第43話:監査の日
監査当日、早朝。
私の体力値は11。
……いや、正確に言おう。昨日の夜から一睡もできなかったので、今ステータスを確認したら10に下がっていた。
おいおいおい。
最大値100のうちの10って。スマホのバッテリー残量で言ったら赤い表示どころか、もう画面が点滅してるやつじゃん。
――と、心の中では盛大に取り乱しているが、声に出すわけにはいかない。もう朝の第一鐘が鳴っている。
手元には回復薬が一本。枕元の小卓に置いてある。昨日の夜、ノアが「念のため」と言って調合し、私の部屋まで持ってきてくれたものだ。
使えば体力値は30程度まで回復する。ただし効果は半日しか持たない。しかもノアの説明によれば、安静にしていれば半日近く持続するが、精神的な負荷――緊張や怒り、集中を要する場面が続けば消耗が加速するという。
監査は丸一日かかる可能性がある。
いつ使うか。それが問題だ。
「……温存します」
呟いて、薬瓶を枕元に戻した。
ここで使って朝から元気に出迎えても、午後に倒れたら意味がない。冤罪告発状が出てくるのは監査の後半。ユリウスの読みではそうなっている。
なら、その瞬間まで温存する。
前半は代行体制で凌ぐ。五人が各持ち場を守る。私は奥の執務室で横になっていればいい。
……横になっていればいい、って。
領主が寝てる間に監査を受けるって、どんな状況よ。
控えめに言って異常事態です。
コンコン、と扉を叩く音。
「ミチカ様、ユリウスさんが」
ミナの声だ。
「入れて」
扉が開くと、ミナの後ろからユリウスが分厚い書類の束を抱えて入ってきた。
目の下に隈がある。……私以上に寝てないな、この人。
「監査応対書式一式、全七十二項目。完成した」
ユリウスが机の上に書類を広げた。
「領地経営報告書、歳入歳出一覧、物流記録の写し、治安隊の活動報告、上水管理の記録、教会との協定書の写し。全て標準書式に準拠。監査団が要求し得る項目を網羅してある」
七十二項目。
前世の確定申告でも泣いたのに、七十二項目って。
「……ユリウス、何時間寝た?」
「寝る必要があったかな。監査は今日だ」
皮肉じゃない。本気で寝てない顔だった。
ミナが心配そうにユリウスの顔を覗き込む。
「あの、お茶をお持ちしましょうか……」
「ああ、頼む。……濃いやつで」
ユリウスが珍しく素直にミナの申し出を受けた。よほど限界なのだろう。
「それと」
ユリウスが書類の束の下から一通の封書を取り出した。
「アルブレヒト・ライトナー卿の医療証明書。
三日前に手配しておいた。
王都のライトナー卿に魔導通信で事前認証を取り付け、公印の捺印済み書面を早馬の継ぎ便で送ってもらっている。
辺境街道の継ぎ便なら王都まで一日半――往路で依頼、復路で書面。
ぎりぎり三日で届く」
王都公印付きの証明書。第一宰相派の勅使アルブレヒト・ライトナーの署名が入っている。
「……いつの間に」
「君の体力値が監査当日まで持たないことは、ノアの診断の時点で分かっていたからね。準備というのは、必要になる前にするものだよ。ミチカ様」
皮肉交じりだが、目は笑っていなかった。本気で私の身を案じて、先回りしてくれていた。
そこへ、廊下から足音。
レオンが入ってきた。甲冑は着ていないが、腰に剣を帯びている。
「領庁前の警備配置、完了しました。治安隊の詰所にも増員を出しています」
「ご苦労様。レオン、今日の持ち場は」
「監査の間、私は応接室の扉前に立ちます。団長が不当な要求をした場合、ユリウス殿が法的に対処し、私は――」
一瞬、口が止まった。
「――必要があれば、排除します」
言葉を飲み込んでから、短く言い直した。レオンらしい。本当は「叩き出す」くらい言いたかったんだろう。
でもありがたい。
