⑩逆ハーエンドあるいは最も望んでいない結末
昨日、間違えて9話を先に投稿してしまいました。
8話を割り込み投稿しましたので、まだ読んでいない方はよかったらそちらも読んでみてください。
起きたとたん、私は叫んだ。
「やっぱり、これはおかしいよ!」
みんなの気持ちは伝わってきた。でも、私がじゃあこの人でって簡単に決められるものではない。
私はこの気持ちを正直に伝えようと、昨日みんなで集まっていた広間へと急ぐ。
「ねぇ、やっぱり――ってこの状況は……なに?」
踏み込んだ広間には男たちが転がり、周りには栓が空いたワインの瓶がごろごろと転がっている。
「よかった、マリアンヌ」
「ここで、誰かを選んだらどうしようかと思ったぞ」
そして、なぜだか私の決断が褒められる。
これは一体どういうことなのだろう。
「な、なに? この異様な雰囲気は?」
私が一歩引きながら尋ねると、思いもよらぬ返事が返ってきた。
「昨日、夜通し選ばれなかったらと不安を語ったのです」
「そして、話はいつの間にかマリアンヌのことになった」
「あとは、簡単。意気投合」
男たちが肩を組んで楽しそうに笑う理由を、私はさっぱり理解できなかった。
「だから、みんなで愛でることにしたらしい」
神がまとめた意見を教えてくれる。
「はぁ~!!! そんなのおかしいでしょ? みんなで? 愛でる? 意味わかんない。神としてもいいの? こんな結末?」
勢い込んで声を荒げるが、神は至って冷静に返してくる。
「異世界の魂が様々に反応するのを堪能できる……それは素晴らしく魅力的だ」
神が乗り気で、みんなもやる気満々。私が抗う術はなかった。
「もう、マリアンヌはみんなに愛されちゃって」
「さすが、我が娘」
おかしな展開を両親が認めた時点で私の負けは完全に決まった。もう、止めてくれる人はいない……いや、いた!
「レイラ!」
「……私も……同じことになりそう。なんか、参考にしたとか……ぐふっ」
「レイラー」
私と同じような目に合っているらしいレイラがふらふらと倒れてきて、私は慌てて受け止める。
「両国の間に家を建てよう」
「それはいい。大きなものにして……両国の関係も安泰でこれはいいことずくめだな」
私とレイラの瀕死の状態を無視して、アロン王子とゼラフィー王はとんでもない計画を練っている。
「俺は、いつまでも護衛できればなんでも構わないです。いつまでも……いつまでも」
なんだか怪しい雰囲気を纏っているカミーユにもどん引きだ。
「では、我はその新しい住処を守護するとしよう」
ドラゴンが守護とか、どんなすごい家をつくるつもりだ。
「たくさんの男たちに愛される少女……淫靡な響きでいいな」
悪魔が助けてくれるとはそもそも期待していない。でも、私は負けない。まだ、反論の余地はある。
「両国間の間に家とか、現実的じゃないよ。土地もないし――」
「土地ならば、伯爵領を提供しましょう。何を隠そう、私は辺境伯の跡取りなのです」
あっさりと解決してしまった問題に、みんなは満足そうに頷いている。
こうして私は捕らわれてしまった。
みんなにちやほや、四六時中監視される。
この状況をおかしいと言った者はいないわけではない。だが、王子や王が権力にものを言わせ、カミーユやドラゴンが実力行使で排除する。されには悪魔がこれは正しいことと唆す始末だ。
吟遊詩人はこれをいかにもいい話として流布した。
だから、私がこの状況から解放されることはない。
いつしか愛されすぎた少女の話が国の女の子の憧れと流行り出す。
でも実際は憧れるものなんかじゃない! 断じて違う! まったく望んではいない結末なのだ。
だから、世の女性たちに忠告しておく。
こんな話に憧れちゃ駄目! 楽しむのは物語だけにして、どうか堅実に生きて欲しい。
これは、どうやら逃げられないだろう私の切実なメッセージだ。
完結です! おつきあいありがとうございました




