29話「国鳥くっていいの……?」
「ちなみに代金はいかほどになりますか? 砂糖や蜂蜜で得たお金で賄えると良いのですが」
まじで相場が分からんのよ。
職人さんで、それでいて腕も良い人を紹介してくれるだろうから結構な高給取りなのでは? と思うが……品物の礼もお金が良いのか、それともお米とかが良いのとかさっぱりだ。
とりあえずさっき入手した銀塊で支払えるならそれでよし。
足らなければ前回もらった銭を使うかねえ。
……お米ほしいと言われたらどうしようね? 割とそれが一番困るかもしれない。
お酒あたりで勘弁してくれないかなあ。
「今回の取引分で十分でございますよ。むしろかなり多いかと」
「ええ、もし今回の取引分をすべて使うのであれば、相当立派なものが出来るでしょうなあ」
「そうですか! ……では、すべて使おうと思います。できれば長く使いたいのでしっかりした物が良いですね」
良かった。
もらった銀塊で足りるのね……てか冷静になって考えるとこれ絶対1kgもないよな。
銀と聞いて重く感じちゃったけど……うーん? 50gぐらいかねえ?
がばがば過ぎるだろ俺の感覚。
しかしあれだな。
元手がほとんど掛かってないのに、職人さんへ十分な支払いできるって凄いよね。
凄すぎてちょっと申し訳ない感がね……せめて作業している間の食事は出すことにしよう。
とりあえず銀塊を赤井さん緑谷さんに渡して後はよろしくねーとお願いしていると、何やら人が近づいてくる気配がする。
初めてかも知れん、人が近づいてくることに気が付いたの。
「おや、遊佐様が来られたようですな」
別に俺の感覚がするどいなんて事はなく、赤井さんとかも気付いていたらしい。
時刻は11時ぐらい。これから昼の準備して……人数も多いしちょうど12時ぐらいにご飯になるだろう。
見事に飯時にきたねえ。
「おー……手に何かもっていますね?」
「……そうですなあ」
遠目に見えた遊佐さんと護衛さんだけど、何やら派手な物体を両手に携えてこちらに向かってきているんだよね。
なんだろう……生き物っぽいけど、なんか緑っぽい色しているんだよねえ。
「やあ、御子神殿! 手土産だ、よければ使って欲しい!」
俺たちに合流した遊佐さんが、ものすっごい笑顔で差し出してきたのはそこそこの大きさの鳥だった。
この色、羽の模様どこかで見たことがある。というか思い当たるのは1羽しかいない。
これ雉だ。
「ありがとうございます。すごいですね7羽も捕れたなんて」
とりあえず受け取ってしまったけど、これ食えってことだよね……?
雉って食えるんだろうか。
「うむ。近隣の者にも協力してもらってな。せっかくだから人数分捕ってきたのだ!」
「すごいですね……近隣の方にお礼しないと」
人数分……なるほど、たしかに一人一羽だねえ。
しかし、やっぱ食べるようだったか……国鳥って食べていいのだろうか?
「それでは調理しますので……そうですね遊佐様。少し調理に時間掛かると思いますので、お二人に水車の件を話しておいて頂けますか?」
「うむ! 楽しみにしておるぞ!」
こっそり調べたら戦国時代だと割と食用としてはポピュラーな鳥だったらしい。
あと国鳥になったの割と現代になってからだったね。
てか現代でも雉は普通に食われてたようだ……しかも美味しいとか。
「羽奇麗だなー……むしっちゃうけど」
羽の一部は釣りの仕掛けに使うそうだけど、ぶっちゃけどの羽がそうなのか分からない。
なので矢の材料としても使うそうなので、羽は全部遊佐さんにあげちゃおうと思う。
とりあえず羽をむしろう。
7羽もいるから結構大変だ。
羽をむしったあとはある程度の部位で切り分ける。
せせり、むね、もも、手羽、ササミ。あとはハツは食えそうなのでハツも。
レバーはちょっと怖いので今回は無し。
「うーん……炊き込みご飯とスープにから揚げってとこかなあ」
雉料理なんて作ったことがないので、ネットで調べてみたよ。
するとまあ色々出てくること……でも予算が限られているので、自ずと作るのも決まってくる。
「ガラが良い出汁がとれるとな」
雉の出汁はジビエの中でもかなり上品でおいしいらしい。
とった出汁で炊き込みご飯とスープを作ろうかな。
ただちょっと出汁を取るのに時間が掛かるらしいが……みんな我慢できるかな。
ちらっとみた感じはお米の話に集中してそうなので大丈夫かな。
でもなるべく早く作るとしよう。
出汁を取りつつ色々下拵えしないと。
「……うまっ」
鶏ガラを煮込んで取れた出汁にちょっと塩を入れて味見してみたんだけど、めっちゃ良い出汁出てる。
旨味も濃くて上品な味がする……国鳥こんな美味しくていいのか?
この出汁で炊き込みご飯とスープとか美味しくなる要素しかないぞ。
あ、でもちょっとお肉は固いらしいので、スープの煮込み時間を長くして……炊き込みご飯のお肉は少し細かくしておこうか。
から揚げはお肉を細かくする訳にはいかないので、包丁で切れ目を適当にいれておこう。
骨付きのままが美味しいらしいので、いったんブツ切りにして包丁ぷすぷすさして。あとはボールにいれて下味つけてっと……しっかし量が多いな!
肉の半分以上がから揚げにまわったから、2kg……3kg近くあるんじゃなかろうか。
「油をそんなに……なんて贅沢な」
肉が多いので油をけちる訳にもいかず、鍋にどばどばと油を入れていると緑谷さんがその光景をみて呆然としていた。
割と油は貴重らしいからまあそうなるよね。
鶏肉を広めるなら、美味しいと知って貰わないとはじまらない。
から揚げはその有力候補ではあるが、油がネックだよねえ……油をいっぱい取る方法とか後で調べておくか。
まあ、それよりも。
「では、冷めないうちにいただきましょうか。あ、ご飯のお代わりは炊けるまでお待ちくださいね」
結局2時間近く調理に時間が掛かってしまった。
みんなもう我慢の限界だろうし、俺もお腹が空いている。
難しい話はあとにしてとりあえず今は雉を味わうとしよう。




