17話「質問タイムその1」
「ここで話すのもあれですね。皆さん広場まで行きましょうか……ああ、先に木を置いてきますね」
何かこちらの問いかけに対し無言というか、みんな固まったままだったので少し落ち着く時間を……ってことで、いったん俺だけこの場から離れることにした。
落ち着いたらみんな移動してくるだろう。
そして俺自身も考える時間を得られると。
さてどうしたものか……誤魔化すのは無理よなあ。どう誤魔化したらよいかも思い浮かばない。
というか、片手で丸太を持ち上げたりしていたせいで、この乗り物が特殊なんですーとかで逃れるのもできない。
その場面を見られていない可能性もあるけど、ここは見られていた前提にしたほうが良いだろう……手遅れ感がすごい。
んー…………よし決めた。
聞かれたことに正直答えよう。
それでどうなるかは考えても分からない。
なあに、やばくなったら逃げれば良いさ。キャンピングカーの性能はここ最近乗りまくったので把握している。
いざとなれば隣国なりどことなり逃げおおせる。
よし、そうと決めたら迎え入れる準備をしよう。
せめて椅子替わりに切りっぱなしの丸太でも用意せんと。
「さすがにみなさんの分の食事は出せませんが……」
「いや、今日は大丈夫だ……」
丸太を用意して少し経った頃に遊佐さんら一行が広場へと表れた。
全員悲壮な表情を浮かべて今にも死にそうな雰囲気であるが、そこはあえて無視して普段通りふるまう。
ただ遊佐さんですら強張っているので、最初はこちらから話題をふらないといけないかな。
とりあえず最初は軽く雑談風に……。
「それでどうしたんですか? 前よりも護衛の方が多いようですが」
俺の質問に対し遊佐さんは一瞬こちらへと視線を向けるが、すぐ地面へと移してしまう。
そして下を向いたままぽつぽつりと大勢でここに来た理由を語りだす。
「……麓の村から人がきてな。ここ数日山から恐ろしい咆哮が響き、木々がなぎ倒されている。とな」
……麓に村なんてあったんですねえ!
気づかんかったよ。ドローンでみても見つけられなかったし……そして元凶がもろに俺で笑えない。
だいぶ盛大になぎ倒してたからなあ……そっかあ麓から見えてたのかあ。そっかあ。
「複数人の証言で実際に起きていることだと分かった。それでもし御子神殿に何かあってはと急ぎ人を集め参ったのだ……もっとも杞憂で終わったようだがな」
最後はなかば半笑いで遊佐さんはここにきた理由を語ってくれた。
いやあ、いい人だね遊佐さん。
なんというか本当に申し訳ない気持ちが一杯になってきた。
この場に居るのは20人かそこらだけど、実際にはもっと動員していたんじゃないかな。
下手すると化け物と対峙する訳ですし。
「そうでしたか……この度はご心配をお掛けしました」
謝罪大事。
あとは何であんな事をしていたか説明せんとだな。
「さきほどご覧になったように、それらの原因は私です……川沿いを歩いてこちらまで商品を取りに来るのは大変だろうと、少しでも道を通しておこうと思いましてね」
「それは……かたじけない」
こちらこそいろいろごめんなさい。
……さて、ここまではジャブみたいなもんだ。
今までの話は騒ぎの原因俺でした。荷物運ぶの大変だろうし道を整備していたんだよ。ゆるしてちょってだけだし。
ここから本格的な質問タイムが始まるだろう。
「御子神殿は……人、いや物の怪……御子神? 御子、神……」
「……あの、大丈夫ですか?」
少し待っていると、重い口を開くように遊佐さんが話始めたが……何やら様子がおかしい。
顔色が真っ青を通り越して土気色になり、全身が震えはじめる。
まじで大丈夫かこれ。倒れたりしないよね……薬とかせいぜい風邪薬とか胃薬ぐらいしかないぞ。
ちょっと心配になり、立ち上がって肩に手を伸ばそうとした瞬間、がばっと遊佐さんが顔を起こす。
びっくりしたなもう。
てか目がなんか……なんか決めていらっしゃる? 目がやばいんですが。
思わずススッと距離を取ってしまったが仕方ないよね?
「御子神様は神使であらせられたか」
…………?
ああ、なるほど神使ね。
ちょっと聞きなれない言葉だったもんで理解するまで時間が掛かってしまった。
てかなんでそうなる。そうか名前か、名前のせいか。
これは誤解を解いておかないとダメなやつだ。この時代の信仰心は現代よりすごいらしいし。
あくまでは俺は人……人?
「…………憚りながら人ですよ」
たぶん人だと思う。
ただまあ自身でも疑問に思ってしまうぐらいだから、遊佐さんはもっと疑うだろう。
どうするか……妙な誤解から神使認定とか嫌だぞ。
……いや、ここは初志貫徹で正直に話そう。
変に誤魔化すとあとでおかしくなる。
「ただ、神様によってこの地に送られたのは確かですし、この体も神より送られたものですが……」
まあでも神に刺客送られて殺されましたとかは言わないでおくよ。
変に誤解されても困るし、ややこしくなるだけで良いことない。
「神によって送られたということはやはり神使では……」
「いえいえ、別にただ送られただけで使命とかある訳でもないですからね。ただこうやってこの地で日々を過ごしているだけです……神様の気まぐれとでも考えておいたほうが良いかと」
「……なるほど」
単に送られただけです。
実際何か指示されているわけじゃないからね。暇つぶしで殺されはしたけど。
……後々死ぬ運命だったとしても結構ひどいことされてないか?
いや、今の生活に金銭面以外で不安がある訳じゃないけどさ。
っと、いかんいかん。思考がずれてきているぞ。
遊佐さんの誤解を解かないといけないんだった。
とはいえここまで話した以上あとは遊佐さんの判断になるが。
「まあ、一応人判定で良いんじゃないですかね?」
ちょっと投げやり気味にそういうと、遊佐さんは思わず苦笑を浮かべていた。
さきほどまでの何か決めていたような目ではなくなっている。
「納得頂けましたか」
そう問うと、遊佐さんは疲れたような笑みを浮かべると軽く頷いた。
よし、誤解はとけたと言うことにしておこう。




