40話「水車できた」
「糠は割と残っているので、しっかり目に研いだほうが良さそうですね」
「うむ!」
実は前日にこっそり精米しておいたお米があったりする。
お米って一晩とか放置しておかないと精米出来ないんだよね……そして一晩かけても結構糠が残っていたりする。
なので何時もは適当にすませておいた米研ぎをしっかりやることにした。
とはいえやり過ぎてしまうと味が抜けてしまったり、米が割れたりしてしまうので様子を見ながら慎重に、それでいて手早く行う必要がある。
そんな大事な作業をほかの人に任せる訳にはいかん。ということで俺と……なぜか遊佐さんの二人で絶賛米とぎ中である。
どうも遊佐さんは大量のお米を炊くのが楽しいらしいんだよね。
俺が渡したお米も全部自分で炊いているそうな。
なんだかんだで色々世話になっているし、そのうち専用の土鍋とかプレゼントしようかねえ。
高いから中古品になっちゃうかもだけど。
「それじゃ、皆さんお腹が空いているでしょうし、細かい話はあとでするとしてまずは頂ましょうか」
なんだかんだでお米は無事炊けたよ。
本当なら水車小屋の完成を記念して云々と偉い人がスピーチするんだろうけど、炊き立てのご飯を前にそんなことをしたら暴動が起きかねない。主に遊佐さんとかさ。
てかスピーチする側が暴動起こすってどういうこっちゃ。
まあ、とりあえずお米をみんなによそう。
飯盒の数に限りがあるので、今回は一人あたり2合ぶん炊いてある。
ご飯のお供系を大量に用意してあるので、おそらく一瞬で無くなるんじゃないかな。
なのでお代わり分はすぐ炊かないとだ。
「よっし、冷めないうちに食べましょうか」
「うむ!」
お代わり分を火にかけたとろで俺たちもご飯を頂く。
まずはおかずなしでご飯のみ……うん。
「おいしい」
「うむ!」
食感がいつものよりモチモチしてるかな? あと味も濃い気がする……ちょっと研ぎすぎたかも知れんなあ。
糠臭いよりは良いとは思うけれど、今後研究が必要そうだ。
その辺の課題はあるけれど、精米自体はしっかり成功したと言えるだろう。
周りの反応みると、おかずをちょっぴりだけとってそれだけでご飯をガツガツ食っている様子。
ご飯自体が美味しいからの反応だと思う。
「煮物うまー」
「うむ!」
ちょっと濃い目の味付けで鶏と根菜類、しいたけとかの煮物もつくってみたんだよね。
お肉柔らかじゅーしー。根菜類味がシミシミで実に素晴らしくご飯にあう。
2合とかまじで瞬殺だよこれ。
「み、御子神様……これは、もしや椎茸では?」
俺たちが美味そうに食っているのをみて、同じく煮物に手を出した職人の三郎さんが震える声でそんなことをきいてきた。
「椎茸ですよ。煮物にすると味がしみておいしいんですよねー」
「うむ!」
しいたけおいしいよねーともしゃぱくもぐと食べてみせると、三郎さんは……あ、そっすねみたいな感じで軽く首を傾げながら離れていった。
そういや椎茸って高級品だっけか?
現代の天然松茸みたいな感じなのかな……やっすいから結構大量に鍋にぶち込んであるねえ!
ちなみに遊佐さんは椎茸だろうが何だろうがためらわず食っている模様。
さすがだぜ。
あとさっきから語彙力失われているけど大丈夫?
「ふぅ……やはりこの米はうまいな。うまいがこれを食うと明日から辛くなるのが難点だ」
急に取り戻すのやめてもらっていいですかねえ……?
明日から辛くなるとか言われても、さすがに今は渡す余裕はないぞい。
「でもまあ今年はほら、同じコメが採れますし……それまでの辛抱と思えばなんとか?」
「うむ。そうであったな! 量も上手くいけば三石は狙えるだろうし、秋になればうまい米がいくらでも食えるな!」
「遊佐さん一人で食い尽くしそう」
……冗談で言ったけど本当に食いそうだな??
450kgのお米でしょ? 一日あたり1kgちょい……遊佐さんなら余裕で食えそう。
やべえな、一人で三石消費しちゃうよ。
あと遊佐さんなんか声でかいな。
周りの人がこっちの会話に注目してるじゃん……って、それが目的か?
……うん。人足さんの一人がこちらに近寄ってきた。
何か聞きたそうな様子。
「あんの、御子神様、遊佐様。今の話本当だが?」
「ええ、特別な種籾と肥料は私が用意を、あと特殊な育成方法は遊佐様が皆さんに伝えます。それらをきっちり活用すれば3石はいけるかと思いますよ」
俺の言葉に回りで聞き耳を立てていた人たちがざわつき始める。
このあたりの情報はまだ言ってなかったんだろうかね?
実際、やり方をきっちり守ればある程度収穫は増えるはず。
そのうち一反あたり三石の収穫も達成できると思うけど、今年からはじめていきなり三石いけるかというと……実際には難しいだろうなあ。
「もちろん失敗することもあるかと思います。なぜ失敗したか、どこがダメだったのか。逆に成功した場合はどこが良かったのか、失敗した時との差は何か。こういったことを記録にとり改善していけば」
長くしゃべってたら喉乾いてきた。
とりあえず水を一口飲んでっと。
「……いずれはこの地で一反あたり三石の収穫が当たり前の事になりますよ。そのためには皆さんの協力が必要です。一緒にがんばりましょう」
そういって笑顔で締めくくると、あちこちからやるぜ俺はやるぜとやる気のある声があがる。
うむ。この様子ならそのうち三石達成も出来るだろう。
ぜひたくさん作って俺のお米も確保してほしいねえ。
そんな事を考えながら笑顔を絶やさずみんなを見ていたが……ふいに妙な感覚を覚えた。
「……?」
あたりを見渡すが、何かが起きた訳ではなさそう。
なんだろうあの感覚は……ふわっとしたような、何かが広がったような……分からんな。
とりあえず今は周りに人がいるし、あとで考えることにしよう。




