否定しない
「柚月ってさ」
メッセージの途中で、
唐突にそう来た。
「彼氏とか、作らないの?」
心臓が、
一瞬、止まる。
「なんで?」
打ち込んでから、
送信をためらう。
「いや、なんとなく」
なんとなく。
その言葉に、
全部詰まっている気がした。
「今はいらないかな」
そう返したのは、
嘘じゃない。
正確には、
他を考えられない。
「そっか」
そのあと、
すぐ別の話題。
深掘りは、しない。
否定もしない。
それが、
一番、期待を持たせる。
「柚月なら、
いい人いそうだけど」
褒め言葉。
でも、距離は縮まらない。
「焦る必要ないよ」
その言葉に、
少しだけ、救われる。
焦らなくていい。
待っていればいい。
そう解釈したくなる。
でも、
焦っていない人は、
こんな言い方をしない。
相手は、
現状で困っていない。
私は、
困っている。
それだけの違い。
夜、
紗季に言われた言葉を思い出す。
「否定されてない、って安心でしょ?」
そう。
「でもね、
選ばれてないってことも、
同時に含んでる」
画面を伏せる。
分かっている。
分かっているのに。
『また話そう』
その一言で、
今日も、終わる。
約束はない。
時間も決まっていない。
でも、
切られてもいない。
その中途半端さが、
一番、手放せない。
否定されない関係は、
続けられる。
終わりが見えないまま。
私は、
このままでもいい、
と思い始めている自分に、
少し、ぞっとした。