続いてリオとノアも到着した。リオは商会関連の帳簿の副本を、ノアは衛生管理記録と医療関連の書類を持っている。
五人が揃った。
「確認します」
私はベッドに横たわったまま、声だけで指示を出した。情けないけど、体を起こすのもきつい。
「ユリウスは応対の主席。書式に基づく回答は全てあなたが行う。リオは経済関連の質疑に対応。ノアは衛生・医療関連。レオンは警備と、万が一の排除。カイは――」
「外。監視」
窓の外から声がした。
いつの間にか窓枠にカイが腰掛けている。
……扉から入ってください。お願いだから。
「カイは領庁周辺の監視と情報収集。監査団の随員の動きを全て追え。一人残らず」
「了解」
カイが窓から消えた。
「それでは、始めます」
私は目を閉じた。
「前半は任せる。冤罪告発状が出たら起こして」
ミナが毛布をかけ直してくれた。その手が少し震えていた。
「ミチカ様……大丈夫ですよね?」
「大丈夫。仕組みで守ると決めました」
嘘じゃない。
でも体力値10の人間が言っても説得力ゼロだよね、うん。
―――
ミナは応接室と執務室を往復しながら、ミチカの様子を何度も確認した。
横たわるミチカ様の顔は、白い。
紙のように白い。呼吸が浅くて、時折眉間に皺が寄る。苦しいのだ。体力値10というのは、ただ横になっているだけでも身体が軋むということなのだ。
それでもミチカ様は目を閉じたまま、時折小さく呟いた。
「……告発状の構造。伝聞証拠。原情報提供者の不在。崩すなら……そこ」
眠っているのではなかった。頭だけが回り続けている。身体が動かないから、思考だけで戦っている。
ミナは唇を噛んだ。
――私にできることは、この方が立ち上がる瞬間まで、この場を守ること。
応接室から、ディートリヒの冷たい声が漏れ聞こえてくる。ユリウスの淡々とした応答が続く。
時計の針が、ゆっくりと午後へ向かっていた。
―――
監査団が領庁に到着したのは、朝の第三鐘が鳴った直後だった。
応接室は領庁二階の南面に位置する、十五歩四方ほどの部屋だった。
南側の窓二つから午前の日差しが差し込み、磨き込まれた長卓の表面に白い四角を落としている。
壁の片側には法令集と領地記録が詰まった書棚が天井近くまで並び、反対側の壁には自治領の地図が掛けられている。
調度品は質素だが手入れが行き届いていた。
先代領主の時代から使われてきた部屋の空気には、古い紙とインクの匂いが染みついている。
団長の名はディートリヒ。
四十代半ば、痩せぎすの男。
王都の官僚らしく表情の読めない顔をしている。
だが目だけは動いていた。
応接室に入った瞬間、書棚の配置、窓の位置、控えている人間の数――全てを一瞥で確認する目。
有能な官僚の目だ。
敵か味方かはまだ分からない。
だが少なくとも、無能ではない。
随員は五名。先頭から順に、書記官風の男が三名、護衛らしき体格の良い男が一名。そして五人目――末席に控えるように立っていたのが、エルヴィンだった。
応接室でユリウスが団長を迎えた。
「ようこそ、ヴァイスフェルト自治領へ。監査応対書式一式、こちらに準備しております。全七十二項目、王都標準書式に完全準拠。ご確認ください」
ユリウスが書類の束を差し出した。
ディートリヒの眉がわずかに動いた。
辺境の、しかも未成年領主が治める小さな自治領。まともな書式すら揃っていないと踏んでいたに違いない――窓越しに聞こえてくるやり取りから、私はそう読んだ。
だが目の前にあるのは、王都の省庁でも通用する精度の書式だ。
「……なるほど。結構な準備だ」
ディートリヒは一枚一枚を丁寧にめくった。目が速い。慣れている。
歳入歳出の項目で止まった。
「御用商会解体後の物流記録が詳しいな。代替契約の条件まで記載されている」
