第二話「忘却された遺跡へ」
「あっ、そう言えばまだ名前を聞いてなかったね。聞いても良い?」
「私の名前は柊ミナミ、宜しく」
「柊ミナミ…うーん、じゃあミナミって呼んでも良いかな?馴れ馴れしい?」
「良いよ、そっちの方が話しやすいでしょ」
そうして二人は密林を進んで行った──
「周……周はなんで…神月祝祭大会に出たの?」
「それ聞いちゃいますか〜〜ふっ、お教えしましょう!」
「実はアタシのお父さん、冒険者だったの。だから幼い頃からよく冒険の話を聞かされてた。でもある日、お父さんは帰らぬ人になっちゃったの……理由は『リザドラ』って言うドラゴンと戦って負けちゃったからなんだけどね」
「だからアタシは神月にもっともっと強くしてもらって、お父さんの敵を討ちたいの!」
「そうだったんだ、周なら出来ると思うよ」
「そういうアンタはどうなの?聞いても良いなら教えてよ〜」
「……私には、幼馴染がいたの。かっこよくて、頼もしくて……いつも私を守ってくれた」
「でもある日…彼は何者かに殺された。だから私は神月祝祭大会に勝って、彼を蘇らせようと思ったの」
「蘇らせる…確かに、神月なら死者の蘇生も可能かもね……アタシ達の参加した理由って、結構似てるね〜…まぁでも、叶えられるのは一人の願いのみ…恨みっこは無しだよ〜」
「ふっ、分かってる」
「おっ、もしかしなくても御薬袋じゃないか」
突如、背後から白色の長髪の老人が話しかけて来る
「あなたは?」
柊ミナミが動揺して話しかける
「僕はハーディ・ザラ、この辺りで魔物を狩っている宿老だよ」
「自分で宿老って……」
「周と知り合いみたいですけど」
「そうなの!彼はアタシの師匠なの!」
御薬袋周が話に割って入る
「師匠?」
「そっ!彼に長年狩りのやり方を教えてもらってきたの」
「そうなんだ…はじめまして、私は柊ミナミです。宜しくお願いします」
「君たちは、神月祝祭大会に参加しているのかい?」
「そうだよ!あれ?ハーディ師匠は参加してないんだっけ?」
「あぁ、僕はあまりそういう物に興味が無くてね。ただ、魔物を狩りたいのなら良い場所を教えてあげよう。あまり世間に知られていない魔物が大量発生する遺跡を知っているんだ」
「えっ、良いの!?教えてくれるの!」
「あぁ、ただあそこは危険だ。生半可な覚悟では…ただでは済まないだろう」
「それなら、止めといたほうが良いんじゃない?怪我を負ったら元も子もないし」
「確かにそれもそうだね…じゃあハーディ師匠、この話は無かったことに──」
「でもあの遺跡には御薬袋、君の敵討ちの相手の情報が…眠っているのかもしれないのにか?」
「それって………詳しく教えて!」
御薬袋周の目の色が変わる
「ふっ、あそこには『夙志』の残した竜骨が残っているとされている。その竜骨の魔力を辿れば…リザドラの根城に辿り着くことができるだろう」
「なるほど…」
御薬袋周がうなずく
「ちょっと待って、私だけ話についていけてないんだけど…」
柊ミナミが話しかける
「あぁ済まないね、順を追って話すとしよう──」
「まずは夙志についてかな、夙志はかつて竜狩りで有名だった狩人だ。多くの村や街を竜の手から救い、彼は英雄と言われ慕われていた。それから数年後に彼もリザドラと戦ったんだ、だがそれ以来彼は姿を消してしまった」
「死亡説だの竜のペットになっただの…色々な説が出回ったが、結局その後彼がどうなったかは記録されていないんだ……だが彼の書籍からとある一冊の書物が発見された──」
『──そう、それこそが彼の残した最大の謎…その書物には『リザドラは既に討伐されていた』と記載されていたのだ」
「どういうこと?」
柊ミナミが相槌を打つ
「あぁつまり、夙志の残した書物にはリザドラは討伐されたと記載されていたが、その40年後に御薬袋のお父さんがリザドラに殺害されたんだ」
「じゃあ、夙志は嘘をついていたってこと?だからその書物はリザドラと戦う前に書かれていたもので、夙志はやっぱりリザドラとの戦いで戦死してたってこと?」
「だが、実際に夙志がリザドラを討伐した場面に居合わせた人達もいるようだ。彼らはその光景をよく覚えているそうで、虚実ではないと言っている」
「謎は深まるばかりですね…」
「でも、私たちは神月祝祭大会で宝玉を稼がないといけないから…そんな時間のかかりそうな事をしている場合じゃ──」
「宝玉を稼ぐ手段は、沢山ある。僕はあまり知らないけど、ネットで反響を呼ぶ方法もあるんだ」
「つまり─」
「つまり、君たちが夙志の残した謎を解明して、それをネットに投稿し…えぇと、『バズる』って言うんだっけ?とにかく、大きな反響を生むことができれば、多くの宝玉を獲得することができる。君たちが同盟を組んでいるのなら……その数は倍になるしね」
「なるほど、確かにそれなら神月祝祭大会への勝利にも繋がって…周の敵討ちに直結するかも…」
「じゃあそれで決まりだね!ハーディ師匠も来てくれる?アタシたち二人じゃ心細いし」
「悪いけど、僕は用があって同行できないんだ…でも大丈夫、あそこには僕の昔からの親友がいるんだ。彼に話をつけとくから君達二人でもきっと大丈夫さ」
「ありがとう!ハーディ師匠!」
「それじゃあ…なるべく急いだほうがいいぞ、30日は意外とあっさり過ぎ去るものだ」
そして数時間後、二人は遺跡に辿り着いた
「ここが、ハーディさんが言っていた遺跡…」
「広いね〜……確かに、竜が住処にしていたのは納得の広さだよ」
「周、これからどうする?今のところ夙志もリザドラの情報も一切無いけど」
「もうすぐハーディ師匠の言ってた『親友』が来ることだと思うんだけど……待ち合わせの時間間違えっちゃったかな〜?」
「時間なら合っています」
背後から青髪のポニーテールの黒色のコートを着た男が話しかけて来る
「あなたが?」
「えぇ、ハーディから話は聞いています。私は長年竜への研究を続けてきた学者、名をアキベエルと言います。以後お見知りおきを」
〚神月祝祭大会終了まで残り - 29日と20時間〛




