第一話「神月祝福大会・開幕」
あらすじを先にご覧になってから本編を閲覧することをおすすめします。
「登場人物紹介」は今後のストーリーのネタバレを含む可能性があるので閲覧の際には注意が必要です。
オレンジベージュ髪、紺色の浴衣を着ている少女が畳部屋の中で暇をつぶす為にテレビをつける
『テレビニュース』が始まる
『さぁ、1000年ぶり神月が満ち…願いを叶えられる新たなチャンスが巡ってきました!』
「神月……?」
『神月。毎日沈む「月」とは異なり、1000年に一度昇り、そして満ちる神の月のことです。神月には特別な力が宿っています、その力とは「なんでも一つだけ願いを叶えられる」というものです。富豪になったり、星を手に入れたり、どこかの国の王になるなんて事も可能です!』
『ですが、願いを叶えられるのはたった一人のみ。その為、神月祝福管理局は1ヶ月後の11月25日から「神月祝福大会」を開催し、神月の祝福を得られる一人を選抜します!』
「神月祝福大会…それに勝てば、願いを叶えられるの…?」
少女の目線がテレビに釘付けになる
『大会の内容は簡単、参加者は様々な方法で「宝玉」と呼ばれる架空のポイントを手に入れる事ができます。そして宝玉を最も稼いだ一人が勝者となります』
『誰もが願いを叶えるチャンスを平等に持ちます!参加条件は簡単、神月祝祭大会のホームページに情報を登録するだけです。開始日は1ヶ月後の11月25日、
彼女がテレビを消す
「神月祝福大会か…(参加条件は神道和郷に行けだけ。やってみる価値はあるかもしれない……)」
私は柊ミナミ、今年で840歳。実家を離れ今は一人暮らしをしている。今は妖鬼や魔物と呼ばれる怪物を倒して、それから皮や肉を買い取ってもらうことで生計を立てている。
◆ 1ヶ月後・神道和郷 - 大広場
サイバーパンク風な和風の街並みが広がる都市
「おい、まだか…?」
「いつ始まんだよ…」
参加者がやじを飛ばし始める
「お待たせました、参加者の皆様!私は神月祝福管理局の責任者…『鳩鵺』と申します、以後お見知りおきを」
「それでは皆様、これより──第376回・神月祝福大会を開催します!!!」
「参加者の皆様には、御一人様ずつサイバーナビゲーター「ツキミ」が付きます。ルールの確認や詳細、質問などがあれば彼女にお聞きください」
突如「柊 ミナミ」の目の前の空中に水色のパネルが飛び出す
「これが…サイバーナビゲーター?」
「はじめまして、私は今回の神月祝祭大会にてあなたのナビゲートを努めさせていただきます、サイバーナビゲーター「ツキミ」です」
「はじめまして…ツキミ…さん?」
「あなたの情報はサイバーナビゲートシステムの共通データベースに保存されます、しかし開示される情報はあなたの所持宝玉と参加者IDのみです。もし宜しければあなたのお名前をお聞かせください、これはあなたとの会話にて信頼を築いていく鍵の一つとなります」
「名前ですか…」
「安心してください、私たちの会話が第三者に開示されることはありません」
「そうですか…えっと、私は柊ミナミって言うの。宜しくね」
「柊ミナミ様、分かりました。それではミナミ様とお呼びしても構いませんでしょうか?」
「ミナミ様…ちょっと慣れないかも…それじゃあ、私はこれから何をすればいいか教えてくれない?」
「了解しました。ではミナミ様、まずは宝玉の入手方法からご説明させていただきます。入手方法は以下の通りです」
パネルに様々な入手方法が表示される
「へぇ、いっぱいあるんだね〜。魔物討伐、サッカーや料理、観察や農業もあるんだ!」
「基本的に何をしても宝玉を手に入れる事ができます、ミナミ様が最も得意とする方法で宝玉を獲得してください」
「一つ聞きたいんだけど…宝玉の受け渡しはできるの?」
「参加者間での宝玉の受け渡しはできません、しかし同盟を組み効率的に宝玉を獲得する方法なら存在します」
「同盟?」
「えぇ、例えば参加者Aと参加者Bが両者の合意の上同盟を組んだとします。同盟を組んだ場合は同盟を組んでいる参加者全員の宝玉の合計が個人の宝玉となります」
【例】