「領の物流は公開情報です。隠すものはありません」
ユリウスが淡々と返した。
リオが補足する。
「物流ギルドの契約書副本もありますよ。相場公開の条項付き。ご覧になります?」
「……後で確認する」
ディートリヒの声に、ほんのわずかな苛立ちが混じった――とミナが報告してくれた。
書式が完璧すぎて、突っ込みどころがないのだろう。私はベッドの上で目を閉じたまま、それを聞いて小さく息を吐いた。
標準的な監査項目の確認が午前中いっぱい続いた。
衛生管理の質疑で、ディートリヒが上水設備の管理体制を問うた。ノアが書類を一枚繰り、落ち着いた声で答えた。
「上水路の水質検査は十日ごとに実施しています。検査項目は濁度、臭気、沈殿物の三点。基準値を超えた場合は即日取水制限をかける体制です。記録はこちらに」
淡々と、しかし過不足なく。ノアらしい回答だった。ディートリヒは記録に目を通し、小さく頷いた。
レオンが治安隊の活動報告を説明し、ユリウスが法的根拠を逐一補足した。
五人の代行体制が、一つの隙もなく機能している。
そして――午後。
ディートリヒが書類を閉じた。
「標準項目の確認は以上とする」
一拍の間。
「ここからは、別件の審理に移る」
来た。
ディートリヒが懐から封書を取り出した。
「当監査団は、ヴァイスフェルト自治領領主ミチカに対する横領の告発状を受理している。告発人は――」
エルヴィンが立ち上がった。
「私です」
かつてこの領で追放された男が、王都の権威を纏って戻ってきた。
「ヴァイスフェルト家先代領主の時代から、領の歳入の一部が私的に流用されていました。帳簿の改竄は組織的に行われ、現領主ミチカもその恩恵を受けている。証拠は、先代時代の帳簿と現行帳簿の数値の不整合です」
エルヴィンの声は落ち着いていた。以前のような感情的な激昂はない。
……誰かに台詞を仕込まれた顔だ。訓練されている。
奥の執務室で、ミナが私の肩を揺すった。
「ミチカ様、告発状が……!」
「聞こえてる」
私は目を開けた。
回復薬の瓶を手に取る。
ここだ。このタイミング。
一気に飲み干した。
苦い。相変わらず苦い。前世の栄養ドリンクの百倍苦い。
でも効果は即効。体の奥から熱が広がり、視界がクリアになる。
体力値――10から32へ。
よし。半日――いや、これから精神的な負荷がかかることを考えれば、実質的にはもっと短い。ノアの言葉を思い出す。緊張が続けば消耗は加速する。
この数時間で決める。
「ミナ、肩を貸して」
「はいっ」
ミナに支えられながら、応接室へ向かった。
扉が開いた瞬間、全員の視線が集まる。
午後の光は南窓から角度を変え、長卓の半分を影に沈めていた。
ディートリヒは窓を背にした上座に座り、その顔は逆光で表情が読みにくい。
書記官たちが左右に並び、護衛が壁際に立ち、エルヴィンが末席で身を硬くしている。
六対一――いや、レオンが扉の脇に立ち、ユリウスがこちら側の席で待っている。
六対三か。
ディートリヒの目が細くなった。エルヴィンの顔がこわばった。
「領主ミチカ、出席します」
声は出た。まっすぐ立てている。回復薬様々だ。
体力値32。ここから削れていく。一秒でも無駄にはできない。
「告発に対し、直接応答する権利を行使します」
ユリウスが椅子を引いてくれた。座る。
さて。
ここからが本番。
「エルヴィン」
私は彼を見た。
「証言を述べなさい。先代の帳簿改竄について――あなたはそれを、どこで知った?」
「王都で、先代時代の元帳簿係から直接聞いた。帳簿の写しも受け取っている」
ステータスオープン。
エルヴィンの頭上に数値が浮かぶ。
嘘反応――灰色。
赤でも緑でもない。灰色。
これは……。
