第三話「遺跡探索」
《◇》= 場面転換
「アキベエルさん?よ、宜しくお願いします…!」
「そんなに硬くならなくても大丈夫です、それでも先に進みましょうか」
三人は遺跡の中へ脚を踏み出す
「あの、アキベエルさんって研究者なんですよね。普段はなにをしているんですか?」
「普段している事ですか、そうですね……鳥の囀りを聞くことでしょうか」
「さ、囀り?」
「えぇ、『聴力を増幅させる魔法』を使い…自然の音を細部まで感じることが趣味です」
柊ミナミが相槌を打つ
「見た目に反して意外ですね!」
「それはどういう意味ですか…?」
御薬袋周が心の中で呟く
「(竜にしろ鳥にしろ…生き物が好きなんだな〜)」
「うぅ……」
柊ミナミが姿勢を低くし、両手で耳元を抑える
「ミナミ?ちょっと、大丈夫!?」
「ちょっと耳鳴りが…でも、大したことないから…探索を続けよう」
アキベエルが話し始める
「それなら良かったですが、何か身体に異常を感じたらすぐに引き返しましょう。竜は人間にとって有害になり得る力を持っている場合もあります」
「なんにせよ、特に異常がなかったのなら本望です。それでは、まずは情報収集といきましょうか。この遺跡には竜災で行き場所を失った人たちが住んでいます。彼らに夙志に関する話を聞いてみましょう」
三人は遺跡の中を探索し始めた
「ねぇ!あそこに男の人が!」
「彼に話を聞いてみましょう──」
「──すみません。私はここらで竜の研究をしているアキベエルと申します。ここで何があったのか、教えてもらえませんか?」
「っち、もう研究者なんかに伝える情報なんてねぇよ!」
ボロボロの服を着た年寄りが荒々しく声を荒げる
「お願いします、そうだ…!夙志っていう人物について知ってることはありませんか?」
柊ミナミが懇願する
「嬢ちゃんら、夙志を追っているのか?アイツなら…もうとっくの昔に死んだぞ」
御薬袋周が問いかける
「リザドラってドラゴンに負けたから…?」
「あぁ、そうさ」
アキベエルが男に深々とお辞儀をする
「なるほど、ありがとうございます」
三人は男に礼を言い、その場を立ち去る
《◇》
「やはり、あの書物の内容は把握していなかったようですね」
「どうします?アキベエルさん」
「もしあの書物の内容が本当なら…リザドラは生きています。それなら、リザドラは竜の性質的に…いつかは必ず巣に戻ってくるでしょう」
御薬袋周がアキベエルに確認のために話しかける
「それって竜の性質だよね…どんなに凶暴な竜でも、1ヶ月に一度は必ず自分の巣に戻るって師匠から聞いたことがあるよ」
柊ミナミが問いかける
「それって、鳥やキツネが定期的に巣に戻る理由と同じなの?」
「えぇ、同じです。なのでもしリザドラが生きているのなら、この遺跡に住んでいる人たちがその姿を見ていないはずがありません。今の状況から考えられる可能性は2つあります。一つは噂通り、リザドラは夙志の手によって既に討伐され死亡している可能性。もう一つは──」
「──誰かしらがリザドラを拘束し、その身をどこかに隠している可能性です」
柊ミナミが問いかける
「誰かがリザドラを隠している?一体誰が、何のために?」
「目的は分かりませんが、そんな事ができるとしたら夙志しかいないでしょう。ドラゴンハンターとも呼ばれる龍の狩猟技術を持っている彼なら、龍を拘束なんて容易な事でしょうし。ですが結論を出すのはまだ早いです…ひとまず、他の人たちにも話を聞いてみましょう」
《◇》三人は他の難民の居場所に移動した
アキベエルが髭を生やした老人に話しかける
「済みません。お伺いしたいことがあるのですが、この遺跡にリザドラが最後に来た日を覚えていますか?」
「リザドラ?あぁ、あの赤い竜のことだな?確か最後に来たのは丁度300年前だったかな」
