いのだけど。それよりそんな風に紹介されると恥ずかしいのだが……お酒渡したらなんか拝まれたし。


とりあえず全員に配って……こっちにまだ注目しているし、ついでだから注意事項を伝えておくか。


「皆様。本日はお集まり頂き感謝します。この種籾について注意したい事がありますので、酒を飲んだままで良いので聞いてください」


そう言って甘酒を一口。

うん、おいしい。


……皆も俺と遊佐さんが飲んでいるのをみて、飲み始めている。

ぐいぐい進んでいるし、この時代の人にとっても美味しい甘酒なんだろうねえ。


さてさて、みんなの前で話すのはそんなに得意ではないのだけど、大事なことなので言わないとだ。


「遊佐様より皆さんにお渡した種籾は特別なものです。病の元を退治するよう特別な処置を施しました」


消毒済みって言っても伝わるかどうか分からんので、処置を施したと言っておこう。


熱いお湯で消毒する方法もあるんだけど、そっちはうまくいくか不安なので来年以降かな。

農家の人にやって貰うつもりである。


「育ち、稲穂が垂れるまでその効力は続きます……それゆえにそのまま食べるのには向いておりません」


んで、お湯で消毒するのと違って薬で消毒する場合、消毒済みの種籾をうっかり食べてしまうと場合によっちゃひどい目にあうんだよねえ。


食うなと警告しておかないと、中にはもらった種籾食べちゃう人もいるだろうからさ。



「病を退治する力が人にも向かうためです。なので間違っても食べないでくださいね」


「食べると、どうなるのでしょう……?」


「よほど体が弱っていなければ死ぬことはないでしょうが……激しい腹痛、吐き気、頭痛など様々な症状が出ます」


多少間違った情報はあるかもだけど、とりあえず脅してでも食わないようにしないとだ。

子供が病気だ……そうだ、この特別な米を食わせれば! とか無いと思うけど、あったらまじで困る。


酒で赤くなった顔が青くなっているので、たぶん言いつけは守ってくれる……と思う。

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