以前、領内の商人が仕入れ値を偽って申告した時のことを思い出す。
あの時、商人本人は取引先から渡された偽の伝票を本物だと信じ切っていた。
ステータスオープンの嘘反応は赤にならなかった。
本人が嘘をついている自覚がないから。
でも客観的事実とは一致しないから、真実を示す緑にもならなかった。
あの時に初めて確認した第三の反応――灰色。
偽情報を真実だと信じ込んでいる人間に出る色。
エルヴィンは本気で信じている。
帳簿改竄があったと、心の底から信じ込んでいる。だから嘘反応の赤が出ない。でも事実とも一致しないから、純粋な緑にもならない。
灰色。
つまり――エルヴィンは偽証者じゃない。被害者だ。
誰かがエルヴィンに偽の帳簿の写しを渡し、偽の証言を吹き込み、本人が完全に信じた状態で証人として送り込んだ。
精巧な工作だ。嘘発見が通用しないように設計されている。
第二宰相派、やるじゃないか。
でもね。
構造が分かれば、崩し方も分かる。
「エルヴィン、あなたの証言が嘘だとは言いません」
体力値――28。緊張で削れている。座っているだけなのに、心臓が速い。精神的負荷が回復薬の効果を食い潰していくのが分かる。
エルヴィンが怪訝な顔をした。ディートリヒも眉を上げた。
「あなたは本当にそう信じている。ですが、あなたに情報を渡した人物――告発状の実際の作成者は、この場にいますか?」
沈黙。
「告発状には作成者の署名があるはずです。エルヴィン、あなたの署名ですか?」
「……いや。告発状の作成は、王都の法務官が行った」
「その法務官の名前は」
「それは――監査団長が把握している」
視線がディートリヒに移る。
「団長殿。告発状の作成者本人の出廷を要求します。証人が伝聞情報のみで証言している以上、原情報の提供者――作成者本人の尋問なしには、告発の正当性を審理できません」
体力値――24。こめかみの奥が脈打つように痛い。でもまだ頭は回る。
ディートリヒの目が鋭くなった。
「……領主殿。監査における告発審理は、提出された書面と証人の証言で行う。作成者の出廷は必須要件ではない」
「通常はそうです。しかし――」
私はユリウスに目配せした。ユリウスが即座に、今朝確認した医療証明書を卓上に置いた。
アルブレヒト・ライトナーの署名と王都公印が入った医療証明書。
「尋問延期条項、第七条第三項。『領主の健康状態が尋問に耐えうる水準にないと、王都公印を持つ第三者の医療証明により確認された場合、領主は尋問の延期を申し立てることができる』」
ディートリヒの顔色が変わった。
「この証明書は、第一宰相派勅使アルブレヒト・ライトナー卿の王都公印付きです。私の健康状態が監査に耐えうる水準にないことを証明しています。よって――尋問の延期を申し立てます」
「待て」
ディートリヒが身を乗り出した。逆光の中でも、その目の鋭さは隠せない。
「領主殿。あなたは現にこの場に出席し、応答している。健康状態が尋問に耐えうる水準にないと言うが、現に耐えているではないか」
来た。当然の反論だ。有能な官僚なら突かない方がおかしい。
だが、これもユリウスと想定済み。
「ユリウス」
ユリウスが立ち上がった。
「団長殿。
医療証明書の効力は、発行時点における診断に基づきます。
発行後に一時的な回復措置――この場合は回復薬の服用――があったとしても、それは証明書の法的効力を失わせるものではありません。
王国法第四編、第七条の注釈にも明記されています。
『一時的な症状緩和をもって、医療証明の効力を否定することはできない』と」
ユリウスが該当条文の注釈部分を示した書面を、ディートリヒの前に滑らせた。