「300年前…アタシのお父さんが殺されたのと同じぐらいの時期だよ」
「300年前といえば、その頃に竜絡みの事件がありました。その事件は『第二次人為誘発竜災事件』、再生能力の高い竜の体からどれだけ部位を切り離せるか、という実験の結果引き起こされた竜災事件です」
「それってどんな内容だったの?」
「とある研究者が、竜の体から尻尾を切り離した際に、『魔力膨張』が起こり…辺りにいた数名の研究者は全員死亡しました。しかし、竜尾を切り離した竜体は再生を始め、かけられていた衰弱魔法を解除し…完全に肉体を修復しました。そして完全に再生した竜は激情し、実験場とその付近にあった13の集落を焼き払いました」
御薬袋周か驚愕する
「そんな事が…!」
「この事件の発端となった実験をしていた人物は確か──」
次の瞬間、遠くから3人に向けて複数の火球が飛んでくる
「っぐ!」
アキベエルが2人をかばい、攻撃を受け止める。先程三人と話していた髭を生やした老人は走り出し何処かに逃げていった
柊ミナミが火球で引き起こされた爆風に驚愕し、辺りを見回す
「…一体何が起こったの?!」
アキベエルは振り返り柊ミナミと御薬袋周に問いかける
「二人とも、怪我は?」
「アタシもミナミも大丈夫!」
谷底にいるアキベエルたち三人を見下ろしている銀髪の男と赤髪の男、そして金髪の女が崖端に見えた
アキベエルは攻撃してきた三人に向かって問いかける
「あなたたちは?」
銀髪の男が話し始める
「俺たちは神月祝祭大会の参加者だ。宝玉を稼ぐ為にこの辺にいる竜を狩りに来たんだ」
「それならば…あなたたちはここからすぐにでも立ち去った方が良い、我々もあなた方と同じ指針です」
「指針?つまり同業者って訳か。ははっ、だが悪いな…先に竜を狩るのは俺たちだぜ!」
三人は遺跡の奥に入っていく
夢見がアキベエルに問いかける
「ど、どうします!?アキベエルさん!」
「追わなくていいです。……そもそも、あの書物の内容が本当でリザドラが生きているのだとしたら、多少は目撃証言もあって良いはずです。しかしリザドラの巣があるはずのこの遺跡に住んでいる人達は誰もリザドラの姿を見ていないのはおかしいです」
柊ミナミが問いかける
「それじゃあやっぱり、リザドラは既に討伐されてたってこと?」
「その線が濃厚になってきましたね、しかし断言するのはまだ早いです。先程言った通り何者かに拘束されています可能性もありますし……ですがやはり、まだ確固付ける情報が足りません」
「うぅ……」
突然御薬袋周が耳元を押さえつけ蹲る
「周、大丈夫?」
「ちょっと耳鳴りが…」
「……もしや、先程が二人が言っている耳鳴りというのは『竜の心音』のことですか?」
柊ミナミがアキベエルに問いかける
「竜の心音……?」
「えぇ、竜の心音は他の生物とは異なり、周期的に超音波となり耳鳴りのような感覚に陥ります。二人が耳鳴りを訴えたとき私も竜の心音が聞こえたのでもしかしたらと思ったのですが」
柊ミナミがアキベエルに対して提案する
「多分そうかも……というか、その竜の心音でリザドラの居場所を特定はできないかな?」
「まぁできなくはないですが、この辺りには複数の竜がいる為…リザドラ単体を見きわめるのは困難でしょう」
御薬袋周がアキベエルに対して提案する
「それじゃあさっき言ってた『聴力を増幅される魔法』を使えば一匹一匹の心音を聴き分けられないかな?」
「確かに、それなら行けるかもしれないですね。試してみる価値はあるでしょう」
アキベエルは両耳を両手で塞ぎ、片膝を地面に付け座り込む
「なるほど……」
「えっ?もう終わったの?」
御薬袋周が驚愕する
「はい、リザドラかどうかは分かりませんが…この遺跡には3体の竜がいる事が分かりました。そしてその内の一匹は───」
「地中にいます」




