23話
「あ、遊佐様。来ていたんですね」
「ああ、米作りについて話しておきたいとおこうと思ってな」
何事もなかったかのように笑顔で振り返り、遊佐さんに挨拶をするが……ずいぶん寒そうだな遊佐さん。
お茶でもいれてあげよう。
てか今日は護衛の人おらんのな。
前回のでびびって同行拒否でもされたんだろうか……と、思ったら離れたところに居たわ。
何か警戒しているっぽいけど、何かあったんだろうかね。
とりあえず彼らにはお茶と椅子を出してあげようか。この雪の中立ちっぱなしはきついだろう。
出したお茶を飲み、ほっと一息つくと遊佐さんは町に戻ってからここに来るまでの出来事をざっくり話始めた。
「あれから地元のものに話を聞いてな、あまり大規模に開発するのでなければある程度人出は出せるそうだ」
すばらしい。
無理させていないところも良いね。一揆怖いもんね。
冬の間は割とやることがなくて暇な人が多いんだそうな。
ただ寒い中体を動かすのも大変なのは確か……でも報酬くれるなら人足だすのもやぶさかではない。ってことらしい。
「赤井と緑谷の二人も銭を出すし、もちろん我らもだす」
これはありがたいね。
俺も……出せても飴玉くらい? それか砂糖でべっこう飴でも作っちゃおうかな。
それなら元手はあまり掛からんし、甘いもの貰えるとなればやる気もでるんじゃなかろうか。
忘れないようにメモしておかないとだ。
「御子神……殿には種もみの提供をお願いしたい。もちろん礼はする」
「ええ、それは構いません……ちなみにいかほど用意すれば良いので?」
礼はお米と……水車小屋ほしいと言ったらさすがにダメだろうから、糠かな。
あと風呂場を囲う板とか、冷凍ストッカーの防音用の箱とか用意したいので職人さん紹介して欲しいなあ。
水車は別枠で依頼かな。
どんだけ報酬用意すれば良いか分らんし、まず話をしてみないと。
それで、種もみはどれぐらい必要になるのかな?
田んぼをどれだけ用意するつもりか知らないけど、10反とかなら30kgぐらい?
「3石の種もみを確保して貰いたいのだが……可能であろうか?」
「……ちょっと待ってくださいね」
あまり馴染みのない単位だされてもちょっと困る。
ええと……1石150kg……え、450kg!? さすがに多すぎんか??
「いけてその半分ですねえ……ああ、でも肥料とかもある程度こちらで用意する必要がありますので、もっと少なくなると思います。四分の一ぐらいでしょうか」
毎日1kg買ったとして、種まきが準備とか含めると4月ぐらいからでしょ? それじゃ100kgちょいしか買えない。肥料も用意すること考えるとそれ以上は無理だ。おかずがなくなってしまう。
「そうか……では、まずはそれで行ってみよう。一度採れればあとは増やしていけば良いからな」
頑張れば1反から5石とれるからねえ。
今回30反として、とれるのは150石……1割を種もみとして15石分。すごいね一気に増えるよ!
まあ、うまくいけばだけど。
最初の年は半分ぐらい見とけば良いんでないかな。それでも相当な量がとれるねえ。
そのためにも遊佐さんには農業のことを学んで貰わなければならない。
なんという丸投げ。
「そうですねー……あ、お米を育てるのにこれを参考にして貰って良いですか? 収穫量の増やし方とか書いてるんですよ」
「なんと!」
はい、どうぞ! と本を遊佐さんに渡すと、その質感などに最初は外間だった様子だがすぐにページをめくり読み始める。
……渡しておいてなんだが、現代の文字って読めるのだろうか?
いや、まあ実際読んでそうだけど……カタカナとか英数字とか出てきそうだし、読んでるふりしている訳じゃないよね……?
「……」
「……」
ページをめくる遊佐さんを観察するが、眉間に皺寄せてすっごい真面目に読んでいるように見える。
どうしよう……すごい声かけ辛いな。
暇だし護衛さんとお菓子でも食ってるか。
今日はかっぱのえびせんだよ。
「うむ! 半分ぐらいしか分からぬ」
読み終わり、本を置いた遊佐さんの開口一番がそれだった。
半分も分かれば十分でないかなあ? てかやっぱ文字読めてるよね……どうなってんだ。
まあ雑に神様パワーのおかげとでも思っておけば良いか。
とりあえず、空になった袋を悲しげな瞳で遊佐さんが見つめていたのでもう一袋開けておこうか。
「だが、重要なことがいくつも書かれているようだ。今ある田んぼで試すのは難しいだろうが、新たに広げた田んぼであれば問題なかろう……この1反から5石の収穫が本当ならとんでもないことになる」
「ならよかったです。それ持って行って頂いて構いませんので、農家の方にぜひ伝えてあげてください」
この時代のお米って、現代のお金みたいなもんなんだっけか。
それが3倍に増えるんだから、確かに飛んでもないことだろう……そんな大事なことは偉い人に任せるに限る。
そんな訳であとは頼みましたぞ。
「……良いのか? これは貴重なものではないのか」
「大量に用意できるものではありませんが、それを渡すぐらいであれば問題ありませんよ」
古い本なので貴重ではあると思う。
でも発行部数もそれなりなので、決して手に入らない訳ではない。
何百冊も要求されると無理だが、1冊譲るぐらいであれば問題ないのだ。
まあ、増やしたければ自前で写本なりして貰おう。