「加えて申し上げれば、領主が回復薬の効果が切れた後に尋問を継続された場合、健康上の重大な危険が生じます。その責任は、延期申し立てを却下した監査団長が負うことになる。――団長殿のご経歴に、そのような瑕疵が残ることを、私どもは望みません」
最後の一言は丁寧だが、明確な警告だった。
ディートリヒの顎が、わずかに引かれた。
「……延期条項は領主尋問に対するものであり、告発審理全体の停止を意味するものではない」
まだ食い下がる。だが声のトーンが下がった。撤退戦の口調だ。
「告発審理は領主への尋問を前提としています。尋問が延期される以上、審理も延期される。王国法第四編、監査手続の章、第十二条」
ユリウスが即座に該当条文の写しをディートリヒの前に置いた。
用意周到。さすがユリウス。
ディートリヒは条文を読み、医療証明書を確認し、注釈書面をもう一度見た。
長い沈黙。
この男の目が、書類と私の顔を交互に見た。計算しているのだと思った。ここで無理に審理を強行すれば手続き瑕疵になる。第二宰相派の意向がどうあれ、自分の経歴に傷がつく判断はしない――そういう種類の沈黙だ。
有能な官僚は、勝てない戦を避ける。
「……延期を認める。ただし、期間は医療証明書に記載された回復見込みに準じる。七日間だ」
七日間。
体力値――19。緊張が抜けた途端、一気に落ちた。限界が近い。
「了解しました、団長殿。延期期間中に、告発状作成者の身元を確認し、出廷を要請します」
ディートリヒが応接室を出ていく。随員たちが続き、エルヴィンが最後に私を睨んだが、何も言わずに扉の向こうへ消えた。
扉が閉まった瞬間、私の膝が崩れた。
「ミチカ様!」
レオンが支え、ミナが駆け寄った。
「……まだ薬は効いてる。気が抜けただけ」
嘘。体の芯から力が抜けて、指先が冷たい。でも倒れてる場合じゃない。
「ユリウス、分析を」
「ああ。エルヴィンは駒だ。本人は信じ切っている。つまり、偽の帳簿と偽の証言を組み立てた人間が別にいる。告発状の作成者――王都の法務官と名乗る人物。そいつが本丸だ」
「七日間で特定できる?」
「王都に問い合わせれば名前は分かるだろうが、七日では往復できない。継ぎ便を使っても片道一日半、往復三日。返答までの手続きを入れれば五日以上かかる」
そこへ。
窓が開いた。
カイが音もなく室内に降り立った。
「報告」
全員がカイを見た。
「告発状の作成者。王都にいない」
「……何?」
「この領内に潜伏している。監査団の到着前から」
カイが淡々と続けた。
「先月の放火事件の後、旧御用商会の残党の動きを追っていた。
残党ネットワークの連絡経路――東区の宿屋と南門外の倉庫を経由する人の流れを、二週間前から監視している。
その経路を使って、監査の十日前に身元不明の人間が一人、領内に入った。
残党の連絡役と接触した記録がある」
情報源が明確になったことで、空気が変わった。カイが二週間かけて積み上げた監視の成果だ。
「もう一つ。居場所の候補」
「どこ?」
「東区、旧御用商会の倉庫。現在は空き家扱いだが、夜間に明かりが漏れている」
カイが懐から紙片を出した。倉庫の見取り図。監視記録。出入りの時間帯。
二週間分の情報が、そこにあった。
「カイ。居場所は特定できる?」
「……七日あれば」
七日。
監査延期の猶予が、そのまま捜索のタイムリミットになった。
「全員、聞いて」
私は椅子に座り直した。体力値は削れ続けている。でも頭は回る。
「七日間で告発状作成者を見つけ出す。カイの情報網と治安隊の全力を使って。見つけたら、公開の場に引きずり出して、ステータスオープンで全部暴く」
ユリウスが口元を歪めた。
「……随分と派手な監査対策だね」
「監査じゃない。これは――」
言葉を選ぶ。
「冤罪を仕組みで潰す、最初の実験です」
七日間の戦いが、始まった。