【A: 20宝玉】+【B: 10宝玉】=【30宝玉】
↓
【A: 30宝玉】・【B: 30宝玉】
「なるほど…なら同盟は積極的に組んだ方が良いのね……でも、同盟を組んだ状態で期間が終了したら、同じ宝玉を持つ参加者が大勢発生することになりますよ?そもそも、同じ宝玉数を持っている人が複数人いる場合は誰が勝者となるんですか?」
「大会終了時に同じ数の宝玉を持つ参加者が複数人いた場合はその参加者のみで延長戦が行われます、そしてこれは勝者が決まるまで何度でも再開されます」
「そして同盟についてですが、同盟は大会の期間終了1週間前に強制的に破棄されます、そのため終了までの残り1週間は参加者単独で宝玉を獲得する必須があります」
「なるほど、大体分かったよ」
「(それじゃあ、早速宝玉を稼ぎに行こうか。私は戦闘が少しだけ得意だから…やるなら魔物討伐。魔物は北部の洞窟に大量発生するから、行くならあそこだけど……逆に人が集まり過ぎて宝玉を稼ぎにくいんじゃ…なら!)」
「(向かうは真逆の南部。北部程ではないけど魔物はかなりいる…行くならあっちの方が良いんじゃ)」
「ミナミ様、宝玉の集め方は決まりましたか?」
「うん、南部の密林に行って魔物を討伐してみようと思う」
「了解しました、それではまたお困りでしたらいつでもお呼びください」
ツキミのパネルが消える
「よし…それじゃあ早速向かおう」
─南部の密林
「(やっぱり、この辺りは人の気配が少ない…宝玉を稼ぐにはもってこい!)」
突如 柊ミナミ の背後から斧を持ったゴブリンが襲いかかってくる
「っく!」
柊ミナミは素早い抜刀で斧を受け止める
「(このゴブリン…何かおかしい…!魔力が、吸われている?!)」
「ハァァァ!」
ゴブリンが斧を振り衝撃波を発生させ、柊ミナミを吹き飛ばす
「ぬあっ……(おかしいのは…あの斧…特殊な異能が付与されている)」
「(──おそらく、相手の魔力を吸収し…それを放出する能力。種が分かれば対処は容易)」
「ハァァァ!」
ゴブリンが斧を振り被ってくるが、柊ミナミは刀で攻撃を防ぐ
次の瞬間ゴブリンの斧が魔力を纏いだし、柊ミナミの刀を折る
「なっ!」
さらにゴブリンは柊ミナミの右目を斧で切り裂く
「うっ…」
柊ミナミはその場に倒れ込み、意識を失う
………
…………
………………
…………………………
あれから何時間経ったのだろうか?
意識が朦朧とする中一筋の光が柊ミナミの瞼の裏に走る
「うぅ…あれ?私──」
意識が戻ったとき、先程負った傷は既に癒えていた、失ったはずの右目も
「あ、気がついた?」
柊ミナミの目の前には白髪ポニーテールの背中に弓を背負った少女が座っていた
「あなたは…?」
「アタシは御薬袋 周、周って呼んでもいいよ」
「あんた、ゴブリンにやられかけてから…アタシが守ってあげたんだよ」
「ありがとう…でも、まさかあんなコブリンなんかにやられるなんて…私は自分で思っていたよりも…ずっと弱かったみたい……」
「それじゃあ、アタシの同盟を組まない?」
「同盟……」
「そっ、同盟を組めば効率的に宝玉を貯められる。互いにWinWinって訳」
「でも…私なんか、弱いのに良いの?」
「別に良いよ、それにアンタは自分を弱いって卑下してるけど…さっきのコブリンは特殊な魔道具を持っていたの。アンタが負けた理由は弱かったからじゃないよ」
柊ミナミは御薬袋周の言葉を聞き、少しだけ虚ろ気な表情が和らぎだす
「……あなたが良いなら…私も同盟を組みたい。私には神月祝祭大会で勝たなきゃいけない理由がある」
「ふっ…アンタ面白い事言うね、勝つ理由がない奴らは…神月祝祭大会には参加しないよ〜。あっ、今のは嫌味とかじゃないから…変な意味で捉えないでね!」
「そう、ふふっ…周といると、少しだけ気分が楽になる。ありがとう」
「そう?心の底から言ってるよね〜?!」
「言ってるよ〜、多分」
〚神月祝祭大会終了まで残り - 29日と23時間
─────────────────────────────
「今回の神月祝祭大会も鳩鵺が主催か…はっ、残る3000年は待たない…今回で終わらせる──」
「代価は…惜しまない!」




