30話
「んお!? ……っ!」
「……米が! うま、すぎる」
まわりが騒がしいが、無視してご飯に集中しよう。
まずは炊き込みご飯を……見た目は普通の炊き込みご飯だ。醤油ベースの味付けなので全体的に薄茶色である。
匂いは良い。醤油の香りに雉の出汁の香り。
「うま」
一口食べたら思わず声がでた。
ちょっとまって予想より大分美味しい。
さっき味見したから分かってはいたけれど、めっちゃ鳥の味が濃い……身は若干固めだけど、細かくしているので問題はない。
それよりも肉のうまみを米が大分吸っているにも関わらず、肉の味が濃い……どうなっとんのだ。
醤油の旨味、雉の旨味と根菜類のうまみが合わさってやばいことになっている。
きのこ類を入れても良かったかも知れない……ちょっとスープを飲んで落ち着こう。
「んぉぉ……」
あかん、スープも出汁がダイレクトにきてやばい。
お肉は煮込んだからかほろほろ崩れるね。大根いれてみたけど、出汁を吸いまくっててまじで絶品だ。
周りをみればすでにお代わりをしているのがちらほら居る。
大量に作ったけどすぐなくなりそうだ……。
「……」
炊き込みご飯にスープと、どちらもすばらしくおいしかった。
残るはから揚げだが……すこしニンニクをいれたからか、さっきから暴力的に美味しそうな匂いがしているんだよね。
まあ、まわりの反応を見るにおいしいのは確実なんだけど……。
「ふふっ」
うまくて笑えてきた。
揚げたて、衣はぱりぱりのさくさく。肉汁があふれ、肉のうま味と同時に香りが鼻を抜ける。
から揚げに求めるものが全部そろってそうだ。
お酒がほしい。
骨付きにしたのも正解だね。
ちょっと食いにくいけど、骨から旨味が出てそうな気がするねえ。
鶏肉より脂は少なめかな? でもその分肉の味が濃い。
うーむ……雉、良いね。ブランド鳥とかと遜色ないレベルでうまい。
飼って増やせないかなー……ああ、でもこいつら飛ぶもんなあ。
ちょっと飼うのは難しそうだ。
お酒がほしい。
「御子神様。この料理は何というので?」
「それはから揚げですねえ」
「唐揚げ……なるほど大陸の料理でしたか! いや、実にうまい」
地面に漢字で『唐揚げ』って書いたら、中華料理って分かったらしい。
大陸って中国のことだよね? この時代だと明だったかな。
もしかするともう伝わっていたりするのだろうか。
現代のそれとは違う形だろうし、ちょっと食べてみたくはあるねえ。
てか、みんな食べるの早いな。
遊佐さんなんてもうから揚げ残ってないじゃん……護衛の人のから揚げ狙うんじゃありません。
「ところで調理の際に使っていた、その黒い液体は何なのですかな? 垂れ味噌とはまた違うようですが……?」
「醤油ですね……ちょっと舐めてみます?」
垂れ……味噌? 俺の知らない謎調味料の話が出てきたぞ。
名前からして味噌から何か垂らすってことだよな。布で絞って水分出すとか? 醤油の濃いやつが出来そうだ。
とりあえず醤油を赤井さんに進めようとしたら……なぜか遊佐さんが手を出してきたので、手の甲に1滴たらしておく。
……気に入ったらしくまた手を出してきたので、小皿にいれて渡してあげたよ。
あまり舐めすぎると体に悪いんだけどねえ。
「味噌の表面にできる味噌だまりをわざと作る感じですねー」
「なるほどなるほど」
「確かに見た目は近いですな」
みんな醤油をなめては『味が味噌とはちがう?』とか『やはり垂れ味噌ではない』とか色々話し合っている。
味自体はだいぶ気にいったらしいが、作り方教えたら作ってくれたりするんだろうか。
醤油があれば味付けの幅が広がるし、良いと思うんだけど……はたしてこの戦国時代にそんな味付けにこだわる余裕があるのかどうかは分からない。
まあ、ここにいる人たちは余裕ありそうだけどね。
お米の収穫量増やして、みんなに余裕ができれば自然と広まっていくとは思う。
なのでみんなにはぜひとも頑張ってもらいたい。
「これは良いですな」
「うむ! いくらでも食えそうだ」
みんなが絶賛しながら食べているのは醤油を塗って焼いただけのおにぎりだ。
お米はすっからかんになったよ。
なんかね醤油舐めていたら小腹が空いてきたとか言い出すもんだから、おかずはないけどお米炊いて焼きおにぎりぐらいなら……とうっかり言ってしまったもんで、作ることになってしまった。
まあ美味しいから良いけど。醤油の宣伝にもなるし……醤油塗って焼いただけなのにくっそ旨いからな。
あとおにぎりは一人一個しかありませんよ?
なんであのでかいおにぎりが3口でなくなるの……。
「それじゃ、醬油づくり頑張ってくださいね」
「ええ、ええ。楽しみにしていてくださいな」
食い終わるころにはみんな醤油を気にいってくれたようで、簡単に作り方を伝えておいた。
味噌を作る職人さんに声をかけて試しに作ってみるんだそうな。
ただちょうど味噌を仕込む時期でもあるそうで、大豆はそちらに回すので量の確保は難しいらしい。それでもまずは少量試してみる……とのこと。
完成したらちょっと分けて貰っちゃおう。
どんな味になるのか楽しみだ。
さて、用事は済んだのでそろそろ帰る時間だ。
みんな身支度をはじめて、俺は食器とかの洗い物をしている。
洗い終わったらみんなを見送って、お風呂の準備でもするかな…………あ、そうだ。
「遊佐様」
「む? いかがした」
一つ忘れるところだった。
「これ、雉のお礼です。こちらは手伝ってくれた方々に渡す機会があれば……」
「うむ! 承知した。 なに、帰りすがらに渡しておこう」
あれだけの量を貰ってしまったからね。
お礼としては足りない気がするが、飴玉を遊佐さんに預けておいた。
こうやってお礼を渡しておけば悪いことにはならんだろうとか、また雉食べたいなー……という若干の下心もあるが。
まあ、あれだ。ご近所付き合いって大事だからねえ?




