28話
「それで、お二人が手代と言うことで良かったでしょうか?」
とりあえず全員分の椅子と茶を用意し、席に着いたところで気になっていたことをたずねてみた。
以前言っていた通り、おそらくこの初めて見る二人が手代ってことなんだろうけど。
「ええ、ええ。こちらがうちの手代で為吉」
「そして弥七です」
「よろしくお願いしますね」
やはりそうか。
為吉さんが赤井さんのところで、弥七さんが緑谷さんね。
うん、とりあえず覚えた。でも次会うときにはどっちがどっちだかごっちゃになっているかも。その時は笑って許してほしい。
ほら、神使だし。人間の区別とかつかないんだよきっと。
まあ、実際には二人とも結構特徴があるので、区別つかないなんてことは無いだろうけど。記憶力的な問題だ。
ちなみに為吉さんを一言で表すならヤのつく職業の方かな。
なんで顔とか腕に刀傷ぽいのがあるんでしょうねえ??
弥七さんは……辻斬りとかしてそう。
糸目だし、笑みが怪しいし。
なんてひどいこと言っているけど、ここに居る時点で悪い人達ではないのは確かだ。
そして取引はあっさり終わったので省略。
もらった代金……今回はなんと銀塊だった! 1kgぐらいあるんじゃないかなこれ……てか銀貨とかまだないんだっけか? 甲州金? とかあるぐらいだから、銀貨もあって良さそうな物だけど。
まあ、ありがたく頂戴しよう。
そのうち銀細工でも作ってみるかねえ。
「ところでみなさん、遊佐様から米作りの件について何か聞いていますか?」
取引が終わったのでさあお帰りください。
と言うのもあれなので、この前遊佐さんに話したお米作りについて聞いてみることにした。
「なるほど。収穫量を増やす方法が書かれた書物ですか……確かにお話のように収穫量が増えるのであれば我々も知っておきたいところですな。場合によってはもっと田を広げる計画をせねばなりませぬ」
「詳しい資料などは遊佐様にお渡ししていますので、後で見せてもらってくださいな」
どうやらまだ話は行ってないようなのでざっくり伝えておいた。
田んぼが増えるのはうれしいけど、作りすぎると値崩れしそうでそれが怖いね。
なので急激に広まるのも困りものだ。
その辺の難しい調整は偉い人に任せるけど。
「実は用事を済ませてから向かうとのことで、昼前には着くと仰っていましたが……」
「なるほど、そうでしたか」
昼前……つまり飯を食いにくると言うことだね!
焼きそばで良いなら出すけどさ、一人分しか買ってないから追加で購入しないと。
かさましでもやしも入れちゃおうか。
まあ、遊佐さんのお昼ご飯はさておき。
「それで、一つご相談がありまして」
今のうちにお願いしてしまおう。
次来るのはまた一月後とかになってしまうからねえ。
「衝立か、小さな小屋と……これを囲う箱ですか」
湯舟を囲う壁と、冷凍ストッカー……というかコンプレッサーの消音用の箱が欲しいので、作れる職人さんを紹介してほしいとお願いしたのだ。
ただ一度実物見ないことには……と言われたので、とりあえずコンプレッサーから見せてみたのだけど、見事にみんなの頭にハテナマークが浮かんでいるのがわかる。
戦国時代にこんなものが存在している訳もなく、知らなきゃただの金属の塊ぐらいにしか見えんよね。
「……あの、これは一体何に使うのでしょうか?」
「これは冷たい空気をだすからくりで……実際に動かしてみましょうか。かなり音が大きいので気を付けてくださいね」
みんなが首をかしげる中、勇気をだして俺に話かけてきたのは……えっと、どっちだ。目が細いから弥七さんだな。
とにかくその弥七さんに質問されたので、一言皆に注意してからコンプレッサーのスイッチを入れてみる。
「そろそろかな?」
冷凍ストッカーとのコネクタは一旦外して、クーラー部分を手に取り皆のほうへと持っていくが……全員後ずさりしやがりましたよ?
まあ、良いけどさ……とりあえず空気出してっと。
「こちらに手をかざして見てください。あ、あまり近づけすぎないように」
圧縮空気をクーラーに流すと片方からは氷点下の冷風が、もう片方からは温風がでる。
明らかに外気より低いので、これが冷風を出しているということは分かるだろう。あと温風もね。
「!?」
「つ、冷たい……こっちは暖かい!?」
とりあえず手代の二人を手招きして風へ触れてもらった。
良い反応ありがとうね。ところであまり冷風に触れすぎると凍傷になったりしない……? 大丈夫かな。
「ここで風を起こし、ここで冷たい風と暖かい風に分けています。野菜の保存用に用意しましたが、なにせ音が大きくてですね」
何せコンプレッサー止めないとまともに会話できないからね。
この会話も最初動かしたまま話して、どうにも伝わらなくてコンプレッサーとめて話しているぐらいだ。
「それで囲いを……畏まりました。手前どもにも伝手がありますので、幾人か紹介させて頂きます」
「ありがとうございます。……次はここです」
話しながら歩いて向かった先は川のそばに置いてある湯舟……もといボートだ。
「これを隠すような衝立か小屋が欲しいのです」
今度も全員の頭にハテナマークが浮かぶ。
まあ見た目は船に見える……ぎり見えるとは思うけど、材質が謎だし。なにこの箱って感じなんじゃなかろうか。
とりあえず何に使っているか伝えればなんで隠したいのか理解はして貰えるだろう。
「一人で生活していますし無くても構わないのですが、やはり落ち着かなくてですね」
船をぺしぺし叩きながら説明し、すっと視線をみんなに向けると……赤面している人がいた。なんでだよ。
「……」
じーっと赤面している人をみると、さっと顔をそむけて……ここでふと俺の脳裏に衆道の二文字がよぎる。
「なので小屋か衝立が欲しいのです」
気が付かなかったことにしよう。
戦国時代こわい。




